遊牧民の夫にnoteの原稿を頼んだら、わたしには一生書けない言葉が届いた
遊牧民のダーリン(夫)と、モンゴルと日本で2拠点別居婚中です。
いま、夫は無職である。
彼の名誉のために正確に言うのであれば、配偶者ビザの申請中で、色々身動きが取れず、宙ぶらりんというのが正しい。
10月から1月まで来日していた際に申請を出したものの、思っていたより時間がかかっている。申請から2ヶ月がたった。
そもそも来日中、「せっかく日本にいるんだから、そのままいられたらいいよね」と、無邪気に入管に特例をお願いしに行った。
結果は撃沈だった。
「日本に居させてください!」
千と千尋ばりに窓口で懇願したものの、ベテランぽい女性に「ダメです!」と追い払われた。
あんな風な形相で、人から追っ払われる経験はそうそうない。貴重な体験っちゃ体験だった。
「本当に婚姻関係もあるのに、、、ロマンス詐欺でもないのに、、、帰る理由もないのに、、、なんで夫婦が離れないとならないんだ、、、!」とうなだれたが、ダメなもんはダメらしい。
「しょうがないよね」と夫は言って、おとなしく帰った。
ということで、モンゴルにて絶賛待機中になった夫。
親と一緒に実家の家畜の世話をしたり、人の仕事を手伝ったりしているものの、ほぼボランティアに近い。
夏にはガイドの仕事がはじまるが、時間はたっぷりありすぎる。
そんなある日、待機に飽き飽きした夫からこんな申し出があった。
「井戸を掘ろうと思うんです」
家畜の世話をしながら、あり余った体力と時間を、井戸ほりに向けようとしていた。きっと井戸を掘れば、地元のみんなは喜ぶんだろうが、井戸掘り始めてすぐにビザ降りたらどうすんの?そもそも、「ちょっくら井戸掘ってくるわ」ってもんでもないだろうよ。
わたしは直感的に思った。
この人を暇にさせてはいけない。
「ねえ、時間あるなら、
写真撮って、原稿書いてくれない?」
夫はわたしのnoteの読者である。そのnoteを夫と作る。写真と日記。対価として、原稿料を払う。
「え〜それはいいなあああ」
暇人夫は、急に元気になった。(単純)

「チャッピーさんは使わないで書いてみてね!」
いつからかChatGPTのことを「チャッピーさん」と呼ぶようになった夫に、釘を刺した。AIの綺麗な文章が読みたいんじゃない。わたしが知っている夫の、味のある文章を世に放ちたいんだ。
ちなみに夫は最近Claude(という遊び道具)を使って、知らぬ間にアプリを作っていた。井戸を掘り出すよりはマシである。
ということで、われら夫婦は、編集者とライターとしてパートナーシップを組んだ。そんなわけで、夫の第一作をお楽しみください。
遊牧民夫の日記①雪の降った日

3月24日深夜雪降った。
今年は特に私の生まれたホブド県雪は降るのはすごく少なかったので、遊牧民の皆すごく困っていたです。
でも昨日雪を降って皆とっても喜んた。
多分遊牧民人たちにとっては一番喜んた日だと思う。
どうして喜んでいるだろうって思っているかも知らないげと、それは雪を降ったお陰で草生えるって事なんです。
その生えた草は 遊牧民飼っている動物を食べて強くなるって事です。
だから遊牧民人たちはこの雪は脂って象徴する。

雪を降った日の朝は雪で顔洗う事があります。
私は子供頃、雪を降った日顔を雪で洗わずにずっと一日外で家畜を放牧させて夕方くらいお家帰ってきて休みました。
次の日は目から涙が出てとっても痛くなって何も見れなくなりました。
それで一週間くらい何も見れなくてすごく大変でした。
町からすごく離れていたので薬も無くて、医者さん呼んでも雪をいっぱい降ったので来るのは難しかったです。
それで近くいる親戚の遊牧民の生まれたばかり人のミルク🤱楽しんで目にまいてもらったお陰でだんだん治リました。
そんな経験したので雪を降った日、雪で顔を洗事になりました。
これは教えてくれたのは私のお父さんだった。
お父さんは子供頃から田舎に暮らしていてのでたくさん色々事が知っているなんです。
まえから教えた事があったですが、私はあまりに無視したし雪で顔洗うのはすごく大変だし冷たいので嫌だったです。
でも目見れなくなってから顔洗う事になりました。
今顔を洗うとき寒いげと、なれましたので全然大丈夫です。

もう一つ事、雪を降った日はモンゴルのゲル上にある雪を掃除🧹しなければならない。
なぜなら雪を止んだら太陽出たら雪溶けてゲル覆われてもの濡れてしまいます。だから雪をふった日の朝必ずゲル上に掃除🧹するなんです。

(おわり)
編集後記(妻)
「雪は脂」という言葉。わたしには、一生辿り着けない表現だと思った。草原に生きる人にとって、水がどれだけ貴重かが、この言葉に全部入っている。
そして問題の一文。「生まれたばかり人のミルク🤱楽しんで目にまいてもらったお陰でだんだん治リました。」
「目に母乳を入れると目の病気が治る」という遊牧民の知恵を、自力の日本語で書き切ろうとした結果、世にも奇妙な映像が誕生した。この、AIには絶対に辿り着けない表現を生み出した夫を、妻として、誇らしくなった。ちなみに「楽しんで」ではなく「頼んで」の間違いと後日判明した。
雪で顔をあらっている夫だが、おそらく外気はマイナス20度くらいはあると思うので、頼むから上着を着てほしい。
※「ダーリンは遊牧民」マガジンに、夫婦の話をまとめています。
夫が帰った日の話はこちら
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