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第八章「インターハイ予選決勝」Act.2「relationship(綾香編)」 学園小説relationship

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Act.2「relationship(綾香編)」

意識が現実を離れ、深い闇の先へと辿り着く。 綾香が次に目を開けたとき、そこはどこまでも無機質な静寂に支配された場所だった。

見覚えのある景色。かつて綾香と稔之が通っていた小学校の、放課後のプールサイド。 季節は、秋も半ばを過ぎた頃だろうか。プールの水は淀んだ緑色に濁り、底の見えない深淵のように沈み込んでいる。 「……っ」 不意に、冷たい風が一瞬ビュッと強く吹き抜けた。風は無機質なコンクリートの床を跳ね上がり、小学生の姿に戻った綾香が纏う、白いワンピースの裾を軽く翻した。

学園小説 relationship 佐藤真弓 決定ビジュアル アニメ調 100%再現 水瀬綾香(少女時代・白いワンピース・紫の瞳・ストレートヘア) 小学校のプールサイド 錆びたフェンス 魂の同一性死守 [cite: 8, 19, 2026-02-02]
秋の放課後、小学校のプールサイド。
白いワンピースを纏い、
不安げな表情で立ち尽くす少女時代の水瀬綾香

「やっと来たよー」

背中に投げつけられた声に、綾香は心臓を跳ねさせて振り返った。 プールサイドを囲う錆びついたフェンスの前に、三人の少女が立っている。同じクラスで、普段はほとんど言葉を交わすことのないグループの女子たちだった。 彼女たちの口元には、幼い残酷さを孕んだ嘲笑が浮かんでいる。その瞳に宿る明らかな敵意に、綾香は身を竦ませた。

「約束どおり来ました……。だから、鞄返してください……」

自分の唇から漏れた言葉は、当時の記憶のままに紡がれていく。 どうやら自分は、何か理不尽な理由で呼び出されたらしい。

「先にさ、聞きたい事あるんだけど。あんた、最近西条君と一緒に学校帰っているじゃない? あれってどういう事? 亜紀が、西条君が好きって知ってやっている事なのかな?」

中央に立つ背の高い少女が、挑発的に言葉を向けた。同時に、右端の少女――亜紀が唇を噛み締め、俯いた。 綾香は、ここ最近自分の持ち物が一時的に紛失していた原因を、この瞬間に悟った。

「……西条君とは、同じ塾に通っているんだ。だから、たまたま一緒に行っているだけ……」

綾香は恐怖を押し殺し、かすれた声で必死に訴えた。だが、その言葉が彼女たちの嫉妬を鎮めるはずもなかった。 西条が自分に対して好意を持っていることに、綾香も気づいていなかったわけではない。気づいていながら、彼と一緒に帰ることを拒まなかった自分に落ち度があることも、幼いなりに自覚していた。

けれど、自分にとって一番の「後ろめたさ」は、そこではなかった。 自分は、稔之のことが好きなのに、他の少年と行動を共にしている。その矛盾こそが、綾香の心を苛んでいた。

綾香の初恋の相手は、紛れもなく稔之だった。 六年前、彼の両親が離婚して以来、朝夕の食事のたびに水瀬家を訪れるようになった少年。 普段は無口で、綾香に笑いかけることなど滅多になかったが、決して器用ではない自分に、彼はいつも無言で助けの手を差し伸べてくれた。 運動会のリレーで常にごぼう抜きをする稔之を、綾香は誇らしい気分で遠くから眺めたりしていた。 当の稔之は、綾香の気持ちを知ってか知らずか、相変わらず無愛想なままだったけれど。

「そう、まぁ……いいわ。返したげる」

真ん中の少女が、口元を皮肉に吊り上げたまま、綾香の近くに歩み寄った。 綾香が手提げ袋に手を伸ばそうとした、その瞬間。

少女の手が、綾香の左肩を強く押し飛ばした。

「……!!」

叫ぶ間もなかった。 綾香の身体は宙を舞い、緑色に濁った水中へと無残に放り込まれた。 激しい水しぶきが上がり、水滴がコンクリートの床に散る。 乾いた笑い声を残して、三人の少女たちはプールサイドを走り去っていった。

水の冷たさが、綾香の全身に刃のように突き刺さる。 口の中に苦く汚れた水が入り込み、足は底のぬめりにとられてうまく動かない。 それでも水深が浅かったのが幸いし、綾香はパニックを抑えながら、どうにかプールの端へと辿り着いた。

感覚の麻痺した指で縁を掴み、這い登ろうとしたその時。 綾香の、水でぼやけた視界の中に、見慣れた長い足が入り込んできた。

(……あ、稔之だ……!)

胸の奥が、熱い安堵と嬉しさで満たされた。 あの日々と同じように、彼はきっと、自分を助けに来てくれたのだ。 綾香は希望を胸に、水を滴らせながら、ゆっくりと顔を上げた。

しかし、次の瞬間。 綾香の表情は、筆絶しがたい絶望によって凍りついた。

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