山の暮らしの物語39-1 道普請(みちぶしん) 草刈り
< このシリーズは
戦後、ある山村に実在した一家をモデルとして、創作したものです >
梅雨が明けると、ゆきちゃんの暮らす地区では
隣の地区と協力して、村道の草刈りをする事になった。
早朝から、数人の女子衆( おなごしゅう… 女たち )がカマを手に集まった。
母さんやまあちゃんちのおばちゃん達がいる。
知らないお姉さんもいる。
元気な近所のおばあちゃんもいる。
それぞれの地区から草刈りを始めて、真ん中で隣の地区と合流する事になっている。
ゆきちゃんも、はりきって参加した。
今日は日曜日で、子守りの姉やさんが実家に帰っているから
文ちゃんのお守り役だ。
「ちゃんと見とくんやで〜」
と母さんから言われたので、緊張している。
「おはようさん」
「ええ 天気でよかったねえ」
「あれま、文ちゃん大きなったね」
ご近所どうしの、にぎやかな挨拶が済むと
一行は朝露にぬれた道端の雑草にカマを入れた。
この村には、さほど高い山はないが
いくつもの峰が連なり、どこまでも続いている。
「山波はるか 雲晴れて 〜」という地域の歌があるくらいだ。

平らな土地など、どこにもない。
傾斜のゆるい場所を選んで
石垣を積み、やっとできた平地に、ぽつん、ぽつんと家が建っている。
その10軒足らずの家がまとまってひとつの地区になる。
そういう地区が村中に散らばっているのだった。
今日、草刈りをするのは
山はだに沿って、二つの地区をつないでいる一番上の山道で
急な登り下りはないが、人が一人通るのがやっとの細い道だ。
はるか下方には、村を東西に流れている深い谷川が見える。
その川に沿って、最近出来た林道が走っている。
途中に、手押しの荷車が通れるくらいの、もう一つの道もあったが、
林道工事のせいで、所々が崩れ落ちてもう使えなくなってしまった。
(お菓子を買ってもらったお店があったのに…)
ゆきちゃんは、なつかしく思い出す。
そんな風景を見下ろしながら
草刈り部隊は、にぎやかなおしゃべりと共に進んで行った。
途中には、杉林や雑木林が続いている。
危なっかしい崖崩れの跡もある。
冷たい湧き水もある。
ピンクのササユリの群落もある。
刈りとった草はそのまま道の下へ投げ捨てながら進んでゆく。
やがて、おひさまも高く登り、そろそろお腹が空いてきた頃
前方から「お〜い」という声が聞こえた。
隣の地区からも、女子衆がやって来たのだ。
ゆきちゃんのおばちゃんがいる。
従姉妹のメイちゃんが手を振っている。
知らないおばちゃんもいる。
しっぽをぶんぶん振ってる白い子犬までいっしょだ。

ゆきちゃんは、はしゃいで駆け出した。
にぎやかな一団は、小さな谷川のそばで合流してお昼になった。
村の道
一番上の道
谷底から 100mくらい上にある、山に沿った細い道で
急な登り下りはないが、人が一人通れるくらいの道幅である。
二番目の道
リヤカーを引いて通れるくらいの道幅だ。
山に沿って、石垣を詰んだり、山肌を削ったりと
昔、人力で作ったものだろう。
それぞれの家へは、この村の道から、さらに個人の脇道が付いている。
こちらは、山を登り降りする細い山道である。
三番目の道
戦後 ごく最近出来た林道
村を東西に流れる谷川に一番近い低い位置にあって
初めて車が通れる道路
この道路を造ったため
二番目の道は 徐々に崩れ落ちてやがて消滅する
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