アメリカから日本の遠隔読影システムは使えるのか②ニューヨークで5Gテザリングを再検証し、フィラデルフィアと比較してみた
前回、アメリカ・フィラデルフィアのホテルから、iPhoneの5GテザリングとVPNを使い、日本の遠隔読影システムを操作できるか検証しました。
その結果、Pingが約300msを超える環境でも、画像表示、シリーズ切替、過去画像比較、MPR表示、レポート画面表示などの主要操作を行うことができました。
ただ、1都市・1回だけの結果では、別の地域でも同じように使えるのかは分かりません。
そこで今回は、ニューヨークのホテルでも同様の測定を行い、フィラデルフィアの結果と比較しました。
結論から言うと、ニューヨークでも5Gテザリングによる主要操作はすべて「良好」と評価できました。
一方で、ホテルWi-Fiと5Gテザリングの通信品質は、フィラデルフィアとは大きく異なる結果となりました。
前回のフィラデルフィアでの検証はこちらです。

今回の検証目的
今回の目的は、フィラデルフィアで得られた結果が、ニューヨークでも再現するかを確認することです。
具体的には、次の項目を検証しました。
・ホテルWi-Fiの通信速度
・iPhoneの5Gテザリングの通信速度
・VPN接続
・遠隔読影システムへのログイン
・検査一覧表示
・初期画像表示
・シリーズ切替
・過去画像比較
・MPR表示
・レポート画面表示
・一定時間の連続操作
通信速度は、ホテルWi-Fiと5Gテザリングでそれぞれ3回測定しました。
遠隔読影システムの操作についても、可能な項目は最大3回測定しています。
測定方法
通信速度の測定には、macOS標準のnetworkQualityとpingを使用しました。
DownloadとUploadはAppleの測定サーバー、Pingとパケットロスは1.1.1.1を対象として測定しています。
そのため、この記事に記載しているPingは、日本の遠隔読影システムのサーバーに対する直接的なPingではありません。
ホテルWi-Fiと5Gテザリングにおける、一般的な通信遅延の参考値です。
遠隔読影システムの操作時間は、Claude Codeで作成した対話型計測ツールを使って記録しました。
ただし、Claude CodeがVPNや遠隔読影システムを自動操作したわけではありません。
VPN接続、ログイン、症例選択、画像表示、シリーズ切替、過去画像比較、MPR表示、レポート画面表示などは、すべて私自身が手動で行いました。
操作開始時と表示完了時にEnterキーを押し、その時刻差を計測ツールが算出しています。
したがって、測定値には、表示完了を確認してからEnterキーを押すまでの人の反応時間が含まれます。
システム内部の処理時間を直接測定した厳密なベンチマークではなく、実際に操作した際の待ち時間を確認する簡易的な実地測定です。
ニューヨークのホテルWi-Fi測定結果
ホテルWi-Fiは、3回ともパケットロス0%で、Pingも比較的安定していました。
1回目
Ping:25.8ms
Download:9.0Mbps
Upload:16.7Mbps
パケットロス:0%
2回目
Ping:19.5ms
Download:7.9Mbps
Upload:11.6Mbps
パケットロス:0%
3回目
Ping:18.6ms
Download:9.0Mbps
Upload:15.4Mbps
パケットロス:0%
3回の平均は次のとおりです。
Ping:約21.3ms
Download:約8.6Mbps
Upload:約14.6Mbps
Pingとパケットロスは良好でしたが、Downloadは8〜9Mbps程度にとどまりました。
フィラデルフィアのホテルWi-Fiより帯域が細かった
フィラデルフィアのホテルWi-Fiでは、Downloadの3回平均が約39.9Mbpsでした。
一方、ニューヨークでは約8.6Mbpsです。
ニューヨークのホテルWi-FiのDownloadは、フィラデルフィアの約1/5でした。
Pingは、フィラデルフィアが平均約19.0ms、ニューヨークが平均約21.3msで、ほぼ同水準です。
つまり、ニューヨークのホテルWi-Fiは、
・通信の応答性は比較的良好
・パケットロスも認めない
・ただし、一度に転送できるデータ量は少ない
という結果でした。
ホテルWi-Fiは、同じ都市であってもホテルの設備、客室の位置、時間帯、同時利用者数などによって大きく変わります。
今回の結果からも、ホテルWi-Fiの品質は滞在先ごとに確認する必要があると感じました。
ニューヨークの5Gテザリング測定結果
続いて、iPhoneの5Gテザリングへ切り替え、同じ方法で3回測定しました。
1回目
Ping:277.1ms
Download:351.0Mbps
Upload:29.0Mbps
パケットロス:0%
2回目
Ping:257.2ms
Download:370.5Mbps
Upload:25.0Mbps
パケットロス:0%
3回目
Ping:253.0ms
Download:224.3Mbps
Upload:24.9Mbps
パケットロス:0%
3回の平均は次のとおりです。
Ping:約262.4ms
Download:約315.3Mbps
Upload:約26.3Mbps
ホテルWi-Fiとは対照的に、5Gテザリングでは非常に大きなDownload速度が得られました。

ニューヨークの5Gはフィラデルフィアの約6.4倍
フィラデルフィアの5Gテザリングでは、Downloadの3回平均が約49.6Mbpsでした。
ニューヨークでは約315.3Mbpsです。
平均値で比較すると、ニューヨークの5Gテザリングは、フィラデルフィアの約6.4倍のDownload速度でした。
一方、Pingは次のとおりです。
フィラデルフィア:約338.9ms
ニューヨーク:約262.4ms
ニューヨークのほうがやや良好でしたが、両都市とも250msを超えています。
国際ローミング時の通信経路や、通信事業者側のネットワーク構成などが影響した可能性があります。
ただし、今回はtracerouteなどによる経路調査を行っていないため、遅延の原因は特定できません。
ニューヨークでは、
・帯域は5Gテザリングが圧倒的に大きい
・通信の応答性はホテルWi-Fiのほうが良好
という結果になりました。
遠隔読影システムを5Gテザリングで操作
通信速度測定後、5GテザリングとVPNを使い、日本の遠隔読影システムへ接続しました。
操作した項目は次のとおりです。
・VPN接続
・システム起動からログイン完了
・検査一覧表示
・症例選択から初期画像表示
・シリーズ切替
・過去画像比較
・MPR表示
・レポート画面表示
・ログアウト
・VPN切断
ニューヨークでは、可能な操作を最大3回測定し、平均値を算出しました。
一方、フィラデルフィアでは各操作を基本的に1回測定しています。
そのため、両都市の数値は測定回数が異なり、厳密に同じ条件で比較したものではありません。
ニューヨークでも全操作を「良好」と評価
ニューヨークでも、実施したすべての操作について、本人による主観評価は「良好」でした。
フィラデルフィアと比較すると、ニューヨークのほうが短かった代表的な項目は次のとおりです。
症例選択から初期画像表示
フィラデルフィア:14.0秒
ニューヨーク:平均8.5秒
レポート画面表示
フィラデルフィア:7.5秒
ニューヨーク:平均3.2秒
ニューヨークでは5GテザリングのDownload速度が大幅に高く、初期画像表示やレポート画面表示も短くなりました。
一方、MPR表示や過去画像比較など、ニューヨークのほうがやや時間を要した操作もありました。
このことから、単純にDownload速度が高ければ、すべての操作が同じ割合で速くなるわけではないことが分かります。
通信遅延、キャッシュ、先読み、セッション状態、サーバー側の処理なども、操作時間に影響すると考えられます。
607秒間の連続操作でも異常なし
ニューヨークでは、607秒間、約10分間の連続操作を行いました。
この間、画像のスクロール、シリーズ切替、過去画像比較、MPR表示などを継続しました。
操作者の目視上、次の異常は認めませんでした。
・通信切断
・VPN切断
・操作不能となるフリーズ
・明らかな表示停止
・システムエラー
フィラデルフィアでは104秒間、ニューヨークでは607秒間と観測時間が異なるため、安定性を単純に数値比較することはできません。
ただし、両都市とも、観測した範囲では異常事象を認めなかった点は共通しています。
もちろん、約10分間問題がなかったからといって、数時間にわたる実業務の安定性が保証されるわけではありません。
2都市の比較で分かったこと
今回、フィラデルフィアとニューヨークで同様の検証を行い、3つのことが分かりました。
1つ目は、ホテルWi-Fiの通信品質は施設による差が大きいということです。
フィラデルフィアでは平均約39.9Mbps、ニューヨークでは平均約8.6Mbpsと、Download速度に約5倍の差がありました。
2つ目は、5Gテザリングも場所によって大きく変動するということです。
ニューヨークでは平均約315.3Mbpsとなり、フィラデルフィアの約49.6Mbpsを大きく上回りました。
3つ目は、通信速度の数値だけでは実際の操作感を判断できないということです。
5Gテザリングは両都市ともPingが高い状態でしたが、遠隔読影システムの主要操作は行えました。
一方で、非常に大きなDownload速度が得られたニューヨークでも、初回だけ突出して時間がかかる操作や、フィラデルフィアより遅い操作がありました。
5Gテザリングは有力な選択肢になった
今回の実測範囲では、フィラデルフィアに続き、ニューヨークでも5Gテザリングを使って遠隔読影システムの主要操作を行うことができました。
少なくとも2都市で、短時間の基本操作を行えたことになります。
ホテルWi-Fiは施設による通信帯域の差が大きいため、海外滞在時にはスマートフォンの5Gテザリングを、主回線または予備回線の候補として用意することが合理的だと感じました。
ただし、5G表示が出ていても、必ず十分な速度や安定性が得られるとは限りません。
実際に業務で使用する前に、その場所で速度測定とシステムの操作確認を行うことが重要です。
今回の検証の限界
今回の比較には、次の制約があります。
・フィラデルフィアは各操作を主に1回測定
・ニューヨークは可能な操作を最大3回測定
・測定したホテル、時間帯、通信環境が異なる
・同一症例、同一のキャッシュ状態とは限らない
・ホテルWi-Fiでは遠隔読影システムの実操作を行っていない
・Pingは遠隔読影サーバーへの直接測定ではない
・通信経路は調査していない
・長時間の実業務を行ったものではない
したがって、今回の結果は、ニューヨークのほうが常にフィラデルフィアより快適であることを示すものではありません。
今回滞在した2つのホテルと、その時間帯における限定的な比較です。
海外からの利用には契約とセキュリティ確認が必要
技術的に接続できることと、海外から業務として利用してよいことは別の問題です。
実際に海外から遠隔読影を行う場合には、次の確認が必要です。
・所属先や契約先の情報セキュリティ規程
・海外アクセスに関する契約条件
・遠隔読影システム提供会社の利用条件
・VPNの利用条件
・患者情報を端末に保存しない設定
・端末の暗号化、紛失、盗難対策
・第三者による画面の覗き見防止
・公共スペースで作業しない運用
・通信障害時の対応方法
今回の検証結果は、特定の施設や契約において、海外からの業務利用が認められていることを示すものではありません。
まとめ
ニューヨークのホテルで、ホテルWi-FiとiPhoneの5Gテザリングをそれぞれ3回測定しました。
ホテルWi-Fiは、Pingとパケットロスは良好でしたが、Downloadは平均約8.6Mbpsで、フィラデルフィアの約1/5でした。
一方、5GテザリングはDownloadが平均約315.3Mbpsとなり、フィラデルフィアの約6.4倍でした。
5GテザリングではPingが約262msと高かったものの、VPN接続、ログイン、画像表示、シリーズ切替、過去画像比較、MPR表示、レポート画面表示などを行うことができました。
本人による操作評価は、両都市とも全項目「良好」でした。
ニューヨークで行った607秒間の連続操作でも、目視上、通信切断、VPN切断、操作不能となるフリーズ、明らかな表示停止、システムエラーは認めませんでした。
今回の結果から、5Gテザリングは海外滞在時に遠隔読影システムを利用するための有力な通信手段になり得ると考えられました。
ただし、ホテルWi-Fiと5Gの品質は、都市名だけでは判断できません。
海外から利用する場合は、滞在先ごとに通信速度と実際のシステム操作を確認し、契約・セキュリティ規程に適合しているかを事前に確認する必要があります。
