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ベッドの中で、世界を旅した #115

五年前、次女を妊娠中に、
切迫早産で入院した。

体調はそこまで悪くはなかったけれど、
絶対安静で、トイレと食事と診察以外は
ずっと寝たきりの生活。

そんな日々を、3週間ほど過ごしていた。

普段インドア派の私でも、
さすがにあのときは息が詰まって、
どこかに出かけたいと思った。

そんなときに思いついたのが、
“ベッドの中で世界を旅すること”だった。


眠れない夜、
今日はどこに行こうかと考える。

寝台特急に乗ってみたい。

昔から一度は乗ってみたいと思っていたけれど、まだ実現できていないから。

そうと決まったら、
YouTubeで寝台特急の旅を探す。

イヤホンをつけて、電車の揺れる音を聞く。

リズミカルな音が、なんとも心地いい。

車内アナウンス。
車両と車両の間の、扉を開ける音。

ときどき目を閉じて、耳を澄ませる。

そうすると、本当に電車に揺られているような感覚になる。

体はベッドの中にいながら、
心は電車に揺られている。

このままどこへでも行けるような気がした。

そうやって毎晩、
ベッドの中でいろんな場所を旅した。

その時間だけは、確かに外の世界にいた。

静かで、不安だった夜を、
やさしく包み込んでくれた。


体は外に出られなかった時期だったけど、
心は自由に旅をすることができた。

そのことに気づいたとき、
少しだけ、心細さから解放された気がした。

体は思うように動かないこともある。

それでも、心は自由だ。

心は、自分だけのもの。

動けない体の中に、
閉じ込められているように感じるときでも、

心は、
自分を連れ出すことだって
できるのかもしれない。


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