山の暮らしの物語24 今日から一年生
< このシリーズは
戦後、ある山村に実在した一家をモデルとして、創作したものです >
I became a first grader today
山の学校に春が来て、入学式が始まろうとしていた。
ここは、小学生と中学生がいっしょに通う 村でたったひとつの学校だ。
ゆきちゃんたち十三人の新入生は、一番前の席に並んでいた。
その後ろにお兄さん お姉さん達、一番後の壁際では
新入生の親達が 古びた背広や色あせた和服で
精いっぱい着飾って我が子を見守っている。
先生はたったの四人、生徒は全部合わせても六十人余りだ。
演台の横の大きな花瓶には
村人が持ち寄った紅梅や黄色いれんぎょうなどが活けられて
山の学校のささやかな入学式を祝っている。
村長の挨拶に続いて
女先生の弾くオルガンの音に合わせ、君が代が始まった。
ゆきちゃんは、今日から一年生になったのだ。
そんな入学式から、もう十日が経った。
「この子は人見知りで 一人で学校によう行かんやろ」
と親戚にも さんざん心配されて 大いにプライドが傷つき
「行かんならんようになったら、行くんや!」と叫んだゆきちゃんは
母さんの心配をよそに、なぜか元気に学校に通っていた。
担任は、オルガンを弾いたあの優しそうな女先生だ。
生徒の数が少ないので
一年生から三年生までが一つのクラスで学ぶ複式授業になる。(注1)
今日の一年生は国語の授業だった。
教科書を開くと
大きな白い犬が 元気に駆けて来る絵があって
「しろ こい しろ こい」と書いてある。
犬と遊んでいる男の子と女の子の絵には
「たろうくん はなこさん」だ。
それは ゆきちゃんが学校で初めて習う文字だった。
先生は
一年生に「しろ こい しろ こい たろうくん はなこさん」と練習帳に書かせておいて
隣の二年生に 算数の足し算を教え
端っこの三年生には 理科の授業という有り様だから、なかなか忙しい。
こうして、あっという間に午前中の授業が終わり
ゆきちゃんは、ラッパ水仙の絵がある小さなお弁当箱を開いた。
母さんが朝早くから焼いてくれた卵焼きが入っている。
隣りのまあちゃんは、もう茹で卵を頬張っている。
肉屋さんも 魚屋さんもない 自給自足の村では
卵はとびっきりのご馳走なのだ。
後は だいたい野菜の煮付けに梅干しと決まっていた。
中には、お握りだけの子もいる。
蒸したさつまいもだけの子だっている。
それでも、皆んな元気いっぱい笑っていた。
注1 複式授業 2つ以上の学年をひとまとめにした学級
近年の日本では 過疎地などで学校規模が小さい場合に
限って行われている
小さな 英語レッスン
今日から一年生になりました
I became a first grader today.
山の学校に春が来て、入学式が始まろうとしていた。
Spring had arrived at the mountain school, and the entrance ceremony was about to begin.
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