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nihiro2849
【風まかせ文芸部】自動|エッセイ
朝、アスファルトの上を歩いているとき、
私はいつも、自分の足が“自動”で動いている気がする。
考えごとをしてても勝手に進んで、
気づいたら目的地に着いているあの感じ。
まるで、心と身体が別々の路線で動いてるみたいだ。
アスファルトは冷たくて硬いのに、
その上を歩く私の足どりだけは、妙に柔らかい。
きっと私は、“私を構成する何か”に引っぱられて歩いてるのだと思う。
習慣とか、責任とか、プライドとか。
そういう見えないレールが、私の毎日を「自動運転」にしている。
でも——プライドって厄介だ。
守りたくて握りしめすぎると、
グッと息が詰まる。
逆に手放しすぎると、どこかに流されちゃいそうになる。
観賞魚の水槽を見ているとき、
そのことがよく分かる。
透明な水槽の中で、魚たちはただゆっくりと泳いでいる。
外から見る私のほうが、よっぽど騒がしい。
あの子たちは、流れに逆らわない。
でも、飲まれもしない。
自分に合う速さで尾を動かして、
必要以上に抗わない。
それでも、存在感は失われない。
……それって、すごく自然な“プライド”だなと思う。
水槽の前に立つと、
私もあんなふうに、
ゆっくり泳ぐように歩けたらいいのに、ってふと願う。
アスファルトの上を、自動で進むんじゃなくて、
私の意思で進む一歩が踏める日が来たら、
少しは世界が変わる気がして。
観賞魚たちは何も言わないけれど、
その沈黙が、私の心の奥にやさしく響く。
「そんなに急がなくていいよ」
そう言われてるみたいで、
私は今日も、一歩だけ速度を落として歩き出す。
了

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