見出し画像

エコーチェンバーになりかけた話

きっかけはフジテレビの「なんだコレ!ミステリー」という番組で紹介された3I/ATLASという恒星間天体の話を観たことからはじまる。

3I/ATLASというのは、太陽系外から飛来した天体で、彗星とはまた別物のようで、いまはちょうど太陽の裏に回って視えないが、12月ごろにまた現れ、地球に最接近するとのこと。
この話に説得力を持たせているのがハーバード大学の高名な教授が人工物ではないか?と発信したことによる。
たしかに、我々の知る惑星の運動と重力の法則からすれば、この天体の軌道はトリッキーに過ぎるということで人工物、つまりUFO説が起こるわけである。

宇宙人に会ってみたくて仕方のない私は、この話にまんまと食いついた。
そこでyoutubeで調べてみると、動画がいくつも出てくる。
観れば、この天体が不自然な軌道修正をしているとか、従来の学説では説明できない軌道(人工的推進力)などというものが出てくる。
すると、例に漏れずyoutubeが「お前はこんな動画が好きなんだろう」と3I/ATLAS関連の動画を次々すすめてくる。
私も好きなもんだからついつい観てしまう。
すると、この天体が彗星と同じように尾を引いているのだが、この尾が普通は太陽に向かって逆方向に引くはずなのに、尾が太陽に向かって伸びているだとか、不自然な鉱物でできているだとか、普通はどの国の観測衛星も観測するはずなのに、NASAをはじめ各国がこの天体に対して沈黙しているのは何かあるからだとか、あげくの果てにはイーロンマスクが自社の衛星を使って監視し、世界に注意喚起を呼び掛けているとか言うではないか。
こうなってくるといよいよUFOではないかと思えてくる。

興味が湧いてきたからこそ、chatGPTで調べてみたら。
イーロンマスクが3I/ATLASに言及しているという信頼できる情報は確認できませんという。
一応、copilotにも確認してみたが、やはり、
ネット上に3I/ATLASについてマスクやトランプが言及したという記述があるのは確かだが、信憑性や公式性については注意が必要だという。

つまり、断定はできないがデマの可能性が非常に高い。
それに前述のハーバード大学の高名な教授の発信も、3I/ATLASについてではなく、その前に来た同じく恒星間天体であるオウムアムアのことで、このオウムアムアが太陽から遠ざかる際に、重力だけでは説明できないわずかな加速(非重力加速)が観測されたことについて言及したものらしいのだ。
しかしyoutubeの動画には、この教授が警告しているとまで言っている動画まである。これもデマだ。
しかもこの3I/ATLASについては非重力加速は観測されていないというではないか。

よくよく考えれば、youtuberが自身の動画で言ってるとおり、各国の宇宙局がこの件に沈黙してるのに、なんでyoutuberごときにそんな情報を知り得るのか?明らかに話が矛盾している。
まるで嘘だらけなのだ。
しかし、陰謀論者の伝家の宝刀、「国家がわざと隠している!」の一言で人は容易に騙されてしまう。
こういった動画ばかりにさらされていると、そりゃ3I/ATLASはUFOだと思ってしまうかもしれない。
しかし、その実は嘘だらけである。

この製作者たちの意図はこうだ。
まず第一に3I/ATLASに関する情報というのはたかが知れている。
しかし、この件に関する動画や記事をあげると、結構な閲覧数が稼げることがわかる。
人気があるとわかったら、3I/ATLASの動画や記事をもっとつくろう、となる。
しかしもはやネタはない。
そこで登場するのが創作である。つまりデマだ。
すべてのyoutuberがデマをつくって流してるわけではないだろう。ネットサーフィンを駆使して、ネタを集めて動画を作っているのがほとんどだと思われる。しかし当然、どこかにデマを承知で創作を流しているネタ元はいるはずだ。

危うく私は宇宙人に会えるかもしれないと、12月を楽しみに待つところであったが(待ってても別に害はないが…)、私はべつにこんな恥部を晒したいわけではない。
要するに、こんなデマに踊らされてていいのか?ということである。
あるいはこんなデマのために、国を分断してしまう事態になりかねない、ということを言いたいわけである。
たしかにこんなUFO話で国は分断されない。しかしネット上にはこんなデマが蔓延しているのは事実なのだ。
近頃では既存のメディアがオールドメディアと揶揄され信頼をなくしているが、こんなネット上の情報を信じているほうがどうかしている。
メディアが隠している。メディアがあえて報道しないの一言で信じてしまうほうがおかしいのだ。

この件に関する動画の作成者たちが何を考えて、こんな動画を作っているかといえば、閲覧数を稼ぐために他ならない。つまり金を稼ぐためだ。
彼らはデマかどうかすらわからずに動画や記事を作成しているのかもしれない。
閲覧数さえ稼げればそれでいいのだ。
そんな動画や記事が溢れかえっている。
もうすぐ地球が終わる、核戦争が勃発する、日本が沈没するとかいう動画を流しておいて、チャンネル登録をお願いするのだ。

そんなごくごく一部の人間の金儲けのために、我々の日常生活が振り回されていいのだろうか?
じっさい、今年の7月には日本沈没の予言のために外国人観客が減ったり、(これはおそらくネタなんだろうが)日本を出国するという著名人も現れた。
これなども、まず日本のyoutuberが金になるからとさかんに動画をあげ、それに気づいた香港の有名な占い師がまた自身のSNSにあげたことがきっかけになったという。
閲覧数目的のSNSの拡散が原因なのはあきらかだ。

そんな程度ならまだいい。
このデマ情報に選挙が左右される事態がじっさいに起きている。
選挙に関していえば、金儲けというより意図的に世論を操作しようという狙いがあるし、これは個人の金儲けというより組織的な工作といえるものだ。
これにうっかり個人が不用意に乗っかってしまって、拡散されるという構図になっている。
じっさい第一次トランプ政権における大統領選挙でロシアのSNS工作があったことは、アメリカの情報機関やモラー特別検察官の調査で結論づけられてる。
日本でも、さきのデマが飛び交った兵庫県知事選の反省をもとに、そのあとの参議院選ではデマ対策が候補者やマスコミの間で問題になっている。

確証バイアスによって人は自分の信じたい情報だけを聞きたい。
たとえそれがデマであっても。
こうして好きな世界の情報にのみ浸り、他を認めなくなることをエコーチェンバー現象という。

問題はそれがわかっていて発信している者がいることだ。
それは地球人の分断を狙うメトロン星人の仕業なのかもしれない。
しかし、それが日本の弱体化をねらう某国の仕業だったとしたら…。

と――、こう書いたとき、


それは中国に違いない!
という人もいれば、
日本をコントロールしてるのはどうみてもアメリカでしょ!
という人もいるだろうし、
いやいやロシアこそ!
などなど、意見は間違いなく二分三分する。
そうして、これを第三者が説諭する手立てはない
みんな、我こそ真実!と信じて疑わないからだ。
これこそまさにエコーチェンバーなのだ。

いまはAIに訊けば、情報の真偽はたいていわかる。
むろんAIにだって注意書きにあるように、情報は正確ではないかもしれない。それでもどこの誰ともしれない誰かが流してる情報なんかよりもよほどマシなのだ。
今一度、AIでもってファクトチェックの必要性を訴えたい。




いいなと思ったら応援しよう!