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tamochaos
【せりふ三題噺】見て、光ってる|宇宙.スープ.虫よけ|ショートショート
タイトル:星降るスープの夜
雨の気配がしていた。
まだ降ってはいない。
でも、風が少し湿っていて、
空が静かに暗い。
庭では、虫よけの渦巻き線香が
細い煙をくゆらせていた。
「もうすぐ降るかな」
私が空を見上げると、
隣でスープを混ぜていた君が笑う。
鍋の中では、
夜色のスープがゆっくり揺れている。
この世界では、
宇宙は空の上だけにない。
深夜になると、
ときどき地上へ滲み出してくる。
スープの表面。
水たまり。
ガラス窓。
暗く静かな場所に、
星の粒が混ざるのだ。
「見て、光ってる」
君が小さく声を上げる。
鍋の中。
黒いスープの表面に、
小さな光が浮かんでいた。
ひとつ。
またひとつ。
まるで、
夜空をそのまま溶かしたみたいに。
私は息をのむ。
「宇宙だ」
思わずつぶやく。
君は木のスプーンを揺らしながら笑う。
「今日は当たりの日かもね」
光るスープは、
食べると少しだけ本音がこぼれると言われている。
嬉しいこと。
寂しいこと。
誰にも言えなかった気持ち。
星は、隠していたものを照らす。
雨の匂いが濃くなる。
遠くで雷が鳴った。
でも、不思議と怖くなかった。
湯気の向こうで、
小さな宇宙が揺れている。
私たちは静かにスープを飲む。
胸の奥に沈んでいた言葉が、
少しずつ光りながら浮かび上がってくる気がした。
了

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