ヨル編第12章 山の暮らしの始まり
前回のお話
皆さんこんにちは!
前回でついに妹までも失ってしまったヨル……
そこからどうやって這い上がっていくのでしょうか…
家族を失ったあの日から、ヨルの居場所はすっかりなくなってしまった。
ひとりで生きていくには、あまりにも幼く、あまりにも心細い。だからこそ――山で出会った山賊たちと行動を共にすることになったのは、もはや必然だった。
暮らしの拠点は山の中の洞窟。食料も寝床も、すべて自分たちの手で確保しなければならない。狩りがうまくいけば肉を食べ、そうでなければ草や木の実で飢えをしのぐ。服だって、藁や布の切れ端を縫い合わせた簡素なものだ。
(まるで野生の動物みたい……)
そんな苦しい生活の中でも、ヨルは少しずつこの場所に慣れていった。

ある日、ふと気づく。――自分はまだ名乗っていなかった。
「ヨル、って言います」
そう名乗ったものの、「ああ、よろしくな嬢ちゃん」と軽く返されただけ。なぜか本名を呼ばれることはなく、相変わらず“お嬢”だの“嬢ちゃん”だのと呼ばれ続けた。
(なんか……名前、意味なかったかも)
山賊たちは皆、あだ名のような呼び方ばかりで、本名を使う者はいないらしい。お頭はお頭、のっぽはのっぽ、弓の兄さんは……弓の兄さん。呼び名に特別な意味などなかった。
ヨルは留守番を任されることが多く、皆が山に出ている間は、掃除や洗濯、食事の支度をして過ごした。特に洗濯は自ら志願した。「だって、この山暮らしだと……みんな匂いがすごいんだもん!」
洗剤なんてないから、川の水で必死に衣服をこすり洗いする。乾かしたそばからまた汚れるのが悔しくてたまらなかったけれど、何もしないよりはずっとマシだった。
(これでも、少しは役に立ててるのかな……)

そうして日々が流れるうち、次第にヨルの心にもわずかな落ち着きが戻ってきた。最初こそ“山賊と暮らすなんて”と思っていたが、彼らは思いのほか面倒見がよく、ヨルのことを決して雑には扱わなかった。
食糧不足以外は――意外と悪くない。そう思えるほどに。
けれど、その平穏の裏には、いつもひとつの思いがあった。
(私は……家族を殺した奴を、絶対に赦さない)
ある夜、耐えきれずその思いを口にした。
「私、あの人たちを殺した犯人を……絶対に見つけて、仇を討ちたいの!」
途端に、場の空気が変わった。
「やめておけ」
「おめえじゃ返り討ちだ」
「人を殺しても割にあわねぇよ」
次々に返ってくる反対の言葉。お頭は静かに言った。
「……それにな、お嬢。仇の顔、覚えてんのか?」
「そ、それは……」
ヨルは言葉を詰まらせた。あの夜は暗く、逃げることで精一杯だった。犯人の顔など、まともに見えていない。
「だったら話になんねぇ。悔しいだろうが、諦めろ」

悔しかった。どうして“あいつ”は私の大切なものを奪ったのに、私は何もできないの? やり返すことすら許されないの?
(おかしいよ……こんなの、間違ってる)
けれど、お頭の言葉には続きがあった。
「仇を討ったって、同じになるだけだ。次はお嬢が恨まれる番になる。……そんなん、俺は見たくねぇよ」
胸の奥がちくりと痛んだ。理屈ではわかる。でも、心は追いつかない。
ヨルは何も言い返せず、ただ拳を握りしめた。
(……それでも、私は――)
山の暮らしは意外となんとかいけそうで、山賊達も良い人そうですが……
この復讐心…モヤモヤを何処にぶつければよいのでしょうか……
今回はここまでです。最後までお読みいただき有り難うございます。
それでは、今日も明日も皆さんにとって良い1日になりますように♪
