見出し画像

【第10話・前編】「俺に迷惑が掛からなければ好きにやれ」:部下を育てるつもりなど1ミリもなかった私のマネジメント術

前話(第9話)において、度重なる奇跡が重なり、1秒の社内営業もすることなく、念願の「担当物件ゼロ」という極上の専任管理職の椅子を勝ち取る様子をお伝えした。

現場のクソ面倒なトラブルや土日の理事会・総会から合法的にエスケープし、オフィスの冷房の効いた快適な席を手に入れた私。

しかし、サラリーマン組織というものはどこまでも執拗だ。現場の物量から逃げ切った私の前に、今度は「部下」を持たされ、役職(マネジメント)という名の新しい労働がドサリと降ってくることになった。

世の一般的なビジネス書や社内研修であれば、ここから「いかに部下のモチベーションを高め、チーム一丸となって高い目標を達成するか」という、美しきリーダーシップ論が語られるのだろう。

だが、ここで本社の経営陣に隠れて、大真面目な顔をしてデスクにふんぞり返っていた私の脳内をぶっちゃけさせていただきたい。

(他人の育成だの、チームの目標達成だの、私の人生には1ミリも関係がないし、どうでもいい。私はただ、これ以上現場の労働に付き合いたくないから管理職になったんだ。
頼むから部下の尻拭いという新たな重労働で、私の貴重な可処分時間を搾取しないでくれ)

これが、マネージャーという立場に引きずり出された私の、純度100%の本音であった。

人材育成の放棄:俺を巻き込むなという防衛線

誤解しないでいただきたいのは、私は部下に対して「厳しくマイクロマネジメントをして潰す」ような、昭和のパワハラ上司では決してなかったという点だ。なぜなら、部下の行動をいちいち監視して細かく指導する行為自体が、私にとって膨大なエネルギーを消費する「最悪の労働」だからだ。

かといって、完全に放任して部下が現場で特大のクレームやリプレイス(契約解約)の爆弾を破裂させたらどうなるか。その尻拭いという最悪の労働が、すべて私のデスクへと直撃する。それだけは絶対に避けなければならなかった。

そこで、私が部下たちを前にして、会社の看板を背負ったプロの顔をしながら言い放った基本方針(マネメント)が、以下の言葉である。

「いいか、基本的には君たちの裁量に任せる。『俺に迷惑が掛からなければ、好きにやれ』。
これが我がチームのスタンスだ」

この言葉を聞いた若手や後輩たちは、一様に目を輝かせ、「不動さんは、我々の主体性をここまで信頼し、のびのびと挑戦させてくれる器の大きい上司なんだ!」と、勝手に感動の涙を流した。

もちろん、そんな高尚な信頼など、私の脳内には1ミクロンも存在しなかった。

(ただ単に、私を巻き込むな。面倒なトラブルを起こして私の定時退社の権利を脅かすな、と言っているだけである)

全力で逃げるための、ゲスなセーフティネット

だが、ただ「好きにやれ」と言うだけでは、サボりのプロとしては片手落ちだ。
本当の事なかれ主義者は、部下が勝手に暴走して自分に火の粉が飛んでくるリスクを、システムの力で完全に無力化しておく。

勘違いしないでいただきたいのだが、私は部下の失敗の責任を取るつもりなど、端から1ミリも持ち合わせてなんかおらず、もし特大のトラブルが起きたら、私は部下を生贄(いけにえ)にして全力で逃げる気満々だった。

だからこそ、私が課した唯一の絶対ルールは、「ヤバい兆候があったら隠さずに、一番最初の段階で相談に来い」というものだった。

「トラブルは初期対応がすべてだ。ボヤのうちなら私がいくらでもアドバイスできるが、大火事になってから持ってこられては困る。だから、少しでも不穏な空気を感じたら最速で報告しなさい」

プロの顔をしてそう熱弁しながら、私の脳内で行われていた計算は極めてゲスだった。
部下が起こした問題が「大火事」にまで発展してしまうと、私自身の首が危なくなる。
だから、初期の「ボヤ」の段階で部下にすべてを吐き出させ、私の実労働が1分も増えないよう、【あらかじめ社内の上層部や業者、あるいは部下自身に責任をすべてなすりつけるための『完璧な逃げ道(言い訳の布陣)』】を最速で脳内シミュレーションしていたのだ。

私は部下を育てる気も、守る気も、最初から一切なかった。
ただ、自分が絶対に傷を負わず、一番楽をしたいという一心で、私は「好きにやれ」という免罪符を配り、自分を守るための絶対的な防衛線を敷いたのだ。

しかし、この「育てる気も守る気もゼロのゲスなマネジメント」が、後に我がチームの部下たちに、誰も予想し得なかった恐るべき「覚醒」をもたらすことになるとは、この時の私はまだ知る由もなかったのである。

(後編へ続く)

※個人情報保護のため、事例は複数の実例を基に再構成しています。

次回予告
夢はニート。仕事嫌いの元フロントが「極限までサボる仕組み」を作ったら、なぜか成果が出ちゃった話。
第10話・後編:「簡単に上司を出したらいけない」という鉄則。服の袖を掴んで狌り付いてきた部下を戦場へ押し返した、恐怖のハッキング術


プロフィールはこち


いいなと思ったら応援しよう!

元マンション管理担当のニート戦略家 よろしければ応援お願いします! いただいたチップはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます!