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Sidestory⑯-3:【構造の断罪・追撃】彩賀亮哉、知性の刃。 学園小説relationship

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【構造の断罪・追撃】
 彩賀亮哉、知性の刃。

(……施設整備補助金が狙い……?どういう事だ……?)

状況が把握できず、西谷は一瞬不思議そうな表情で亮哉を見た。亮哉は理事長の顔を見据えたままだった。

学園小説「relationship」構造の断罪の挿絵イラスト。理事長室の中に立ち、状況が把握できず一瞬不思議そうな表情を浮かべている男子高校生・西谷武久のイラスト。柔らかい質感を思わせる短く整えられた栗色(チェスナットブラウン)の髪と、年齢よりも若く見える親しみやすい「童顔」の持ち主。普段の温厚で柔らかな微笑みは潜め、碧色(エメラルドグリーン)の大きな瞳を丸くして戸惑いの色を見せ、少し口を開けて頬に一筋の冷や汗を流しながら隣(亮哉の方)を見やっている。服装は清潔感のある白いワイシャツに落ち着いた赤色のネクタイを締め、濃紺のブレザーを端正に着こなしている。親友の放った言葉の真意がすぐには理解できず、少し呆然と立ち尽くしている様子が描かれている。
状況が把握出来ず
不思議そうにする西谷武久

「我が校のパンフレットでも掲載されているが、理事にとある建設会社が名を連ねているな……理事長、貴方の遠縁である」亮哉は見下ろすように理事長の方を向いた。

学園小説「relationship」構造の断罪の挿絵イラスト。理事長室の中に立ち、相手を見下ろすような冷徹な視線を向けている男子高校生・彩賀亮哉のイラスト。襟足を整えた端正な茶髪と、物事の本質を射抜くような落ち着いた鳶色(ブラウン)の涼やかな瞳を持つ。学年一の秀才らしい理知的で冷静な顔立ちを引き締め、傲岸不遜ともとれる絶対的な自信と威圧感を放って相手(理事長)を真っ直ぐに見据えている。服装は清潔感のある白いワイシャツに赤色のネクタイを締め、濃紺のブレザーを端正に着こなしている。背景にはシンプルなベージュ色の壁が描かれている。
理事長を見下ろして
近づく彩賀亮哉

「見たところ、あの建設会社は設計監理も施工も幅広く業務展開している様だな……表向きは」亮哉は祖父が遺した資料を思い出しながら理事長に一歩近づいた。

「……だが、直接、身内である建設会社に発注するのはあからさまであると考えた貴方は、あえて工期を二期に分けるように年度を跨ぐ時期とした……年度を跨げば予算区分が変わる。工期を二期に分ければ、別工事として扱える……つまり分離発注が容易になる」

理事長は黙り込んで下を向き震える手を机の上に置いた。亮哉はその手元に視線を落としながら続けた。

「更に、二期でも身内会社に直接、全工事を請け負わせるのではなくカーテンウォール工事のみを特命として発注させた。今までの工事実績からという理由で」亮哉は理事長の背後の窓――体育館に取付予定と同じメーカーであるカーテンウォールに一瞬だけ視線を向けたが、再度、理事長の方へと戻した。

「……景観を考慮してデザインの統一性は必然だ……」理事長の声が掠れる。自身でも表面的な理由を述べているに過ぎないのは理解しているかのようだった。亮哉はその呟きには応えず続けた。

「改修工事の中でもカーテンウォールは特に高額だ。更に相場より高いとなれば……」西谷は、亮哉のいつものよく通る声が低く響き執拗さを帯びている事に気づいた。理事長の肩がわずかに揺れた。亮哉はその反応を見逃さなかった。

「……貴方の息のかかった建設会社に多額の金が入るわけだ」視線で重力を落とすように亮哉は理事長を見た。部屋の中に沈黙が下りる。

「しかし、単にカーテンウォール発注だけでは、学校の金を回すだけだ。だから、貴方は施設整備補助金目当てに構造不備と絡めた……実際は耐震対策などしていないのにな」

理事長は手の震えを鎮めるかの様に、机の上で手を振り払った。右手の甲が机に立てかけていた万年筆に当たり、床へと転がり落ちた。亮哉は部屋の隅へと転がる万年筆に視線を移した。

「何よりも写真に写っていたアンカーの位置がその証拠だ。耐震補強工事という名目で提出しているのならアンカーは構造の要である梁に打設するはずだ。でないと、アンカーフレームにかかる荷重が適切に建物に流れないからな……」亮哉は万年筆を拾い上げると理事長の机の上に先を向けて置いた。机に軽く叩きつけた乾いた音が沈黙の中でやけに大きく響いた。

学園小説「relationship」構造の断罪の挿絵イラスト。理事長室の中に立ち、右手に持った黒と金の万年筆のペン先を真っ直ぐにこちら(理事長)へと向けて突き出している男子高校生・彩賀亮哉のイラスト。襟足を整えた端正な茶髪と、物事の本質を射抜くような落ち着いた鳶色(ブラウン)の涼やかな瞳を持つ。学年一の秀才らしい理知的で冷静な顔立ちを険しく引き締め、傲岸不遜ともとれる絶対的な自信と冷徹なプレッシャーを放って相手を追い詰めている。服装は清潔感のある白いワイシャツに赤色のネクタイを締め、濃紺のブレザーを端正に着こなしている。彼が手にした万年筆が、逃げ場を奪う知性の刃を象徴するように描かれている。
万年筆を拾い上げ
理事長の机に先を向けて
叩きつける様に置く彩賀亮哉

「……勿論、貴方も梁に打設しなければならない事は理解していたはずだ。だが、梁の中は鉄筋もあり、アンカーを貫通させるには開口補強を施したりと工事費がかかるからな……だから施設整備補助金の対象になるのだが……しかし、補助金が目当てな貴方は梁よりは打設しやすい壁へとアンカーを打った。梁下ギリギリの所へ」亮哉は項垂れたままの理事長の視界を捕える様に机の上へと視線を向けた。

「梁の出は意匠的には建物内部側だ。対して外壁側は一見、フラットだから壁に打設しても梁に打設してあるように見せかけることは可能だろう……しかし、壁は貴方の想像以上に脆かった。前時代に建てられたこの体育館は設計図通りの強度のコンクリートを使用していなかったからな。……竣工図は確認していただろうが、伝票は見落としていたのだろう」
亮哉は一瞬だけ西谷へと視線を返し、わずかに笑みを見せた。伝票の“数値”から構造の矛盾を見抜いた親友の観察力に、静かな敬意を払うように。次の瞬間には、再び理事長へ向き直り、冷徹な表情へと戻った。

「……壁の強度不足は、貴方自身が最初から分かっていたはずだ」淡々とした声が、部屋の空気をひとつ沈ませる。

「だからアンカーの打設は一期の業者ではなく、別途の下請けに任せた。そして、その“監理”を遠縁の建設会社に置いた。監理と施工を分けたように見せかけながら──実際には、すべて貴方の掌の上だ」亮哉は鳶色の前髪をさらりと掻き上げた。思考のピースが完全に噛み合った時にだけ見せる癖である。

「監理側が『梁に打ったように見える写真』を提出すれば、学校は外観上の不備を疑わない」一拍置いて、声がさらに低く落ちた。

「そして──引張試験の数値も“揃いすぎて”いた。あれは、壁に打ったアンカーを梁に打ったように見せるための“数値の偽装”だ」言葉が刃のように研ぎ澄まされていく。

「写真で“見た目”を誤魔化し、試験結果で“数値”を誤魔化す。そのための分離発注だったんだろう?」足場解体の日に聞いた若手監督の不安げな声が、亮哉の脳裏で静かに反芻される。

亮哉は理事長の顔を上から覗き込み、逃げ場を奪うように視線で射抜いた。 理事長の喉がひくりと震え、押し殺した呼吸が机の上に落ちる。

亮哉は膝を屈め、理事長の視線と同じ高さへと自分の視座を落とした。逃げようとする目を、逃さず追い詰めるように覗き込む。

「……そして、浮かせた施設整備補助金を、相場より高額なカーテンウォール工事へと廻した。最終的に、その金がどこへ流れたか──言うまでもないな」
声は先ほどよりもさらに低く、重かった。

亮哉の声に圧迫されたかのように、鉛の様な重力を帯びた沈黙が部屋の中を静かに支配していく。押し潰されるかの様に理事長は俯いたまま両手で頭を抱えた。それまで無機質な人形の様に理事長の机の横に立っていた事務局長が一瞬、交互に理事長と亮哉に感情の読めない視線を動かした。

(……そんな……理事長先生が……施設整備補助金を流用していたなんて……)西谷は亮哉が暴いた内容のあまりの衝撃からか膝の震えが止まらなかった。

「……理事長先生……何かの間違いですよね……?」西谷はその場に崩れそうになるのをこらえる様に声を振り絞った。一瞬足元がよろめき、思わず踵に力を込めた。

学園小説「relationship」構造の断罪の挿絵イラスト。理事長室の中に立ち、大粒の涙を流して悲痛な表情を浮かべている男子高校生・西谷武久のイラスト。柔らかい質感を思わせる短く整えられた栗色(チェスナットブラウン)の髪と、年齢よりも若く見える親しみやすい「童顔」の持ち主。普段の温厚で柔らかな微笑みは完全に消え去り、碧色(エメラルドグリーン)の大きな瞳から涙を溢れさせ、眉をひそめて今にもその場に崩れ落ちそうになるのを必死に堪えている。服装は清潔感のある白いワイシャツに落ち着いた赤色のネクタイを締め、濃紺のブレザーを端正に着こなしている。背景にはシンプルな壁が描かれており、尊敬する大人の裏切りを前にショックと悲しみで足元をよろめかせている痛ましい姿が表現されている。
切実に理事長に訴えかける
西谷武久

「……近年は……生徒を集める為に……何かと資金が……」小刻みに肩を震わす理事長の姿は西谷の微かな一縷の望みを無残に裏切った。しかし、苦渋に満ちた理事長の自白は西谷の心に憐憫の情を灯らせた。西谷は徐々に肩の震えを大きくする理事長の傍らに歩み寄った。

「理事長先生、しっかりして下さい。今なら、まだ間に合うかも知れません……。皆にすべて話して……。今までの様にはいかなくなるかも知れませんが……。それでも……」部活の予算折衝会議では経営者側と意見が対立することもあった。しかし、それは学校を適正に活動させる為であり、さらに少子化が進む中、学校側も経営の見通しの厳しさを軽減する手段の一つであることは西谷も理解していた。

「僕は知っています……理事長先生が、どんな時でも生徒を守ろうとしてきたことを……」 西谷の切実な声は最後は聞き取れないほど小さくなっていった。

「……ありがとう。西谷君。……君みたいな生徒ばかりだと本当に良かったのだが……」理事長は狼狽の色を残しつつもいつもの温厚な教育者の表情を一瞬だけ取り戻した。

「だが、不正は犯罪だ。見逃すわけにはいかない」西谷の矛盾の狭間で滲んだ視界を亮哉の力強くも清涼な声が現実へと呼び戻した。

「……確かに、貴方の教育理念は本物だったのだろう。しかし、手段は法律の枠から逸脱している。理想を追うが故に手段を選ばなくなった……」理事長を更に追い詰める亮哉の声が突然封じられた。

「それ以上は口を慎むんだな」事務局長が音もなく横から回り込み、左手で亮哉の右肩を掴んだのである。

「……!!」亮哉は咄嗟に肩を動かして事務局長の手を振り払おうとするが、肩は機械で挟まれたかのように動かなかった。
抵抗の力がまるで効かず、亮哉は歯を食いしばり額には汗が滲み出る。冷徹な表情は焦燥へと変化していった。

学園小説「relationship」構造の断罪の挿絵イラスト。理事長室の中で、画面左側から伸びてきた大人の手(事務局長の手)に右肩を強く掴まれ、動きを封じられている男子高校生・彩賀亮哉のイラスト。襟足を整えた端正な茶髪と、本来は物事の本質を射抜くような落ち着いた鳶色(ブラウン)の涼やかな瞳を持つ。しかし今は、機械のように強力な力で押さえつけられて抵抗できず、歯を食いしばり、額に冷や汗を滲ませている。学年一の秀才らしい理知的で冷静な顔立ちや傲岸不遜な態度は崩れ、予期せぬ物理的な実力行使に対する焦燥の表情へと変化している。服装は清潔感のある白いワイシャツに赤色のネクタイを締め、濃紺のブレザーを端正に着こなしている。背景にはシンプルな壁が描かれており、絶対的な「知性」が大人の圧倒的な暴力の前に屈しかけている緊迫した状況が表現されている。
肩を掴まれた手が離れず
焦燥を見せる彩賀亮哉

「彩賀!!」予想していなかった親友の危機に西谷は思わず声をあげた。事務局長の眼鏡の奥の感情は読み取れなかった。
「理事長。後は私にお任せを」抗う亮哉の動きを完全に封じた事務局長は極めて事務的な口調で指示を仰いだ。

「……やむを得ない……彩賀君の件は君に任せる」顔を上げた理事長はどこか諦観して遠くを見る様に事務局長を見やって力なく口を開いた。その声を合図に事務局長は亮哉の肩を掴む力を強めた。亮哉の口から呻き声が微かに漏れた。

(……大変なことになってきたぞ……誰か……!!)西谷は亮哉の方に駆け寄ろうとするが靴の裏がカーペットに根を張ったかのように動かず、ただ立ち尽くす事しか出来なかった。

Sidestory⑯-3 終わり

……To be continued!!

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