空席の王 ──奴隷だった俺が最強の仲間を召喚して世界を支配するまで⑭
第十四章
“黒き王”
紫黒の“死”が、
空を裂いていた。
──ズバァァァァァン!!!!
エルシアの一撃。
それは斬撃ではない。
“終焉”そのものだった。
ネメシスが振るわれた瞬間。
空間。
時間。
生命。
概念。
全てが、
黒く裂ける。
白い“手”の周囲に浮かんでいた無数の目が、
一斉に潰れた。
──ギャァァァァァァッ!!!!
絶叫。
天門が悲鳴を上げる。
世界の外側の存在が、
初めて“痛み”を知った。
兵士達は、
ただ震えていた。
誰も理解できない。
今戦っているのは、
神話じゃない。
“世界が隠していた終末”そのもの。
フェルグラードが、
黄金炎を爆発させながら笑う。
「ハハハハハ!!」
「いいぞエルシアァ!!」
黄金の獣が突撃する。
炎の尾を引きながら、
白い“手”へ牙を剥く。
──ドゴォォォォォン!!!
激突。
世界が歪む。
空間が折れ曲がる。
だが。
白い“手”はまだ止まらない。
切断された腕の断面から、
白銀の肉が蠢く。
再生。
いや。
“存在の修復”。
ルミアの顔が青ざめた。
「うそ……」
「ネメシスで斬ったのに……!」
ゼルヴァが低く呟く。
「向こう側の連中は」
“死”そのものが違う」
その瞬間。
白い“手”の奥。
天門の深淵で、
何かが動いた。
──ゴォォォォォ……
世界が震える。
山脈が浮く。
海が逆流する。
兵士達が絶望する。
「ま、まだいるのかよ……」
「ふざけんなよ……」
レインも息を呑んだ。
見えた。
天門の奥。
巨大な“影”。
星より大きい。
輪郭すら理解できない。
ただ。
“見ている”。
こちらを。
その視線だけで、
現実が崩れていく。
そして。
脳内へ、
直接声が響く。
《空席》
《まだ残っていたか》
黒き玉座が、
激しく震えた。
──ゴゴゴゴゴゴ……!!
紫雷。
空間崩壊。
レインの身体から、
黒い魔力が溢れ出す。
ルミアが叫ぶ。
「レイン!!」
だが。
止まらない。
脳が焼ける。
視界が割れる。
そして。
再び見えた。
……玉座。
無数の空席。
その最奥。
“黒き王”。
今度は、
顔が少し見えた。
黒髪。
紫の瞳。
そして。
レインと同じ顔。
「……っ!?」
心臓が止まりそうになる。
男は、
静かに笑っていた。
その周囲には、
神々の死体。
竜の骸。
崩壊した星。
終わった文明。
全てが積み上がっている。
なのに。
男は孤独だった。
誰も隣にいない。
空席だけが、
無限に並んでいる。
男は静かに言った。
《ようやく》
《ここまで来たか》
レインが叫ぶ。
「お前は誰だ!!」
男は答えない。
代わりに。
その紫の瞳が、
優しく細められる。
《……お前は》
《まだ、壊れるな》
瞬間。
レインの視界が戻る。
現実。
戦場。
エルシアが、
こちらを見ていた。
その蒼い瞳が、
大きく揺れている。
まるで。
“ありえないもの”を見たみたいに。
彼女は震える声で呟いた。
「……嘘」
「そんな……」
ネメシスが、
低く唸る。
亡者達が騒いでいる。
フェルグラードも、
ゼルヴァも。
全員が、
レインを見ていた。
そして。
エルシアは、
青ざめたまま言う。
「王……」
「あなた……まさか……」
その瞬間。
天門の奥の“影”が、
笑った。

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