わたしいきてる〜第7話 ぴーちゃん容態急変で脳ヘルニアを起こす
ぴーちゃんの手術が終わったころにはもう夜が明けようとしていた。
手術が終わった後、脳外科の先生からの説明があった。
『脳圧が上がっていたため、頭を開けたら、ボンっと脳が飛び出てきまして…右脳を切除しました。
脳動静脈奇形であろう部位を拾ったので、おそらく脳動静脈奇形の破裂による出血ではないかと思われます。でも、出血が多かったために、その原因の部位まではたどり着けませんでした。』
ぴーちゃんは、手術後、ICUで管理され、人工呼吸器に繋がれているようだった。
私と母は、病院内の緊急で泊まれる場所で、
話をしながらいつしか眠ってしまっていた。
私達が起きた時にはもう昼を過ぎていた。
母は、
「大丈夫そうだからとりあえず一旦家に帰るね」
と言って、帰宅した。
私はコーヒーをやたらと飲み、仕事上連絡が必要な人に連絡をした。
心配してコメントをくださったブログの読者さんへ返信をしたり、ブログを更新して、あっという間に1日が過ぎた気がした。
『寝て起きたらまた朝になるな…』
そう思いながら、ICUにいるぴーちゃんを案じながらも夢を見ているようで、物語の中にいるような入院2日目が終わった。
* * *
7月31日日曜日。朝が来た。時計を見るともうすぐ午前9時。
何事もなく入院3日目になった。
『このまま山を越えられれば…』
と期待した。
今日は日曜日だ。家族で仲良くしている私の幼馴染の親友にぴーちゃんのことを報告するためにメールしたところ、電話がかかってきた。
「ゆかちゃーーーん!!」
彼女は泣いている。今までの経緯と、手術は無事に終わって、今はICUにいるということを彼女に伝えていると、『コンコンコン』とドアをノックする音がした。返事をせずにいると、ドアが開いた。ドアを開けたのは男性の看護師だった。
「看護師さん来たからまたね。」
友人との電話を切り、その男性看護師に顔を向けた。
「ちょっといいですか。先生からお話があるということなので、相談室に来てください。」
その男性看護師は私に伝え、ドアを閉めた。
『なんだろう?』
と思いながら靴を履き、部屋の外へ出ると、すぐ近くの相談室へ案内された。
そこには、一昨日手術で執刀してくれた脳外科の先生が座っていた。
『昨日と全く違う表情、オーラ、なんだろう?』
と私が思っていると、先生が説明をし始めた。
「昨日は容態も落ち着いたのですが、今日の朝見ると、左の瞳孔も開いていまして…。
CTを撮ったところ、また脳浮腫があり、脳幹と左の脳も押しており、脳ヘルニアを起こしています。このままですと、命に関わり、大変危険な状態です。
正直、今からやっても間に合うかどうかという……
もう、今、手術に行く準備をしています。お母さんの同意のサインをお願いします。」
そう話す先生の顔色、声のトーン、話し方。同意書には急いで書かれたと思われる
『処置をしなければ命の危険』の文字。
すべてが、今のぴーちゃんの状況がどれだけ重篤で緊急で、急がなくてはいけないのか、わかった。
『先生!こんなところにいないで早く手術してください!!!!」
心の中でそう叫びながら、私は素早くサインをして、同意書を先生に渡した。
廊下で待っていると、ICUから数人の医師、看護師にベッドを押されながら ぴーちゃんが出てきた。切迫している空気感が漂っている。
何よりも、人工呼吸器につながれたぴーちゃんが聞いたことのない大きないびきをしていることに、私は、先生が話していた緊急性を体で理解した。
ぴーちゃんの体に似合わない、本当に深く大きな異様ないびきだった。
『これは本当にとんでもない状況なのかもしれない…』
そう思った瞬間、
私の口から言葉が飛び出した。
「ぴーちゃん!がんばって!!」
その言葉だけで精いっぱいだった。
【頑張って】という言葉が嫌いな私からこの言葉が出たことに自分でも驚いた。
『最後の最後まであきらめずに頑張ってほしい!
絶対に戻ってきてほしい!もう一度目を開けたぴーちゃんの元気な笑顔が見たい!!』
そんな思いを言葉に詰め込んだ。
あっという間にぴーちゃんが乗っていたストレッチャーは見えなくなった。
『私はぴーちゃんと医療を信じる。
大丈夫!!だって、ぴーちゃんだもの。
この子の人生はここで終わらない。
ここで終わるように生まれてきていない。』
不思議とそう強く思えた。
そして、そう思い込んで望む現実を引き寄せようという意識も働いた。
『私はぴーちゃんを信じる。』
ぴーちゃんを見送って、ICUの隣にある
手術待合室へ入った。
朝から手術室に入るまでバタバタで、私は母に連絡をしていなかったことに気づいた。
私は、母に電話をするためスマホを手に取り、時間を確認した。午前9時30分だった。
続く
