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凡人は今日も躓く 15 古い片岡義男の夏の小説に躓く 2026/08/06(木)
夏の小説というと、
夏を舞台にしているという捉え方もあるけど
人生の夏である青春と重なると、よりエモい。
夏の青春小説は山ほどある。
大きな分岐点を作ったのは片岡義男だと思う。
アメリカ西海岸の匂いを詰め込んだスタイリッシュな小説は
1970年代終盤に次から次へとヒットした。
気どっていて空虚、という人もいた。
若き日の片岡義男は、同世代向けの作品を
書いても書いても売れずに編集者からも最後通牒をつきつけられる。
周囲を見渡せば若い世代は、堅苦しい小説ではなく
漫画週刊誌を貪るようにように読んでいる。
ならば、そんなものを書いてやれ、と書いた小説が当たった。
そして書くものはとんでもなく売れ続けて行った。
本人は複雑だったのではないか?
片岡作品の大ブームが終わったあとに出版されたのが
「海をよびもどす」(光文社/1989)だ。

舞台は昭和30年代、
ひとつのクラスに女子学生がひとりずつしかいなかったような時代の
大学を舞台にした夏の青春小説だ。
片岡義男が、売るためではなく自分の書きたかった青春小説を
時代を遡って書いたように思える。
ATG映画のような、あの時代のざらついた雰囲気が漂う。
時代と街と人の空気感を鮮やかに描写して
One & Onlyの短編の名手は、ずっとうまい。
