でも実際には、「人と分かり合うこと」「普通とは何か」「孤独から少し戻ってくること」を描いた、かなり繊細な青春小説です。
この『おぼつかない日』という話は、
一見すると、
空を見た
図書館へ行った
ケーキを食べた
だけの、とても静かな日常に見えます。
でも実際には、
「人と分かり合うこと」
「普通とは何か」
「孤独から少し戻ってくること」
を描いた、かなり繊細な青春小説です。
知りたがりの人向けに、テーマごとに深掘りしていきます。
① タイトル『おぼつかない日』の意味
「おぼつかない」とは、
不安定
はっきりしない
どこか頼りない
という意味です。
つまりこの日の主人公は、
心がまだ安定していない
んです。
眠れない。 考えすぎる。 ぼんやり不安。 でも何が不安なのかは自分でも完全には分からない。
この「理由のはっきりしない不安」は、 思春期ではかなりリアルです。
② 冒頭の「感覚の過敏さ」
最初の文章。
視覚を閉ざせば音が、
聴覚を閉ざせば光が騒がしい。
これはかなり重要です。
主人公は今、
心が休めない状態
にあります。
普通、人は眠るとき、 少しずつ感覚が静かになります。
でも主人公は逆。
音が気になる
光が気になる
秒針がうるさい
頭だけ冴える
つまり、
外の世界をうまく遮断できない
んです。
これは、 孤独や不安が強い時に起きやすい感覚です。
③ 「星」=誰かとつながりたい気持ち
主人公は流星群を見たかった。
でも街明かりで見えない。
ここには象徴があります。
本当は「綺麗なもの」を見たい
んです。
でも現実は、 街の光=現実の騒がしさ に邪魔される。
だから主人公は、
本の中の星を数える
つまり、
現実ではなく、本や記憶の中に逃げ込む
わけです。
④ 朝焼けのシーンは「共有」の場面
ここ、この小説の核です。
主人公は空を見て、 急に誰かに見せたくなる。
その相手が「ゆうか」。
重要なのは、
恋愛のドキドキそのものではない
ということです。
この場面の本質は、
「同じものを見ている」
こと。
しかも二人は離れた場所にいる。
でも、
紫色
ピンク色
朝になる空
を共有している。
つまり作者は、
人間同士は完全には分かり合えなくても、
同じ景色を共有することはできる
と言っています。
これはすごく静かな「つながり」です。
⑤ 写真が撮れていなかった理由
普通の小説なら、 「撮れてた写真」が思い出になります。
でもこの作品では、
一枚も増えてなどいなかった。
ここが重要。
つまり作者は、
「記録」より「体験」
を大事にしています。
写真は残らなかった。
でも、
同じ空を見た
同じ時間を過ごした
こと自体は本物だった。
これは、 現代の「全部記録しなきゃ」という感覚と逆です。
⑥ 「世界に一人だけ」妄想
主人公は、
「もし世界に自分しか残ってなかったら」
と考えます。
これは中学生くらいでかなり共感する人が多い感覚です。
つまり、
「自分だけ世界からズレてる気がする」
という感覚。
でもその直後、
小学生たちがゲームしてる
車が走ってる
という描写が来る。
つまり作者は、
「君が孤独を感じても、世界はちゃんと続いてる」
と言っています。
これは少し救いになっています。
⑦ 図書館=「普通」が集まる場所
図書館はこの作品では、 知識の場所というより、
「いろんな価値観が静かに並んでる場所」
として描かれています。
その中で主人公は「お雑煮」の本を見つける。
ここが作品最大のテーマ。
⑧ お雑煮=「普通」の象徴
お雑煮って、 地域によって全然違います。
でも全部、
「これが普通」
なんです。
作者はここで、
「普通」は一つじゃない
というテーマを、 食べ物で表現しています。
これはかなり上手い。
なぜなら、 食文化って「家庭」が強く出るから。
つまり、
育った場所
家族
習慣
思い出
全部が入っている。
⑨ 「彼女の普通を知りたい」
ここで主人公は、 単に恋愛してるわけじゃありません。
相手の世界を理解したい
と思っています。
これは本当の意味で人を好きになる時に近い。
見た目とか、 楽しいだけじゃなく、
どんな家で育ったか
何を普通だと思ってるか
どんな風景を見てきたか
を知りたくなる。
つまり主人公は、
「恋愛」から「理解」へ進み始めている
んです。
⑩ 「身体が普通だった」
ここは超重要。
主人公は、
ゆうかを思い浮かべても身体が普通だった
ことに驚く。
つまり以前は、
苦しすぎた
感情が暴れた
心が不安定だった
のでしょう。
でも今は違う。
好きなのに、ちゃんと呼吸できる。
これは回復です。
青春小説では、 「激しい感情」が正義みたいに描かれがちですが、
この作品は逆。
穏やかに誰かを思えること
を成長として描いています。
かなり大人っぽい作品です。
⑪ 年末NG特集の意味
主人公は、
人の失敗を笑う番組
が苦手です。
なぜか。
主人公自身が、
「失敗する側の痛み」
を知っているから。
だから、
自分の人生もNGばかりかも
と思ってしまう。
これは自己肯定感の低さです。
⑫ でも最後、ケーキを食べる
ここ静かだけど超重要。
ガトー・ショコラは、
「普通ならNG」
状態。
乾いている。 夜遅い。 半分眠ってる。
でも主人公は食べる。
これは、
「完璧じゃなくてもいい」
という受容です。
人生は、 全部成功シーンじゃない。
失敗もある。 だらしない日もある。 眠れない夜もある。
でも、
それでも生きていく
という終わり方なんです。
この小説の本当のテーマ
この作品は、
「違う普通を持った他人と、
少しずつ分かり合おうとする物語」
です。
そしてもう一つ。
「孤独は消えない。でも、人は少しずつ他人へ戻っていける」
という話でもあります。
主人公は最初、
眠れず
感覚が過敏で
世界から切れている
状態でした。
でも最後には、
空を共有し
他人の普通を知りたがり
穏やかに誰かを思える
ところまで来ている。
つまりこの一日は、
主人公が少しだけ“世界側”へ戻ってきた日
なんです。
