ヨル編第16章 嘘
前回のお話
皆さんこんにちは!
今回は1つ大きな転機となる出来事です…
ある日、いつものように家事を終えて採集から戻ると、洞窟に見慣れない人たちが大勢いた。びっくりして近づくと、すぐにそのうちの一人に見つかって、ヨルは思わず息を呑む。
どうやら、山賊たちを捕まえに来た町の警護団だった。少し前に仲間の一人が町でトラブルを起こしたらしく、それをきっかけにこの洞窟を包囲しに来たのだという。のっぽさんと兄さんは多勢に無勢で捕まっていて、助けたい気持ちは山々だったが、体は固まって動けない。

警護団の人々にとって、目の前にいるのは12歳くらいの女の子——しかも山でこんな子が現れたのは予想外で、ヨルのことを人質か何かと勘違いしたかもしれない。町に出たこともなく、仲間たちと行動しているところを目撃されたこともない。ヨルは、この状況でどうすればいいのか全く思いつかず、結局その場に立ち尽くしてしまった。
結局、ヨルはあっさり捕まる形になったが、のっぽさんたちに遠ざけられたおかげで、警護団の人たちから見れば「保護された子ども」という扱いになったのだった。
混乱の渦の中、洞窟の奥からお頭とヒゲさんが戻ってきた。
怒号と緊張が入り混じる空気の中で、ヨルはただ立ち尽くすことしかできなかった。武器を構える警護団の男たちと、険しい表情の山賊たち。その間に立ったお頭は、誰よりも冷静な声で言った。
「こいつらは悪くねえ。全部、俺がやらせたことだ。捕まえるなら俺だけにしろ」

その声には威圧でも虚勢でもない、不思議な静けさがあった。
けれど当然、そんな言い分が通るはずもない。のっぽさんも兄さんも、ヒゲさんも口々に叫ぶ。
「お頭が悪いんじゃねえ、やったのは俺達だ!」
「捕まるなら、一緒にだ!」
彼らの覚悟に、警護団の男たちも一瞬、動きを止めた。
それでも縄が投げられ、抵抗する間もなく彼らは捕らえられていく。
――嫌だ、そんなの嫌だ。
ヨルの胸の中で何かが叫んだ。
仇討ちのことも、憎しみも、何もかもどうでもよくなって、ただこの人たちと引き離されるのが怖かった。
「だったら、私も捕まえて! だって私も、この人たちの仲間だから――!」
そう叫ぼうとした瞬間、低い声がその言葉を遮った。
「この嬢ちゃんは関係ねえ! ただの人質だ!」
お頭の声だった。
ヨルの心臓が痛みで締めつけられる。嘘だ。そんなはずない。私は人質なんかじゃない――でも、何も言えなかった。
その時の彼の目は、いつものように穏やかでも、怖いほど鋭くもなく、ただ静かで優しかった。
そのまなざしが、すべてを悟らせた。
――これは、私を守るための嘘なんだ。
けれど幼いヨルは、その優しさをすぐに受け止められなかった。
目の前で仲間が縄に縛られ、連れていかれていく光景をただ見ているしかない。
手を伸ばしても、声を出しても、誰ももう振り返らなかった。

そして、ヨルもまた「攫われた子供」として町へと連れていかれた。
洞窟の暮らしの終わり。
それは、彼女にとって二度目の“喪失”だった。
最後の嘘は優しい嘘でした…そんな歌詞を思い出します。
今回はここまでです。最後までお読みいただきありがとうございます。
それでは、今日も明日も皆さんにとって良い一日になりますように。
