知りたがりに向けての作品解説
この物語をひとことで言うと、
「一人で過ごしていた男の子が、電話を通して誰かとのつながりを感じる話」
です。
知りたがりにもわかるように、順番に見ていきましょう。
① 瑞樹くんは寝すぎてしまった
主人公の貝原瑞樹(かいばら みずき)くんは目を覚まします。
でも時計を見ると、もう昼近く。
最近はおじいちゃんみたいな生活をしていて、
朝早く起きる
早く寝る
そんな毎日だったので、その反動で寝すぎてしまったのです。
ベランダにはスズメがいます。
瑞樹くんはそのスズメを見ながら、
「今日は鳥より遅く起きてしまったな」
と考えています。
ここは、
時間がゆっくり流れている朝の場面
です。
② スマホを落として大あわて
起き上がろうとした時、
スマホを床に落としてしまいます。
さらにその上に目覚まし時計まで落としてしまいます。
スマホはかわいそうです。
だから瑞樹くんは思わず、
「ごめん!」
と謝ります。
本当はスマホは物なので謝る必要はありません。
でも瑞樹くんはそれくらい優しい人なのです。
③ 彼女からたくさん連絡が来ていた
スマホを見ると、
桐生ゆうかさん
からたくさんメッセージや連絡が来ています。
昨日の夕方。
夜。
深夜。
朝。
そして少し前。
何度も連絡してくれていました。
ここでわかるのは、
ゆうかさんは瑞樹くんのことを気にかけている
ということです。
④ 瑞樹くんは電話をすぐかけない
普通なら、
「連絡が来てた!」
とすぐ電話しそうです。
でも瑞樹くんは少し待ちます。
なぜでしょう?
ゆうかさんは今きっと家族と昼ご飯を食べているだろう。
食べ終わったころに電話しよう。
そう考えたからです。
ここがとても大事です。
瑞樹くんは、
自分の都合ではなく相手の時間を考えている
のです。
この物語のタイトル
「僕の生活、君の時間」
ともつながっています。
⑤ ヨーグルトが「風邪の味」
お腹が空いた瑞樹くん。
冷蔵庫を見るとヨーグルトしかありません。
食べながら、
風邪の味だ
と思います。
もちろん本当に風邪の味ではありません。
風邪をひいた時、
家で静かに過ごした記憶。
誰かに看病された記憶。
そんな昔の思い出を思い出したのです。
つまり、
味が記憶を呼び起こしている場面
です。
⑥ なぜか急に掃除を始める
そのあと瑞樹くんは、
シンク
お風呂
トイレ
を一生懸命掃除します。
なぜでしょう?
実は人は、
心の中が少し落ち着かない時に掃除をしたくなることがあります。
瑞樹くんも、
ゆうかさんから連絡が来ていたことで心が少し動いていたのかもしれません。
だから掃除に夢中になります。
⑦ ゆうかさんから電話が来る
その時、
ゆうかさんから電話が来ます。
話しているうちに、
ゆうかさんは気づきます。
「瑞樹くん、息が荒くない?」
実は瑞樹くんは掃除を頑張りすぎていました。
でも本人は気づいていません。
こういうところが少し天然です。
⑧ 二人の会話が楽しい
電話の内容は特別な話ではありません。
事件もありません。
冒険もありません。
ただ、
最近の生活
面白かった話
くだらない話
をしています。
でも二人は笑っています。
ここがこの作品の魅力です。
作者は、
大事件ではなく、誰かと笑い合う時間の大切さ
を書いているのです。
⑨ 妹が登場する
すると突然、
ゆうかさんの妹が声をかけてきます。
ミズキくん、はじめまして!
瑞樹くんはびっくり。
なぜなら、
今まで電話の向こうにいたのはゆうかさんだけだったからです。
ところが急に、
その家族が現れたのです。
⑩ 最後の場面の意味
最後、
瑞樹くんは一人で立ち尽くします。
でも実は本当に一人ではありません。
電話の向こうには、
ゆうかさん
妹さん
がいます。
少し前までの瑞樹くんは、
寝て
ヨーグルトを食べて
掃除をして
一人で過ごしていました。
でも電話一本で、
別の家の人たちの笑い声が自分の世界に入ってきたのです。
だから最後は、
孤独だった世界に誰かの生活の音が入り込んできた瞬間
なのです。
この物語で一番大切なこと
この物語は恋愛の話にも見えます。
でももっと大切なのは、
「人は誰かの時間の中で生きている」
ということです。
瑞樹くんは一人暮らし。
ゆうかさんは家族と暮らしている。
別々の場所で別々の生活をしているのに、
電話一本でその時間が重なります。
だからタイトルの
『僕の生活、君の時間』
には、
僕は僕の毎日を生きている。
君は君の毎日を生きている。 でも時々、その二つは重なって温かい時間になる。
という意味が込められているのです。
知りたがり向けに言うなら、
「一人で過ごしていた男の子が、好きな人やその家族の声を聞いて、心が少し温かくなったお話」
だと言えるでしょう。
