ヨル編第15章 赦せないけど…
前回のお話
皆さんこんにちは!
前回に引き続き今回も穏やかな生活描写が続きます…
山での暮らしにも、すっかり慣れていた。
夜の焚き火を囲んで、誰かのくだらない冗談に笑い、朝は冷たい水で顔を洗って一日が始まる。そんな日々が続くうちに、ヨルの表情にも少しずつ柔らかさが戻っていった。
(あの頃の私は……いつも眉をひそめていた気がする)
最初のうちは何をしても、どこか心に影を落としていた。だが、今は違う。山賊たちの笑い声に混じって笑えるようになったし、彼らと過ごす時間を“楽しい”と感じられるようになっていた。
お頭と兄さん以外の面々――のっぽさんやヒゲさんとも、少しずつ打ち解けていった。もっとも、狩りや用事の関係で一緒に行動することは少なかったが、それでも洞窟で交わす何気ない会話は心地よかった。
「ヨル、お前、最近よく笑うようになったな」
そう言われて、照れくさくて頬をかいたこともあった。
復讐の炎が完全に消えたわけではない。だが、以前のようにその思いに縛られることはなくなっていた。代わりに心の中に芽生えていたのは、今の生活をもっと良くしたいという小さな願いだった。

そんなある日、ずっと禁じられていた弓の稽古が、なぜか許されることになった。
「どうして急にいいの?」と聞いても、お頭は「お前なら、もう間違えねぇ」とだけ答えた。
その言葉の意味は分からなかったが、どこか温かかった。
(たぶん、私が少しずつ変わっていったのを見ていたんだろうな)
弓を握る手に、あの頃のような焦りや怒りはなかった。ただ、まっすぐに弦を引く感触が心地よかった。復讐のためではなく、誰かの姿に憧れて。
その夜、焚き火の明かりの中でヨルはお頭に尋ねた。
「ねえ、お頭。どうして私を拾ってくれたの?」
お頭はしばらく黙っていたが、やがて煙を吐きながら呟いた。
「さあな。気まぐれだ」

何度聞いても、答えはいつも同じだった。のっぽさんや兄さんも「お頭の気まぐれは誰にも分かんねえ」と笑っていたが、ヒゲさんだけは何か言いかけてやめたように見えた。
(……本当に、ただの気まぐれなのかな)
その後、のっぽさんや兄さんも、実はお頭に拾われた過去があると知った。二人はヨルより年上で、出会った時の事情も年齢差も違っただろうが、語られることは少なくとも——彼らの胸にはお頭への感謝が確かに宿っていた。話を聞くうちに、ヨルはその事実にどこか安心した。
(みんな、それぞれ事情は違っても、ここで暮らすことを選んだんだ)
日々の積み重ねが、いつの間にか互いの居場所を作っていた。復讐心は消えていないものの、その形は変わっていく。かつては相打ち覚悟で生きることさえ選んでいたヨルも、いつの間にか「生き残ること」を選ぶようになっていた。憎しみは胸に残るけれど、今は自分の命を大事にして、目の前にある小さな幸せを守りたい——そんな思いが少しずつ強くなっていた。
(本当に復讐をやめられるかは、まだわからない。でも、今はここで生きていきたい。)

お頭の真意はなんだったのか…
今回はここまでです。最後までお読みいただきありがとうございます。
それでは、今日も明日も皆さんにとって良い一日になりますように♪
