忘れられない贈り物。― 夜明けのガラス玉 ―
ポケットに手を入れた瞬間、
何も触れなかった。
――あの小さな光が、消えていた。
鎌倉の小町通りで出会った「夜明玉(ヨアケダマ)」。
朝の光を閉じ込めたようなトンボ玉のネックレスは、
まだ付き合いはじめたばかりの彼が、初めて贈ってくれたものだった。
「これ、綺麗だね」
照れくさそうに笑いながら渡してくれたあの日のことを、今でも覚えている。
透きとおる青が、少しずつ夜を溶かしていくようで――
私にとっては、まさに“夜明け”そのものの贈り物だった。
なくしかけた、光。
その夜明玉を、ある日うっかりポケットに入れたまま、
スポット業務で入ったホテルで給仕の制服を返してしまった。
夫に見せようとして、気づいた瞬間、心臓が冷たくなった。
「どうしよう、あれだけは……」
慌ててホテルに連絡すると、
奇跡のように、清掃スタッフの方が見つけてくれていた。
手のひらに戻ってきた瞬間、涙がにじんだ。
夫は今でも言う。
「あの時のりんちゃんの顔、忘れられないよ」って。
きっと私以上に、焦っていたんだろう。
夜明けのように、心を照らす。
あれから何年も経った今も、
夜明玉は私のアクセサリーボックスの中で、
ひっそりと光を放っている。
時が流れ、
チェーンは少し錆びれてしまったけれど、
青い輝きは、あの頃のまま。
光にかざすと、今も胸の奥があたたかくなる。
あれはただのガラス玉じゃない。
失いかけた“想い”を、もう一度抱きしめた証。
ふたりで迎えた、初めての夜明けの記憶。
夜明けの青を閉じ込めた小さな玉は、
これからもずっと――
私たちの時間を、やさしく照らしつづける。
喜木 拝
こたらさんと分析ママさんの素敵な企画で綴らせていただきました💖
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