Photo by
neko_ran_maru
(小説)半透明の海
初めまして、また見てくれた方はこんにちは。
どうも、中島ジーマです。よろしくお願いします。
こちらの「風まかせ文芸部」に参加しました。
iさん、ありがとうございます。
「あんなにはっきり見えるんだね~。」
「そうだね~、きれい!」
「こっち行くともっと綺麗に見えるよ!」
両親の間をすり抜けて、活発そうな女の子が海の方を指さして駆け抜けていった。
そしてそのまま桟橋に出ると、こちらを背に向けたままサイドステップで移動し、両親を呼んでいる。その声は水面に混じって、遠くへと伸びていく。
確かにこの河川敷では、陽光で煌めく海と濁りが無い清い川の境目が見られる。その交わる箇所に泡のラインがくっきりと浮かび上がって見えるのが名物となっている。
名物と呼ばれる前は、もう少しはっきり見えた気がする。だが、ある日を境にエイジング加工をバリバリにされた新築の神社や屋台が並び、その周りを占領する日が増えた。最近では、川側の景色から魚を見ることも少なくなった。
私は、ここの川から海側へと踏み込んだことは無い。川の中からも波の音が微かに聞こえる。
それでも、私はあの境目へと向かおうとした。私は、水中マスクを付けた。
ザブン。バサー。バサー。
プールではカナヅチの私が、まるで引っ張られるように泳いでいける。みるみるうちにスピードに乗って泡のラインを通過していた。
ふっと力が抜けた。向こう側の景色は黒で満たされていた。
音が消えていった。さっきまで聞こえていた波の気配も子どもの無邪気な声も遠くに押しやられていく。
その奥から誰かが呼ぶ声が聞こえる。
海の中から見た海は光を通すだけでーー何も映さなかった。
いいなと思ったら応援しよう!
よろしければ応援お願いします。不明瞭な言い方ですが活動費、あるいは勉強代に使わせていただきます。