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評価とは「情報を集めること」ではなく、「予測を検証すること」とみる

理学療法士が「評価」というと、「情報を集めること」という印象を持たれる場合があります。しかし、私が評価で最も大切にしているのは、情報を増やすことではありません。手持ちの情報から、どこまで対象者のことを理解できるのか。その妥当性を確かめることです。

対象者と初めてお会いしたとき、まず注目するのはファーストコンタクトです。歩いて来られたのか、介助者が付き添っているのか、会話はスムーズか、疾患に特徴的な動きは見られるか。その短い時間の中にも、多くの情報が含まれています。これは教科書にも書かれていますし、「診察室に入って来る瞬間から評価がはじまる」という文言と同意だと思います。

次に、「なぜここへ来られたのか」を確認します。身体の不具合を改善したいのか、生活で困りごとがあるのか、ご家族やケアマネジャーから勧められたのか。その目的によって、対象者が置かれている生活環境や課題は大きく異なります。

デイケア(通所リハビリテーション)では、ケアプランや診療情報、家族やケアマネジャーからの情報など、事前に得られる情報も少なくありません。ケアプランには生活上の大きな課題が示され、診療情報には診断名や注意事項、薬剤などが記載されています。

私はまず、それらの情報だけを使って、「この方は自宅でどのような生活を送っているのだろう」「どのような身体的・活動的な困難を抱えているのだろう」と仮説を立てます。そして、実際にお話を伺いながら、その仮説が現実と一致しているのかを確認していきます。

この時点で、多くの方は、ある程度予測できる「スタンダードな課題」を持っていることが分かります。しかし、中には見立てと現実が一致しない方もいます。その違和感こそが、評価で最も重要な情報です。推測できなかった背景には、生活歴や価値観、家庭環境、心理的要因など、事前情報だけでは見えてこない要素が隠れていることがあります。そのため私は、一致しなかった部分をより丁寧に聴き取り、新たな仮説を組み立て直していきます。そしてこの際に必要な評価を選別していきます。

こうして振り返ると、私が行っている評価は「情報収集」ではなく、「予測の検証」であることに気づきます。最初からすべてを調べるのではなく、手持ちの情報から生活や身体機能を推測し、現実との違いを確認する。そして、その違いを説明できる新たな条件を探していく。この繰り返しによって、対象者への理解は少しずつ深まっていきます。

つまり「評価」とは、数値がどれだけ「生活を説明できるか」を検証する過程なのではないかと感じます。

私は、熟練した理学療法士ほど、知識量が多いだけではなく、最初の予測の精度が高いのではないかと考えています。そして評価とは、情報を増やすことではなく予測と現実の差を小さくしていく過程なのだと思います。

対象者を理解するとは、情報を集め続けることではありません。限られた情報から世界を推測し、その推測を修正し続けること。その積み重ねこそが、理学療法士の「評価」という営みなではないかと思っています。

たとえば「TUG15秒という一つの情報から、その人の生活をどこまで予測できるのか」そこに評価の本質があると思っています。

TUGが15秒であれば、歩行能力はどの程度なのか、屋外歩行は可能なのか、買い物には行けるのか、階段は昇降できるのか、一人暮らしは成り立っているのか、家族の支援は必要なのか――私は数値を見ながら、その人の生活全体を頭の中で描こうとします。

もちろん、その予測がすべて正しいとは限りません。実際にお話を伺うと、「毎日畑仕事をしている」「趣味で旅行へ行っている」「家ではほとんど歩いていない」など、予測とは異なる現実に出会うことがあります。

しかし、その「予測と現実のズレ」こそが、新しい情報です。

私は、そのズレがなぜ生じたのかを考えます。環境なのか、生活習慣なのか、家族の支援なのか、本人の価値観なのか。それらの条件を一つずつ確認しながら、対象者への理解を更新していきます。

つまり、評価とは「情報を集める作業」ではありません。

限られた情報から対象者の生活を予測し、その予測を現実と照らし合わせ、説明できなかった条件を見つけていく過程なのです。

私は、熟練した理学療法士ほど、評価項目をたくさん知っている人ではなく、一つの評価から多くのことを推測できる人だと思っています。単純に評価項目を増やせば情報量は増えます。しかし、本当に重要なのは情報量ではありません。

得られた一つの数値が、どれだけ対象者の生活を説明できるのか。

その問いを繰り返すことが、理学療法士としての評価能力を育てることにつながるのではないかと考えています。繰り返します。評価能力とは、多くの評価法を知っていることではありません。

限られた情報から対象者の生活をできるだけ正確に再構成し、そのために最も説明力の高い評価を選択できる能力です。

そして、その予測と現実にズレが生じたときこそ、新たな評価を追加する意味が生まれます。評価を増やすために評価を行うのではありません。

生活を理解するために、本当に必要な評価を選び抜くこと。
それが、私の考える地域で働く理学療法士の評価能力だと思います。

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