言葉の数だけ、わたしの世界は広がっていく― 『最強の言語化力』と、過剰考察を経て、ふたたび ―
本を読む理由って、なんですか?
これは、数年前の自分が投げかけた問いです。
そのときの答えは、たしかにこうでした。
「自分の世界が広がるから。」
3年以上が経ったいま、この言葉にふたたび光をあててみたいと思いました。
きっかけをくれたのは、書く部でことばとさんが紹介していた斎藤孝さんの著書『最強の言語化力』の記事、
そして、わたしのnoteにやさしく、真摯に向き合ってくださった、lionさんの過剰考察でした。
これらの出会いによって、あらためて思ったのです。
「ことば」があるからこそ、わたしは世界を見つめ、世界を広げてこれたのだと。
🧩「名づける」ことで、世界がかたちを持つ
たとえば、わたしたちが「あれは犬です」と聞いたとき。
シェパードも、コーギーも、チワワも、「犬」という一語でくくることができます。
これは、世界に“言葉のラベル”を貼っているだけではありません。
むしろ――
言葉を知ることで、世界が“意味のある存在”として立ち現れてくる。
スイスの言語学者フェルディナン・ド・ソシュールは、「言語によって世界はできている」と説きました。
つまり、「名前をつけた瞬間から、そこに“意味”が生まれる」ということ。
「猫」という名前を与えるまでは、そこにあるのは“ただの動物”。
でも、「これは猫です」と言葉が与えられた瞬間、それは“猫としての意味”を持ち、他のものと区別されてゆく。
わたしたちは、世界のなかで名づけ、差異をつくり、言葉によって世界を“感じる”ことができるようになるのです。
👶赤ちゃんの「ママ」と、ことばの出発点
わたしは、前回の記事で、こんな例を書きました。
赤ちゃんが最初に覚える言葉が「ママ」だったとします。
それは、もしかすると“母親という存在”ではなく、“お乳という食べ物”だったかもしれません。
けれど、その「ママ」という言葉が、次第に“特定の人”を指すようになり、
近所のおばちゃんに対しても「ママ」と言ってしまう。
そこに「違うよ、それはおばちゃん」と教えられることで、赤ちゃんの世界に「ママ」と「おばちゃん」というふたつの概念が生まれます。
これは、身体感覚からスタートする「ことばの習得」のはじまりです。
lionさんがご紹介していた『ことば、身体、学び』(扶桑社新書)にもありましたが、
子どもは複雑な世界をそのまま受け取ることができないため、少ない情報を使って、シンプルな概念から少しずつ世界を切り分けていきます。
最初に飛び込んでくるのは、五感と結びついた「実感」。
そして、そこにことばが重なることで、世界が広がっていくのです。
🎨言葉があるから、世界を“細やかに”見られる
斎藤孝さんの著書では、「言葉の精度」が文化によって異なることも紹介されていました。
たとえば、フィンランドでは「雪」を表す言葉が40種類以上もある。
韓国では、「辛さ」を20種以上の言葉で使い分ける。
日本では、魚の成長段階ごとに名前が変わる「出世魚」がある一方で、英語では「イエローテイル」でひとくくり。
こうした違いは、文化のなかで「どこに差異を見出すか」によって決まっているのだといいます。
つまり、言葉の数だけ、その世界の“解像度”は上がっていくということ。
車のマニアがランボルギーニとフェラーリをまったく違う存在として語るように、
言葉を知っているだけで、世界はより精緻に、豊かに、広がっていきます。
💭あの気持ちを、言葉にしたい
わたしたちは、日々のなかで、ふいにモヤモヤとした気持ちを抱えることがあります。
「この感じ、なんて言えばいいんだろう?」
そんなとき、わたしは、言葉を探したくなるのです。
そして、ぴたりと心におさまる表現に出会えたとき―
それだけで、少し気持ちが軽くなる。
斎藤さんは、「言語化とは、思考を整理し、判断力を高め、他者とつながる力」と述べています。
それは、自分の内側にある“まだ輪郭のない思い”を、世界とつなげる橋をつくる行為だと感じます。
ヘレン・ケラーが「Water」という言葉を知ったときのように、
心のなかに閉じ込められていた感情が、ことばによって解放される瞬間があるのです。
📚「読むこと」は、世界を交換すること
lionさんが、わたしの昔の記事をていねいに読んでくださり、
そこに「世界が広がる感覚」を見つけてくださったこと。
そのやさしい観察の言葉たちを読んで、
「書くこともまた、誰かの世界を広げる手助けになるかもしれない」と、そっと思えました。
本を紹介するという営みは、ただ「おすすめする」だけではありません。
それは、自分が触れた“ことばの感動”を、誰かにも渡したいという気持ちの表れ。
本を読んで広がったわたしの世界を、
もうひとりの誰かの手のひらに届けたい。
それが、わたしが「ブックシェアコーディネーター」と名乗る理由です。
🌏最後に ― ことばと出会うたび、世界はやさしくなる
言葉の数だけ、世界は多様になり、深くなり、彩りを増していきます。
それは、読むことで、書くことで、そして誰かと交わすことで。
「言葉を知っているだけ、豊かになる」
この文章を書いた数年前の自分の気持ちは、いまもまったく変わりません。
でも、いまならもう少しだけ、ていねいに言える気がします。
言葉を持つことは、他者と出会う準備をすること。
そして、自分自身を深く見つめる勇気を持つこと。
だから、今日もまた、本をひらくのです。
そこに、まだ知らない世界と言葉が待っていると信じて。
📖 読書とは、自分の“わからなさ”を、ことばで照らしていく旅。
🕊️ 言葉の数だけ、心の居場所が増えていく。
✍*あとがき*
まずは、ことばとさんとlionさんに感謝を述べさせていただきます。
自分ではお気に入りの記事だったのですが、なかなか読まれないなぁ、と残念に思っていた私です。あ、私のいいたいことが、全然伝わっていなかったのだな、と、おふたりのおかげで気付けました。本当に感謝申し上げます。
分かりにくい記事でしたのに、行間まで読み取って補足していただいたlionさん。いつも分かりやすい記事をシェアし、励ましていただいていることばとさん。おかげで、昔の自分を見つめ直すことができました。ちなみに、今回のアイキャッチ画像は、バベルの塔のイメージです。この話が個人的にすごく好きなのです。今回の記事で、多くの方に届けば、なお嬉しいのですが、自分が成長できる喜びを味わいたいと思います。ここまで、読んでいただき、本当にありがとうございます。
豊かな世界になりますように✨
喜木 拝
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