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【せりふ三題噺】すきま風かな?|胃カメラ.かに.レース|ショートショート


タイトル:深海魚グランプリ

年に一度、海の底では大レースが開催される。

その名も

『深海魚グランプリ』

優勝者には「海王の宝石」が与えられるため、毎年大勢の参加者が集まる。

リュウグウノツカイ。

チョウチンアンコウ。

ダイオウイカ。

そして、なぜか一匹のかにもいた。

「出場部門、間違えてません?」

受付係が尋ねる。

「大丈夫かに」

かには自信満々だった。

レース当日。

深海の大観客席は満員。

スタートの号砲が鳴る。

参加者たちは暗い海を猛スピードで泳ぎ始めた。

しかし途中で異変が起きる。

海底遺跡から巨大な魔物が現れたのだ。

全長百メートル。

口から黒い渦を吐き出している。

選手たちは大混乱。

その時だった。

かにが叫ぶ。

胃カメラを持ってこい!」

誰も意味が分からなかった。

だが海底病院の医師が慌てて魔法胃カメラを持ってくる。

かには渦の中へ飛び込んだ。

胃カメラの映像が巨大な水晶に映し出される。

観客は息を呑んだ。

魔物の胃の中には、巨大な真珠が詰まっていた。

それが喉につかえて苦しんでいたのだ。

「なるほどかに」

かには器用にハサミを使い、真珠を取り除く。

すると魔物は穏やかな顔になった。

そして感謝の印として背中に全選手を乗せる。

レースは再開。

だが巨大魔物の背中は速すぎた。

誰も勝負にならない。

結局、全員同着となった。

授賞式の日。

海王は困り果てていた。

優勝者が決められない。

すると魔物が一歩前に出る。

「真の勝者はあのかにだ」

大歓声が起こった。

かには照れながら頭をかく。

その時、冷たい風が吹いた。

すきま風かな?

かにが首を傾げる。

違った。

優勝トロフィーの底に小さな穴が開いていただけだった。

その後、かには深海で最も有名な医師となり、

『胃カメラの勇者』

として語り継がれることになる。

なお本人は最後まで、

「俺、レースに出たはずなんだけどな」

と不思議がっていたらしい。


かに


*下記企画に参加させて頂きました*



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