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第3章:ポイ活地獄に現れた仏「コスモス」。徹底した「引き算」が発達障害の脳を救う

エサ(ポイント)で消費者を誘い込み、丸飲みにしていくまるでシャチのプール。

そこから逃げ出したぼくがたどり着いたのが、「ドラッグストア・コスモス」という名の静寂なオアシスでした。

誤解のないように申し上げておきますが、コスモスは「福祉施設」ではありません。彼らがポイントカードを廃止し、アプリを配らないのは、「消費者に優しくするため」ではないのです。

企業として極限まで無駄を省き、効率とローコストオペレーション(低コスト運営)を追求した結果です。しかし、その「徹底した引き算の企業戦略」が、皮肉なことに、現代の複雑なシステムに疲弊した発達障害の脳にとって『究極のバリアフリー空間』を生み出してしまったのです。

コスモスがいかにしてぼくたちを救う「仏」となったのか。その理由は、世間の逆を行く彼らの戦略に隠されています。

① 「毎日安い(EDLP)」と「完全税込表示」が、脳の計算ノイズを消し去る

多くのスーパーやドラッグストアは「本日ポイント5倍!」と煽るハイ&ロー戦略をとりますが、コスモスはいつ行っても同じ価格の「EDLP(エブリデー・ロープライス)」を徹底しています。これにより「今日買わなきゃ損する!」という異常なドーパミン(衝動性)が湧かず、フラットな感情で買い物ができます。

さらに神がかっているのが「すべての商品が税込価格で大きく表示されている」という点です。

「198円(税抜)」といった表記は、レジに行くまで正確な金額がわからず、無意識のうちに脳内で計算するというリソースを奪います。しかしコスモスは、値札に書かれた数字がそのまま支払う金額です。見たままの数字を受け入れるだけ。この「裏表のない明朗会計」が、ぼくたちの脳から計算というノイズを完全に消し去ってくれます。

② 「基本現金のみ」と「顧客管理の放棄」が、レジ前のワーキングメモリを解放する

現代の小売業は「ポイントアプリで顧客データを集め、多様なキャッシュレス決済に対応する」のが常識です。しかしコスモスは、キャッシュレス決済の手数料(店舗負担)すら嫌い、長年「基本現金のみ」を貫いてきました。(※近年一部店舗で変化はありますが、基本思想は現金・ポイントなしです)。顧客データの収集も放棄し、徹底的にコストを削っています。

この「企業側の割り切り」が、ぼくたちを救います。

キャッシュレス全盛期の今、「どのペイを使うか」「チャージ残高はあるか」「電波は繋がるか」「ポイントアプリは開いたか」という選択肢の多さが、ADHDの脳をパニックに陥れています。

しかしコスモスでは、『現金を出して払うだけ』。あのレジ前での高難度マルチタスクが、物理的に存在しないのです。たったこれだけのことで、ぼくたちのワーキングメモリはどれほど守られ、後ろの客の視線に怯える冷や汗から解放されることでしょうか。

③ 「完全標準化された売り場」が決断疲れを防ぐ
コスモスは、全国どの店舗に行っても「日用品はここ」「食品はここ」というレイアウトがほぼ同じになるよう、徹底的に標準化されています。これも本部からの指示や納品作業を効率化するためです。

しかし、視覚的なノイズに弱く、情報過多で「決断疲れ」を起こしやすい発達障害の脳にとって、この「どこに行っても同じ景色」は最高に心地よいのです。派手なポップ広告に急かされることもなく、「迷う」「探す」という脳のエネルギー消費を最小限に抑えてくれます。

意図せぬ「究極のユニバーサルデザイン

徹底的に無駄を省き、極限まで合理性を追求したコスモスの「引き算の経営」。
結果としてそこに生まれたのは、ポイントというエサに群がる必要のない、ノイズゼロの静かな空間でした。

そして、この心地よさに救われているのは発達障害のぼくだけではありません。「〇〇ペイ」や「アプリ会員限定」の波に取り残され、疎外感を味わっている高齢者の方々にとっても、税込価格を見て現金でサッと払えるコスモスは、「ただ安心して買い物ができる最後の避難所」になっています。

シャチのプールから上がり、コスモスという仏の手に抱かれたとき、ぼくは初めて「買い物をしても全く疲れない」という、当たり前で平和な日常を取り戻すことができたのです。

ドラッグストアコスモス商品棚一例

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