Photo by
voice_watanabe
【アマノ文筆クラブ】猫にこんばんは|エッセイ
夜の10時をすぎると、街のざわめきが遠くに沈んでいく。
私はベランダに出て、遠くの光の粒をぼんやり見下ろす。
その頃になると、決まってどこかの階から「にゃあ」と声がする。
姿は見えない。
でも、確かにこのマンションのどこかで、猫が夜の空気に挨拶している。
私はそっと小声で返す。
「こんばんは」
誰もいない夜の空に、猫と私だけが言葉を交わしている気がする。
お互いの姿が見えなくても、音の温度だけで通じるような。
きっとあの子も、退屈でも寂しくもない。
夜風を嗅ぎながら、世界を見張っている。
私も似たようなものだ。
静かな時間の中で、自分の輪郭を確かめている。
猫の声が遠のくころ、私は部屋の明かりを落とす。
どこかでまた「こんばんは」と返してくれるのを待ちながら、
今夜もひとり、眠りにつく準備をする。
了

*下記企画に参加させて頂きました*
☆次の作品はこちらです↓↓↓
前回の作品はこちらです↓↓↓
最後までお読みくださり、ありがとうございます😊すず
いいなと思ったら応援しよう!
読んで下さりありがとうございます!励みになります!