白い宇宙船の観測者
個体De-naedは、ある星を管理する存在だ。
彼女は、目的地に到達したらしい。
「すごく水があるね」
De-naedは窓から外を眺め、目を細める。
「この星どうかな?」
個体θ-N-01は個体De-naedに聞く。
「まだ観察しないとわからないよ」
彼女はその星の生命体を観察する。
「あら、よく手を繋いでいるね」
「そうだね、どういう意味かな?」
「個体同士、柔らかい部分を近づけて、呼吸を乱しているね」
「効率は悪そうだけど……彼らには必要なんだろうね」
二個体は首をかしげる。
長い期間、観察していくうちに、その星は徐々に活気を失っていく。
「個体同士そんなことしないで、もっとやることあるのに」
「ちょっと今回の星は私たちに向いてないね…」
二個体は落胆した。
「あぁ、繁殖行為の時間だね」
「そうだね」
彼女たちは行為を繁殖目的としか見ていない。
その周期は、どちらの身体にも負担を与えないよう設計されている。
ふと、彼女たちは、観察している星の行為を真似る。
De-naedとθ-N-01は、同じ温度を持つ指同士を、確かめるように絡ませる。
「やっぱり、どういう意味なのかわからないね…」
その後、De-naedは自慢の白い宇宙船のハンドルを握る。
「ここから約1,400光年……いや、条件次第で3,200光年先ね」
「じゃあ、次の栄養摂取周期までには帰還できるね」
――彼女たちはそれを、昼食とは呼ばなかった。
恒星を糧とする文明にとって、
時間と距離は“空腹”の単位でしかなかったからだ。
De-naedはθ-N-01に問う。
「ねぇ、人間たちが言っている、あの”身体を選ぶ言葉”って、なに?」
θ-N-01は答える。
「わからないよ、だって私人間じゃないもん」
彼女の自慢の白い宇宙船は、人間には、飛行機雲にしか見えないようだ。
本作は「有限の愛を抱いて」連作の一篇です。
