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第六章「迷走を脱出する方法」Act.2「心揺れる時」 学園小説relationship

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Act.2「心揺れる時」

一週間後の昼休み。 校庭の南東隅、体育用具室の前を、稔之はふらふらと歩いていた。 連日のハードな練習に加え、夜の冷気の中をあてもなく自転車(MTB)で街中を走り回ったのがたたったのか、頭が重い。こめかみから脂汗が流れ、関節のあちこちが異常な熱を帯びている。

何故、たった一度、亮哉が綾香の家に入り込んだだけで、これほどまでに心が掻き乱されるのか。 他人が聞けば「幼馴染の家に友達が来ただけ」と笑うだろう。だが、稔之にとってそれは、守り続けてきた聖域を無残に踏み荒らされるに等しい光景だった。 (綾香たちは、俺が思っているほど、俺を必要としていないのか……?) 認めがたい孤独と、自らの依存心への苛立ちが、高熱に浮かされる意識の中で渦巻く。

その時、稔之の眼に、亮哉の姿が入った。 校庭を横切る亮哉の後ろには、女生徒が数人ついて歩いている。しきりに話しかける様子は一目瞭然の好意だったが、応じる亮哉の表情は怜悧だった。 (綾香の前では優しく見せてるけど、本当は冷たい奴なんじゃねーのか……?) 体調不良と嫉妬が稔之の判断を狂わせる。女生徒の一人が顔を伏せて立ち止まった時、稔之の怒りは頂点に達した。亮哉の方へと歩み寄ろうとしたその時、背後から最も聞き慣れた気配を感じた。

「稔(とし)、俺最近、部屋のテレビで動画を快適に見れるようにしたんだ。帰りに寄っていかないか?」 中田が声をかけながら、稔之の肩に腕を回してきた。その腕が、今日はずんっと重く感じた。 「どうした? 稔」 聞き慣れた声が掠れて聞こえる。中田にもたれかかるように、稔之はその場で膝をついた。自分でも気づかないうちに、風邪を限界までこじらせていた。

放課後。 体育科の教室の入り口で、綾香は不安げに周囲を見回していた。 「中田君、関谷君はどうしたの? 最近帰りも凄く遅いし……」 大きな瞳に憂いを湛える綾香に、中田は機転を利かせた。

「ああ、稔なら大丈夫だよ。この間の期末、あいつ出来が良くなかっただろ? だから俺の寮に寄って、一緒に課題をやってるんだ。水瀬さんに説明してないんだろうな」 その嘘を聞いた瞬間、綾香は安堵したように胸を撫で下ろした。 「良かった……! 様子が変だから心配してたんだよ。関谷君はいつも家では無愛想だからね」 礼を言うと、綾香は廊下を走っていった。中田はその背中に、静かに微笑を返した。

目が覚めると、そこは畳六畳の、見慣れた中田の寮の部屋だった。 電気ストーブの熱で左頬だけが煌々と熱い。身体のだるさは残っているが、最悪の峠は越えたようだった。 ガチャリと鍵が開く音がして、から揚げ弁当の袋を下げた中田が入ってきた。

「気分はどうだ? H亭で弁当買ってきた。もう少ししたら食うか?」 中田は掠れた声を出す稔之の枕元に、ウーロン茶のペットボトルを置いた。 「……水瀬さんには、今日は俺のところに泊まるって言っておいた。教室に来たぞ。相当心配してたんだよ、ありゃ」 からかう風でもなく、中田は淡々と続ける。 「……いつか、分かってもらえるよ」

その一言に、稔之の心臓が跳ねた。 中田は知っているのだ。自分の綾香に対する想いも。そして、過去に自分と綾香の間に何があったのかも。 知っていて、この男は「普通」の親友として横に居てくれる。

稔之はこの学校を、屈辱の象徴だと思っていた。暴力事件を起こし、第一志望への道を断たれ、多額の寄付金と誓約書で潜り込んだ場所。 だが今、布団を被り、熱くなった目頭を隠しながら、稔之は心から思った。 (……この学校に来て、良かった) 心が壊れそうな時、引き上げてくれるのは、理屈のない身近な友情だった。

学園小説 relationship 佐藤真弓 決定ビジュアル アニメ調 100%再現 関谷稔之(明るい色の髪・漆黒の瞳・精悍な体格・病床) 中田伸道(短髪・親しみやすい顔立ち) 寮の部屋 電気ストーブ 同一性の死守
中田伸道の寮の部屋。
発熱で伏せる関谷稔之と、その傍らで見守る中田。

「話変わるけどさ……稔に頼みたいことがあるんだ」 不意に中田が、照れくさそうに頭を掻いた。 「何だ?」


稔之がいつもの無愛想モードで問い返すと、中田は真剣な様子で、稔之の耳元に囁いた。 聞いた瞬間、稔之の目は点になった。

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