見出し画像

パールズのゲシュタルト療法に驚愕した!(1)

 少し前の記事で、論理療法で有名なアルバート・エリスのセッション録画を見て、「アルバート・エリスは想像していたよりもおしゃべりだし、見ようによってはアグレッシブだなあ」という感想と共に、以下の記事を書きました。

 そのとき、この録画について調べる中で、クライアントとなったグロリアという女性が、他の2人のカウンセラーからも同時にセッションを受けていることを知りました。一人が傾聴で有名なカール・ロジャーズで、もう一人がゲシュタルト療法のパールズです。要は、この録画は当時代表的だった3名のカウンセラーのセッションを比較する教育目的で作成されたとのことです。カウンセリングの勉強をされている方には、有名なものなのですね。

 結論から言うと、グロリアは3人のカウンセラーの中ではロジャーズの大ファンになって、パールズは「大嫌い」だったようです。その詳細を知りたい方は、以下のリンクがとても参考になります。

https://hosei.ecats-library.jp/da/repository/00006481/10suetake.pdf

 また、実際のセッション動画はリンク先のような形で、私にとってパールズのセッションは、アルバートエリスを三階級くらい飛び越しての「驚愕」レベルだったわけです。私の世界観の狭さを思い知りました。

 そんな背景もある中、パールズの「この」セッションを記事にするかどうか、少し悩んだのですが、経緯や結果はどうであれ、学術的なアーカイブとしては価値のあるものなのと、こういった感情を揺さぶるような対話は、自分の目指しているものではないんだよねえ、でも、どこかしら参考になるところはあるのかしら、という事を確かめるような意味合いで書いております。

 なお、大学生時代に何冊か本を齧ったことのある論理療法とは異なり、ゲシュタルト療法については私は知識はなく、一方で、あれこれ調べ物もしながら、出来るだけ正確性を担保できるようにはしていますが、多々、至らない点はご容赦を頂けましたらと思います。


セッション開始前のパールズ自身によるゲシュタルト療法の説明

 アルバートエリスのときと同様に、セッションに入る前に、パールズ自身がゲシュタルト療法の概要を説明しています。【解説】は翻訳時にAIにより基礎知識を補う意味で加えてもらったものです。

ゲシュタルト療法の基本的な概要をお示ししましょう。ゲシュタルト療法士は以下の3つの要点に基づいて働きかけます:
・Awareness (気づき)
・Present Time(今この瞬間)
・Reality(現実)

【解説】ゲシュタルト療法は1940年代にフリッツ・パールズによって確立された心理療法です。「ゲシュタルト」とはドイツ語で「全体」「形態」を意味し、人間を全体として捉える考え方に基づいています。

深層心理学とは対照的に、ゲシュタルト療法では表面に現れている問題とその水準を理解しようとします。そして、あなたと私の関係性の中で、今ここでゲシュタルトを形成している状況を理解しようとします。ゲシュタルト療法では、過去や未来への逃避は、現在に対する抵抗の可能性として捉えられます。

【解説】従来の精神分析が過去の体験や無意識に焦点を当てるのに対し、ゲシュタルト療法は「今、ここ」での体験を重視します。

影響を受けた人は、自身の潜在能力の多くを手放してしまっています。その人は失われた能力を取り戻さなければなりません。自身の中にある対極的なものを統合しなければなりません。役割演技と真の自立的な行動との違いを認識しなければなりません。内的な矛盾間の戦いは、患者の効率性と平穏さを損なっています。しかし、統合の一つ一つが、その人を再び強く、穏やかにしていきます。

治療場面という特別で安全な状態の中で、患者は環境からの影響から離れ、自身の個人的な強さに頼り始めます。この過程は成熟と呼ばれます。患者が感情的、知的、経済的に自分の足で立つことを学べば、療法の必要性は消失します。その人は現在の存在の悪夢から目覚めることでしょう。

【解説】ゲシュタルト療法では、クライアントの自己実現と成長を重視します。

ゲシュタルト療法の基本的な技法は、患者に物事を説明することではなく、患者が自分自身を理解し、発見する機会を提供することです。この目的のために、私は患者が自分自身と向き合うような方法で、患者を操作し、対峙させます。このプロセスで、患者は例えば投影を同化することを通じて、失われた潜在能力を認識します。つまり、自分の中の見知らぬ部分をすぐに演じることによってです。

私はいかなる解釈も治療上の誤りだと考えています。なぜなら、それは治療者が患者自身よりも患者のことをよく理解していることを意味するからです。解釈は、患者から自己発見の機会を奪い、自身の価値観やスタイルを見出すことを妨げます。一方で、私は患者が話す内容のほとんどを無視し、非言語レベルに最も注目します。なぜなら、それが自己欺瞞の影響を最も受けにくいものだからです。患者の言語的な偽りの自己表現の中でも、非言語レベルでは、関連するゲシュタルトが常に現れ、今ここで扱うことができます。

【解説】この最後の部分は、ゲシュタルト療法の実践的なアプローチを説明しています。治療者は解釈を提供するのではなく、クライアントが自己発見できるよう支援し、特に非言語的なコミュニケーションを重視します。

 なるほど、過去の出来事をあまり重要視しないのは論理療法と似ていますね。論理療法ではクライアントの持つビリーフ(信念)、すなわち、言語面を重視しているのに対して、ゲシュタルト療法では非言語面を重視しています。ただし、カウンセラーがクライアントの非言語を勝手に解釈するのではなく、非言語表現を指摘するのにとどめ、あくまでもクライアント自身が気づきを得る機会を提供するという方針のようです。

【解説】 Present Time(今この瞬間)とReality(現実)の違いは?

 ゲシュタルト療法における「Present time(今この瞬間)」と「Reality(現実)」の違いです。

 Present time(今この瞬間)は、「今この瞬間」に起きている体験や感情に注目することで、過去の回想や未来への不安から、現在の体験に意識を向けることを重視します。「今、あなたはどんな感情を感じていますか?」「今この瞬間、体のどこに緊張を感じますか?」などの問いかけにより。

 Reality(現実)は、事実性や真実性に焦点を当て、空想や願望ではなく、実際に起きていることや存在するものを扱います。「実際にその時、何が起きましたか?」「具体的にどのような状況でしたか?」主観的な解釈や思い込みから、客観的な事実への気づきを促します。

 クライアントが、「私は常に失敗すると思います」といったとすれば:

  • 「今、その『失敗する』という考えが浮かんだ時、体はどんな感じですか?」「その言葉を口にした瞬間の感情は?」と問うのがPresent timeからのアプローチ

  • 「具体的にどのような失敗を経験しましたか?」「『常に』とおっしゃいましたが、実際に成功した経験はありませんか?」と問うのがRealityからのアプローチ

【解説】 非言語面をどう重視するのか

 また、ゲシュタルト療法で非言語面をどう重視するのかについてですが、以下のような問いかけで例示されます。非言語を指摘しながら、相手に解釈を委ねる形ですね。

  • 「今、あなたの肩が少し緊張しているようですが、それに気づいていますか?」

  • 「あなたの言葉は『大丈夫』と言っていますが、表情は別のことを伝えているように見えます」

  • 「この話題になると、あなたの声が小さくなりましたね。それは何を意味していると思いますか?」

  • 「今、あなたの手の動きが止まりましたね。その瞬間に何が起こっていましたか?」

ここまでのまとめ

 私は非言語面のフィードバックが当たらないですので、コーチングの最中も、そこに対して触れることは少ないのですが、確かに、クライアントに解釈を委ねる方法もあるにはありますね・・・一方で、非言語を事細かに観察されるのは決して心地の良いものとは限らず、実際、グロリアも、そこに対してイラ立ちのようなものを表明しているシーンがあります。

 次の記事以降は、実際のセッションへと入っていきます。

いいなと思ったら応援しよう!