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実録丨【第1話】癌の私を置いて消えた恋人が、人生を変えた話 〜邂逅〜

人生が大きく動くきっかけは、必ずしも「特別な出来事」とは限らないのかもしれません。

むしろ、ずっと心の奥にしまっていた感情が、ある日現実になったとき。
そこから、人生の流れが大きく動き出すことがあります。

私にとって、それが回避傾向の強い男性との恋愛でした。

この恋愛は、ただの恋愛では終わりませんでした。
むしろ、私の人生の奥に眠っていた問題を、すべて表に引き上げるような出来事になりました。

8年間、心の中にいた人その人は、新入社員の頃から、ずっと心の中にいた人でした。

同じ会社にいましたが、配属地が離れていたため、
深く関わる機会はほとんどありませんでした。

それでも私は、その人に惹かれていました。

優しくて、落ち着いていて、
人への配慮が自然にできる人。

当時の私は、その姿に強く惹かれていました。

けれど、その想いを伝えることはありませんでした。距離もあり、仕事も忙しく、そのまま時間だけが過ぎていきました。

気づけば、8年という年月が経っていました。


他の恋愛が続かなかった理由

もちろん、その間に恋愛がなかったわけではありません。何人かの男性と付き合いました。

別の男性と付き合っている間も、彼のことを忘れたわけではありませんでした。
心のどこかに、ずっと彼がいました。
自分でも理由はよく分かりませんでした。
ただ、心の奥に残り続けている存在でした。

けれど、その間にお付き合いした男性との関係は
長くは続きませんでした。

最初は穏やかな関係でも、時間が経つにつれて、

・強いコントロール
・ハラスメント的な言動
・精神的に疲弊する関係

そういった形に変わっていくことが多かったのです。

当時の私は、なぜこういう関係になってしまうのか、まったく分かりませんでした。

ただ、

「私がもっと頑張ればいい」

そう思っていました。

私の生き方

今なら、はっきり分かります。
当時の私は、完全に他人軸で生きていました。

・役に立つ
・尽くす
・我慢する
・相手を優先する

そうしていれば嫌われないと思っていました。
捨てられないと思っていました。
関係は壊れないと思っていました。

だから私は、
本当は嫌でも笑う。
違和感があっても飲み込む。
疲れていても相手を優先する。

それが、いつの間にか当たり前になっていました。

当時の私は、それを

「優しさ」

だと思っていました。

でも今振り返ると、それは優しさではありませんでした。ただ、境界線がなかっただけだったのだと思います。

「いい人」でいることの歪み

本来の自分ではない「優しい私」を演じている以上、その状態が長く続くはずはありません。

付き合うまでは、その「優しい私」は
相手から見て魅力的に映っていたと思います。

・気が利く
・尽くしてくれる
・否定しない

いわゆる「いい人」です。

でも関係が始まると、状況は変わります。
私はだんだん疲れてくる。
けれど相手にとっては、尽くす私が“普通”になります。

だから私が本来の自分に戻ろうとすると、
それが受け入れられない。

「前はもっと優しかったのに」

「なんで変わったの?」

そんな空気が生まれていきます。

そして関係は、少しずつ歪んでいきます。

振り返ると、私はずっと
同じパターンの恋愛を繰り返していました。

優しさだと思っていたものは、

本当は

自分を守る境界線を持っていなかっただけ
自分を大切にできていなかっただけ

だったのだと思います。


再会

話を彼との物語に戻します。

あるとき、共通の友人に「実は彼のことが好きだった」と話しました。

すると友人が言いました。
「一度会ってみたら?」

そして友人が間に入ってくれて、
再会の段取りを整えてくれました。

私は名古屋
彼は東京

距離はありましたが、帰省の途中で名古屋に寄ってくれることになりました。
こうして、8年ぶりの再会が実現しました。


偶像化していた8年間

8年ぶりに会った彼は、記憶の中のままの人でした。むしろ、当時よりも魅力的に見えました。

正直に言うと、私はこの8年間、彼をかなり偶像化していました。
心の中で、ずっと特別な存在にしていた人でした。

でも実際に会ってみても、その印象はほとんど変わりませんでした。

むしろ、

「やっぱりこの人が好きだ」

そう思いました。

彼の過去

共通の友人と三人で飲んでいる時、
彼は自分の過去を話してくれました。

今は恋人がいないこと。
そして以前付き合っていた女性が、
6年前癌で亡くなったこと。
それ以来、恋人は作っていない。

そう話していました。

私自身も病気を抱えていたため、
その場ではそれ以上、何も言えませんでした。

その日は彼は名古屋のホテルに泊まり、翌日は観光して帰る予定でした。

すると友人が気を利かせて、「一緒に水族館に行ってきなよ」と言ってくれました。

その日、彼は私の家まで送ってくれました。
そのとき私は、自分が癌一歩手前であることを打ち明けました。

もし翌日告白してしまったとき、病気を隠したままでは卑怯だと思ったからです。

彼は驚きながらも、「明日は水族館、全力で楽しもう」そう言ってくれました。

告白

翌日、二人で水族館へ行きました。

久しぶりの再会とは思えないほど、自然に会話ができました。穏やかで、とても静かな時間でした。
シャチを観てはしゃぐ彼の姿を見ているだけで幸せでした。
この時間が永遠に続けばいいと思いました。

そして帰り際、新幹線の改札口で
私は、抑えきれなくなって
人生で初めての告白をしました。

「実は、ずっと好きでした。」

ただ、それだけでした。

そしてこうも言いました。

「昨日話した通り、私は今、病気があります。だから答えをもらえる立場じゃないと思っています。ただ、気持ちを伝えたかっただけです。」

我儘かもしれないけど、
もしものことがあったとき、
後悔だけはしたくなかった。

ただ、それだけでした。

彼は戻ってきた

告白したあと、その場では答えは出ませんでした。

それでも、その日から毎日LINEが届くようになりました。

そして数日後。彼からメッセージが届きました。

「今から名古屋に行ってもいい?」

そして本当に戻ってきました。
彼は、自分の意思で戻ってきてくれました。

そしてこう言いました。

「ずっと自分にブレーキをかけていた。

でも、竜胆を支えたいと思った。」

こうして私たちは付き合うことになりました。
私はとても幸せでした。
ずっと好きだった人と結ばれた。

けれど同時に、私はあることにまったく気づいていませんでした。

それは、私自身の恋愛パターンです。

私はいつも

・相手を理解しようとする
・相手を支えようとする
・相手の問題も受け止めようとする

そうやって関係を守ろうとしていました。

一見すると、思いやりのある行動に見えるかもしれません。

でも実際には、自分の感情より、相手を優先していただけでした。

と同時に

相手にも『安心』の見返りを求めてしまっていたのです。

そして私はまだ、そのことに全く気づいていませんでした。

この恋愛は、このあと
私の人生を大きく動かすことになります。

そして私はここで初めて

・愛着の問題

・共依存

・アダルトチルドレン

・境界線

そういったものと真正面から向き合うことになります。

この恋愛が人生を根本から変える出来事になるとは、まだ想像もしていませんでした。

(第二章へ続く)


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