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【3つのお題に空想のひらめきを第43回】夢を食べる獣.空を閉じ込めた瓶の中の王国.影を持たない騎士の帰還|ショートショート


タイトル:フラクタルの王国と影の帰還

その王国は、瓶の中にあった。

空を閉じ込めた、小さな世界。
覗き込むたびに、同じ景色が繰り返される。

城も、街も、空も、
どこまでも続くフラクタル。

終わりがない代わりに、
変わることもなかった。

その均衡を守るために、
ひとつの悪しき風習があった。

夢を見ることを禁じる。

夢は、形を変える。
形が変われば、繰り返しは崩れる。

だから人々は、眠っても夢を見ない。

見てしまった夢は、
すぐに“食べられる”。

夢を食べる獣に。

夜になると現れるそれは、
やさしい顔をしていた。

怖がる必要はない。
ただ、夢を渡せばいい。

それで世界は守られる。

ある日、騎士が帰還した。

影を持たない騎士。

かつてこの国を出て、
戻らないとされた存在。

「影はどうした」

誰かが問う。

騎士は静かに答える。

「置いてきた」

その声は、どこか遠い。

「代わりに、夢を持ち帰った」

ざわめきが広がる。

夜が来る。

夢を食べる獣が、
いつものように現れる。

騎士は一歩前に出る。

「これは、渡さない」

その瞬間、瓶の中の空が揺れた。

フラクタルが、わずかに歪む。

繰り返しに、ひびが入る。

獣は、初めて困った顔をした。

騎士の足元に、
影が戻る。

それは、ゆっくりと形を取り、
もうひとりの騎士のように立ち上がる。

夢は、増えていく。

ひとつが、ふたつに。
ふたつが、さらに繰り返されていく。

瓶の中の王国は、
初めて変わり始めた。

終わりのない繰り返しは、
終わりを知らない変化へとほどけていく。

誰も知らなかった。

夢が、世界を壊すのではなく、
世界を広げるものだったことを。


おしまい


*下記企画に参加させて頂きました*


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