あの先生になりたくて#1就活
ーー15年後ーー
あれからどんな道を歩いても、私の心の中にはいつもあの先生がいた。
夢は一度も揺らがなかった。
私は、あの先生のようになる――。
↓15年前の原点になるお話しです。
#1 就職活動
いよいよ就職活動が始まった。
やっと、ここまできた。
私は迷わず、“あの先生”と過ごした、卒園した幼稚園に連絡をした。
見学をさせてもらえないか、と。
小学生の頃に再び引っ越していたので、今の自宅からは1時間ほどかかる。
それでも、不思議と「行かなくてはならない」と強く思った。
そして、
久しぶりに足を踏み入れた幼稚園。
出迎えてくださったのは、感じの良い高齢の園長先生だった。
「ここに戻って来てくれてありがとう」
そう言ってもらえた瞬間、胸の奥がじんわりと熱くなった。
昔の話をたくさん聞かせていただいた。
あの頃の先生たちのこと、園の子どもたちのこと、行事のこと――。
残念ながら、“あの先生”はすでに退職されていて、会うことはできなかった。
それでも、あの場所に立っているだけで、心の中がずっとあたたかかった。
ここには、優しくて、あたたかくて、楽しい思い出がぎゅっと詰まっている。
「ここで働きたい」
強く、そう思った。
この園で過ごした時間が、今の私をつくってくれた。
だから今度は、私も誰かの“あの先生”になれたら――
そんなふうに夢見ていた。
けれど。
園長先生は静かに教えてくれた。
この園の周りには、もうほとんど子どもがいなくなってしまったこと。
そして、近々、閉園する予定であること。
言葉を失った。
ここで働けたら、と夢見ていた場所。
こんなにも素敵な幼稚園が、なくなってしまうという現実。
正直、すごくショックだった。
時代の流れなのかもしれない。
仕方のないことなのかもしれない。
頭では分かっていても受け入れきれない気持ちもあった。
帰り道、我慢していた涙がポロポロとこぼれた。
ーーー
でも、
「場所」はなくなってしまっても、
そこで育った“あたたかさ”は、私の中にしっかりと残っている。
あの幼稚園がくれた時間を、
これから私も誰かに渡していくことができたらいいのにな、と思った。
家で少しだけ涙ぐみながら、
そんなことを考えた一日だった。
