山の暮らしの物語25 父さんの肩車
< このシリーズは
戦後、ある山村に実在した一家をモデルとして、創作したものです >
Dad's shoulder ride
父さんは、小さなゆきちゃんを肩に乗せて立ち上がった。
「よいしょ! しっかり つかまっとけよ」
「うん」
ゆきちゃんは、父さんの頭にしがみつく。
父さんは、毎日、仕事の前に発電所へ行くので
時々、学校に行くゆきちゃんを肩車して、いっしょに家を出る。
お腹の大きくなった母さんが、笑って見送る。
そうやって、山を降りると
「あ〜 いいなぁ」
「ずる〜い」
いっしょに通学する近所の子供達に、取り囲まれた。
ゆきちゃんは、父さんの肩の上でいい気分だ。
うんと遠くまで見えるので、ちょっといばってみたくなる。
発電所まで、みんなそろってにぎやかに歩いて行く。
父さんは、肩の重みを感じながら、いろんなことを思い出していた。
< 田植え事件 >
ある時、田植えの日にゆきちゃんをタライに乗せて田んぼに浮かべていた。
子守する人手がないからだ。
ところが、あんまりぐずるので
かんしゃくを起こした父さんは、タライをひっくり返してしまった。
びっくりしたゆきちゃんが泣き叫んだのは当然だ。
母さんは呆れたが、知らん顔で田植えを続けた。
( 父ちゃんがひっくり返したんやから、自分でなんとかするやろ )
母さんは意外とクールだ。
父さんは、仕方なく
泥だらけで大泣きするゆきちゃんを
家に連れ帰って井戸端で洗い、着替えさせて田んぼに戻ってきた。
母さんは、心の中でクスクス笑っていたらしい。
< ハシカ騒動 >
またある時、ゆきちゃんは、重いハシカにかかって高熱が続いた。
母さんの顔も分からない程ひどくなって
もうダメかも… と実家から、じいちゃん ばあちゃんも駆けつけたが
なんとか生き延びた。
そうやって、大事に育てた一人娘だ。
その子がやっと小学校に上がった。
お勉強も、ちゃんとできるみたいだ。
山の一軒家で一人っ子で育ったせいか、人見知りがひどくて心配したが
お友達とも仲良くやっている。
発電所の所で、ゆきちゃんを下ろすと
「気い つけて行けよ」
父さんは、手をふって子供たちを見送った。
小さな 英語レッスン
父さんの肩車
Dad's shoulder ride.
「気い つけて行けよ」
父さんは、手をふって子供たちを見送った。
「Take care」
The father waved goodbye to the children.
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