【せりふ三題噺】わ!ふっかふか!|酸性.夕立.リングピロー|ショートショート
タイトル:夕立のリングピロー
夕立の森には、酸性雨の雲が住んでいる。
その雨に濡れた花は枯れ、
葉は穴だらけになってしまう。
だから森の妖精たちは、雨が降るたび空を見上げてため息をついていた。
そんな森の奥に、小さな仕立て屋の妖精ルルが住んでいた。
ルルの仕事はリングピローを作ること。
結婚式の日に指輪を乗せる、幸せのための小さな枕だ。
ある日、森の王様がやってきた。
「大変だ」
王様は青い顔をしていた。
「明日は百年に一度の結婚式だというのに、夕立のせいでリングピローが全部だめになってしまった」
ルルは考える。
材料の綿も花も、みんな雨で傷んでいる。
明日まで時間もない。
まさにラストチャンスだった。
その時だった。
窓の外で、何かが落ちる音がした。
ぽふっ。
ルルは外へ飛び出す。
そこには巨大な白い雲の欠片が落ちていた。
夕立を運んでいた雲の一部らしい。
ルルは恐る恐る触れてみる。
すると、
「わ!ふっかふか!」
思わず声が出た。
雲は綿より柔らかく、
羽毛より軽かった。
ルルは大急ぎで縫い始める。
夜通し針を動かし、
朝日が昇る頃には世界で一つだけのリングピローが完成した。
結婚式の日。
新郎新婦はそのリングピローに指輪を乗せる。
すると不思議なことが起きた。
空の酸性雨の雲が、少しずつ白く変わり始めたのだ。
幸せな笑顔を見た雲たちの心が温かくなったらしい。
やがて降り始めた雨は、花を傷つける雨ではなく、
花を咲かせる優しい雨になった。
それから夕立の森では、
百年に一度の奇跡を記念して、
雲で作ったリングピローを贈る習慣が生まれたという。
そして今でも、
幸せな結婚式の日には、
空からふわりと雲の欠片が降ってくるらしい。
了

*下記企画に参加させて頂きました*
☆次の作品はこちらです↓↓↓
前回の作品はこちらです↓↓↓
最後までお読みくださり、ありがとうございます😊すず
いいなと思ったら応援しよう!
読んで下さりありがとうございます!励みになります!