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小さな手が、教えてくれたこと

はじめに


その日、私は人生でいちばん大きな喜びと、いちばん深い戸惑いを、たった24時間のあいだに経験しました。

何年も望み続けてきた、新しい命。
ようやく出会えたその小さな存在は、震えるほど愛おしくて、ただただ感謝しかありませんでした。

けれど翌日、突きつけられた現実。
病室の静けさ、医師の言葉、流れ続ける涙。
「なぜまた私に?」と空を仰いだあの日を、
私は一生忘れないでしょう。

これは、過去に鬱病や癌を乗り越えてきたひとりの父親が、
“新しい命”とともに歩きはじめた日々の記録です。

泣いて、悩んで、でもそれでも――
小さなその手が教えてくれたことが、
たくさんありました。

どうか、この物語が、
誰かの胸にそっと寄り添うものでありますように。

〜本文〜

新しい命が産まれたあの日。
忘れもしない、あの瞬間。

何度目だっただろう。
顕微受精という道を選び、妊活に挑み続けた日々。
期待しては崩れ、泣いて、また立ち上がって。
ようやく、お腹の中に小さな命が宿ったとわかった日、
私たちは言葉にならない喜びに包まれた。

高齢出産という不安もあった。
それでも、私たちはこの子に会える日を、心から待ち望んでいた。

そして、ついに産声をあげた。
小さな手。小さな足。小さな身体。
一生懸命に泣いて、呼吸して、私たちの世界に飛び込んできてくれた。
ただ、それだけで、涙があふれた。

でもその翌日、事態は急転した。
小さなその子は緊急で大きな病院へ搬送された。
ただ事ではないという空気の中、私たちは別室に呼ばれ、
医師から説明を受けた。

「ダウン症の可能性が高いです。」

その言葉が頭の中で反響し、
思考が、一瞬にして止まった。
嫁さんは静かに泣いていた。
私はただ、その場に立ち尽くし、やがて堰を切ったように涙が流れた。

なぜ――
なぜ私たちに、また試練を与えるのか。

私は過去に、鬱病も患った。
癌も経験し、命を懸けて乗り越えてきた。
ようやく穏やかな日々を手に入れたと思ったその時に、
また神様は試すのかと、そんなふうに思った。

けれど、
目の前にいるこの子は、何も悪くない。
この世界に、自らの力で、生まれてきてくれた。
小さな手で、命の重みを掴みながら。

私たちのもとに来てくれた、たったひとつの存在。
そう思った瞬間、
私の心は、少しずつほどけていった。

この子は、私たちを選んで来てくれた。
そしてきっと、何かを教えてくれるために来てくれた。
だから私は、応えたい。
「来てよかった」と思ってもらえるように。

病名ではなく、“その子”として愛していこう。
この子のペースで、一緒に歩いていこう。

その決意を固めた夜、
小さな手が私の指をぎゅっと握りしめた。
まるで、「わかってるよ」と言うかのように。

それから3年が経つ。
あの日と変わらず、
眠る時は、いつも小さなその手が私の手を握っている。
それが、何よりのご褒美だ。

私たちの天使は、今日も、
たくさんの愛と、笑顔と、未来を抱えて、ここにいる。

あとがき


私たちのもとに来てくれた、たったひとつの命。
たとえそれが、
予定とは少し違った形であったとしても──
それでもこの子は、私たちを「選んで」、
ここに来てくれた。

どんな病名よりも、どんな診断よりも、
先にあるのは、この子の「存在」です。
小さな手で私の指を握るその温もりは、
“生きていてくれる”という、何よりの奇跡を教えてくれました。


命は、条件つきで愛するものじゃない。
命は、「こうであってほしい」から与えられるものじゃない。

命は、ただ、そこにあるだけで尊い。

そして、それが「あなたを選んだ」という事実こそが、かけがえのない贈り物なのだと、私はこの3年間で何度も実感してきました。


あなたのもとに訪れた命も、
きっと何かの意味があって、何かを伝えるためにやって来ています。
時に不安に押しつぶされそうになることもあるかもしれません。
でもその命は、あなたとともに生きるために、この世界を選んだのです。

どうかそのことを、忘れないでください。

命は、あなたを選び、
あなたとともに生きていこうとしています。

それは、人生における、
何にも代えがたい奇跡です。


最後まで読んでいただき、

   ありがとうございました。

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あなたの時間に、そっと寄り添えるような言葉を、
これからも丁寧に綴っていきます。


小さな命が教えてくれたことを、

    もっと多くの方に届けたいから──

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