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小さな手が教えてくれたこと──後日談𝓿𝓮𝓻𝓼𝓲𝓸𝓷2


はじめに


もし、あなたがようやく心の嵐を乗り越えて、
「これからは穏やかに生きていける」と信じていた矢先に、
また新しい試練が訪れたとしたら──
あなたは、どう感じるでしょうか。

私は、泣きたくなるほど、ただ、悔しかった。
「なぜ、また私に?」
そう思った瞬間、自分を責める声が心の中で響いていたのです。

それは、新しい命が生まれた直後のことでした。
私の腕の中にいるその小さな存在は、
何も語らず、ただ、静かに生きようとしていました。

けれど私の心は、どこか遠く、
その命の尊ささえ、受け止めきれないままでいました。

──このエッセイは、そんな「弱さ」と向き合った私が、
やがて「本当の強さ」に気づくまでの、静かな記録です。
小さな手に、教えてもらった大切なことを、
どうか、あなたにも伝えさせてください。


あの時のことを、今でも鮮明に覚えています。
産声を聞いて、安堵する間もなく、私たちは別室へと呼ばれました。

静まり返った小さな部屋。
「ダウン症の可能性があります」と医師は言いました。

その言葉を聞いた瞬間、頭の中が真っ白になりました。
苦しかった過去が一気に押し寄せてきたのです。
うつ病を経験し、癌とも闘ってきた人生。
ようやく穏やかになれたと思ったのに、なぜまた試練が訪れるのだろうと。

正直に言えば、あの瞬間、心のどこかで
「どうして私ばかりが…」
と思ってしまった自分がいました。

そう思ったことすら罪悪感に変わり、
何も考えられなくなっていた私は、ただ呆然とその場に座っていました。

けれど──時間が経つにつれて、ふと気づいたのです。

私は、自分のことばかりを考えていた。
一番つらいのは、この子なのに。
一番小さくて、何もわからないままに生まれてきて、
それでも一生懸命に生きようとしているこの子を、
なぜ私は、真っ先に思いやれなかったんだろう。

あの小さな手に触れたとき、
その温もりに泣きました。
ちっぽけな自分の覚悟、
まだ親になりきれていなかった自分の未熟さが、恥ずかしくて、情けなくて。

だけど同時に、思いました。

**「産まれてきてくれて、ありがとう」**と。

この子は、私に教えてくれたのです。
人としての強さも、親としての覚悟も、
生きるということの重さと尊さも。

「ダウン症だから」ではない。
この子が、この子として生きていること。
それだけで、十分に奇跡で、宝物なんだと。

私の手を握る小さな手。
ぎゅっと握り返してくれるその感触が、
「だいじょうぶだよ」と言っているようで、何度も救われました。

もしかしたら、救われていたのは、いつも私のほうだったのかもしれません。


あとがき


あのときの自分を責める気持ちは、今も消えません。
でも、だからこそ、今はこの命を心から大切に思えます。
子どもが生まれるということは、「親として生まれる」ことでもある──
あの子が私を、親にしてくれたのです。

この文章が、同じような気持ちに揺れる誰かの心に届きますように。
そして、どんな子も「生まれてきてくれてありがとう」と思われる世界であってほしいと、心から願っています。

素敵なコメントありがとうございます

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