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【理学療法士】骨太の方針2026を、臨床研究の立場から読む

🔸はじめに:骨太の方針、確認してる?

2026/06/30に、「骨太の方針2026」の原案が示されました。
皆さんは、もう確認されましたか。

ホネブト。モリモリ。

……と言いながら、正直に言うと、私はこれまで「骨太の方針」という言葉は知っていても、自分の仕事と深く結びつけて考えたことはありませんでした。

そんな中、上司から「骨太の方針、ちゃんと確認した?」と聞かれました。
(ん? そんなもん確認してねぇ。)

医療研究開発に関わる立場から見ると、骨太の方針は、国がどの領域に課題意識を持ち、どこに資源を投じようとしているのかを示す、かなり重要な“方向感”そのものでした。

✒️筆者紹介
理学療法士/修士(リハビリテーション学・公衆衛生学)

回復期リハビリ病院では病棟主任・教育主任を歴任。脳卒中後の機能回復と栄養管理の臨床・研究に携わる。

リハビリテーション医学の科学的根拠を追求すべく、大学院にてリハビリテーション学の修士号を取得。さらに、臨床研究・疫学・統計解析の実力を体系的に習得するため、公衆衛生学修士(MPH)を取得し、医療データの分析にも軸足を置く。

医療リアルワールドデータ活用人材プロジェクト 東京大学履修コースで、医療の現場から得られる大規模データを用いた実証研究に取り組む。 臨床と疫学をつなぐ視点から、介入効果の可視化と医療政策への応用を目指している。

現在は、臨床現場を離れ、医療研究開発センターのスタディーマネージャーとして新たな挑戦を始める。

🔸骨太の方針とは?

骨太の方針の正式名称は、「経済財政運営と改革の基本方針」です。

毎年6月頃に、政府の経済財政政策の基本的な方針を示すとともに、経済、財政、行政、社会などの改革の方向性を示すものとされています。今年は、3月末の衆院解散で作業が少し遅れたという噂です。知らんけど。

内閣総理大臣が経済財政諮問会議に諮問し、同会議での審議・答申を経て、閣議決定されます。


骨太の方針は2001年から毎年策定されています。
たとえば、小泉内閣では「構造改革」、岸田内閣では「新しい資本主義」といったように、その時々の政権が重視する政策の方向性が反映されてきました。

つまり骨太の方針とは、単なる予算資料ではなく、「今の政府が、どの課題を重視し、どこに資源を配分しようとしているのか」を読み取るための基本資料だといえます。

🔸研究は、研究者の探究心から生まれる

これまで私は、研究というものは、まず研究者自身の興味関心や探究心から生まれるものだと考えていました。
今も、その考えは変わりません。

むしろ、誰かに言われたから始める研究だけでは、本当に突き抜けた(ぶっ飛んだ)発見には届きにくいのではないかと思っています。

日々の診療や研究活動の中で感じる違和感。
まだ誰も十分に答えを出せていない問い。
目の前の患者さんや社会の課題に対する切実な問題意識。

そうした研究者自身の内側から湧き上がるものがあるからこそ、新しい知見や価値が生まれるのだと思います。

研究者の問い、違和感、執念。
そこは、研究の根っこの部分として大切にされるべきです。

🔸研究を社会に届けるには、翻訳が必要になる

一方で、私は現在、医療研究開発センターで働いています。
そこでは、研究者の興味関心や探究心から生まれた研究を、実際に社会へ届けるための支援を行っています。

臨床研究は、よいアイデアがあるだけでは前に進みません。

研究を進めるために立ちはだかる、壁・壁・壁。

どれだけ重要な問いであっても、研究を実施するにはお金がかかります。
人も必要です。

研究を継続していくためには、「この研究はなぜ必要なのか」「どのような社会的意義があるのか」「患者さんや医療現場、社会にどのような価値をもたらすのか」を、相手に伝わる言葉で説明する力が求められます。

特に、国の資金提供を受ける研究や、医療政策と関係する研究では、研究者の中にある問いを、社会に伝わる言葉へ翻訳することが重要になります。

研究の価値を、政策や制度、医療現場の課題と結びつけて説明すること。
関係者を説得し、必要な資金や人材、体制を確保していくこと。

むしろ、研究が社会に届くために欠かせないプロセスなのだと思います。

🔸骨太の方針は、研究を進めるヒントになる

そのときに、骨太の方針は重要なヒントになります。

骨太の方針を読むことで、国が今どの課題を重視し、どの領域に資源を投じようとしているのかが見えてきます。
そして、自分たちが支援している研究が、その大きな流れの中でどのような意味を持つのかを考えることができます。


研究者の探究心を出発点にしながら、その研究を社会に届けるために、政策の方向性を理解する。
医療研究開発に関わる立場として、骨太の方針を確認する意味は、まさにそこにあるのだと感じました。

🔸2026年の骨太方針原案に示された医療分野の方向性

2026年の骨太方針原案を医療分野から見ると、大きく3つの方向性が示されています。

1. 医療・介護・障害福祉の提供体制の見直し

1つ目は、医療・介護・障害福祉の提供体制の見直しです。

DXやAI活用による生産性向上、医療機関の経営安定、職員の処遇改善、2040年を見据えた地域医療構想、医療機関の連携・再編、医師偏在対策などが挙げられています。

単に医療費をどう抑えるかという話ではなく、今後の人口構造や医療需要の変化を見据えて、医療・介護・福祉の体制をどう維持し、再構築していくかが問われているのだと感じます。

2. 医療情報の利活用

2つ目は、医療情報の利活用です。

電子カルテや電子処方箋の普及、医療機関の情報システム刷新、サイバーセキュリティ対策、医療・介護情報の連携、二次利用を含むデータ活用基盤の整備が示されています。

医療情報は、日々の診療のためだけでなく、研究、政策立案、医療の質の向上にもつながる重要な資源です。
今後、医療データをどのように安全に活用し、患者さんや社会に還元していくのかは、医療研究開発に関わる立場としても重要なテーマだと感じます。

3. 創薬・先端医療と予防医療の推進

3つ目は、創薬・先端医療と予防医療の推進です。

革新的な医薬品・医療機器の開発、再生・細胞医療、遺伝子治療、免疫治療、小児・希少疾病、感染症対応、AIを活用した創薬、国際水準の治験・臨床試験体制の整備が掲げられています。

また、「攻めの予防医療」として、健康寿命の延伸、がん検診、生活習慣病予防、認知症の早期対応、PHRの活用、切れ目のないリハビリテーションなども重視されています。

※PHRとは、Personal Health Recordの略で、個人が自分の健康・医療情報を管理し、活用するための仕組みです。
健診結果、薬の情報、予防接種歴、血圧や体重などの生活データを本人が確認し、必要に応じて医療機関等と共有することで、予防医療や継続的な健康管理につなげることが期待されています。


🔸医療費の話だけではない

今年の骨太方針は、医療費や制度改革だけの話ではありません。

医療提供体制、医療DX、創薬・先端医療、治験・臨床試験、予防医療、リハビリテーションまで含めて、国がどこに課題意識を持ち、どこに資源を投じようとしているのかを示している資料だといえます。

だからこそ、医療研究開発に関わる立場としては、自分たちが支援している研究が、こうした国の大きな方向性の中でどこに位置づくのかを考えることが重要だと感じました。

🔸おわりに:研究の価値を、社会の言葉に翻訳する

骨太の方針を読むことは、研究テーマを政治に合わせることではありません。
研究の価値を、社会の言葉に翻訳することだと思います

研究者の問いを大切にしながら、社会がどこに課題を感じ、国がどこに投資しようとしているのかを理解する。
そのうえで、研究計画書、申請書、説明資料の中で、研究の意義をより伝わる形にしていく。

これが、研究支援職としての重要な役割なのだと思いました。

研究は、研究者の探究心から始まる。
しかし、その研究を社会に届け、資金を獲得し、実装につなげるには、社会の方向性を読む力も必要になる。

骨太の方針は、そのための地図のひとつなのだと思います。



↓↓ 昨年、理学療法士から転職しました



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