見出し画像

アメリカから日本の遠隔読影システムは使えるのか。フィラデルフィアで5Gテザリング検証をしてみた

今回のアメリカ滞在では、海外滞在中の業務継続に関する検証を行いました。

検証したテーマは、

「アメリカのホテルから、日本で普段利用している遠隔読影システムに接続し、実用的に操作できるのか」

というものです。

海外から遠隔読影システムを利用する場合、単にインターネットへ接続できればよいわけではありません。

VPNへ正常に接続できるのか。

症例を選択してから画像が表示されるまで、どの程度時間がかかるのか。

シリーズ切替、過去画像比較、MPR表示、レポート画面の表示などを、実用上許容できる範囲で操作できるのか。

こうした点を、実際の海外滞在環境で確認しました。

今回は、アメリカ・フィラデルフィアのホテル客室から、MacとiPhoneの5Gテザリングを使用し、日本で普段利用している遠隔読影システムへの接続と操作性を検証しました。

結論から言うと、今回の場所、時間帯、端末、通信回線、検証症例という限定された条件では、5Gテザリングでも主要な操作を実用上許容できる範囲で行えました。

ただし、今回行ったのは短時間の接続・操作性検証です。

長時間の読影業務における安定性や、別の都市、ホテル、通信会社でも同じ結果になることを保証するものではありません。

フィラデルフィア滞在中のホテル客室における作業環境。検証にはMacとiPhoneを使用した。写真は一連の操作計測終了後に撮影したもの。
作業環境写真のMac画面に表示されていた現地の日付と時刻。MacのタイムゾーンはAmerica/New_Yorkに設定していた。

※一部を拡大した補足画像です。

今回の検証目的

今回の検証には、大きく2つの目的がありました。

1つ目は、海外滞在中でも、日本で普段利用している遠隔読影環境へ接続し、基本的な操作を行えるか確認することです。

2つ目は、ホテルWi-Fiが不安定だった場合に備え、スマートフォンの5Gテザリングを代替回線として利用できるか確認することです。

ホテルWi-Fiは、ホテルの設備、客室の位置、利用時間帯、同時利用者数などによって、速度や安定性が変化します。

そのため、ホテルWi-Fiだけに依存せず、スマートフォン回線を予備の通信手段として使用できるかを確認しておくことには、業務継続上の意味があります。

検証した日時と環境

検証は、2026年7月21日から22日にかけて、アメリカ東部夏時間のEDTで実施しました。

実施場所:
アメリカ・ペンシルベニア州フィラデルフィアのホテル客室

実施日時:
2026年7月21日23時57分ごろから、7月22日0時16分ごろまで

使用端末:
Mac、iPhone

MacのOS:
macOS 26.2

通信環境:
ホテルWi-Fi、iPhoneの5Gテザリング

接続方法:
VPN経由

対象:
日本で普段利用している遠隔読影システム

通信速度の測定は、7月21日23時57分から翌22日0時07分ごろまで行いました。

その後、5Gテザリング環境での遠隔読影システムの操作計測を、0時10分から0時16分ごろまで実施しました。

Macのシステムタイムゾーンは、検証時にAmerica/New_York、すなわちEDTに設定されていることを確認しています。

Claude Codeを利用して測定環境を作成

今回の検証では、Claude Codeを利用して、次の2種類の計測ツールを作成しました。

・通信速度を測定・記録するスクリプト
・遠隔読影システムの操作時間を記録する対話型スクリプト

ここで重要なのは、Claude Codeが遠隔読影システムを自動操作したわけではないという点です。

通信速度については、作成したスクリプトがmacOSの標準コマンドを実行して自動測定しました。

一方、VPN接続、システムの起動、ログイン、症例選択、画像表示、シリーズ切替、過去画像比較、MPR表示、レポート画面表示などは、すべて私自身が手動で操作しました。

Claude Codeで作成した対話型計測ツールは、私がEnterキーを押した時刻を記録し、開始から完了までの経過時間を算出するために使用しました。

通信速度の測定方法

通信速度の測定には、macOSに標準搭載されている次のコマンドを使用しました。

・networkQuality
・ping

新たな速度測定アプリや外部パッケージはインストールしていません。

DownloadとUploadは、networkQualityが利用するAppleの測定サーバーを対象として測定しました。

Pingとパケットロスは、1.1.1.1に対して10回通信して測定しました。

したがって、今回掲載しているPingは、遠隔読影システムの日本側サーバーに対する直接的なPingではありません。

ホテルWi-Fiと5Gテザリングにおける、一般的な通信遅延の参考値として記録したものです。

ホテルWi-Fiと5Gテザリングを各3回測定

ホテルWi-Fiと5Gテザリングについて、それぞれ3回ずつ通信速度を測定しました。

ホテルWi-Fiの測定結果

1回目
Ping:10.4ms
Download:26.3Mbps
Upload:37.6Mbps
パケットロス:0%

2回目
Ping:26.6ms
Download:46.1Mbps
Upload:46.6Mbps
パケットロス:0%

3回目
Ping:20.1ms
Download:47.2Mbps
Upload:50.8Mbps
パケットロス:0%

5Gテザリングの測定結果

1回目
Ping:364.6ms
Download:62.5Mbps
Upload:27.3Mbps
パケットロス:0%

2回目
Ping:357.6ms
Download:68.4Mbps
Upload:26.9Mbps
パケットロス:0%

3回目
Ping:294.4ms
Download:17.8Mbps
Upload:20.9Mbps
パケットロス:0%

ホテルWi-FiのDownloadは26.3〜47.2Mbps、Uploadは37.6〜50.8Mbpsでした。

5GテザリングのDownloadは17.8〜68.4Mbps、Uploadは20.9〜27.3Mbpsでした。

パケットロスは、両方とも全測定で0%でした。

少なくとも今回の速度測定上は、ホテルWi-Fiと5Gテザリングの両方で、遠隔読影システムの基本操作を検証する候補となる通信帯域が確認されました。

ただし、遠隔読影に必要となる通信速度は、画像枚数、シリーズ数、画像圧縮、先読み処理、サーバー構成、ビューアーの仕様などによって異なります。

今回の通信速度だけをもって、すべての遠隔読影システムに十分な通信環境であるとは断定できません。

5GテザリングではPingが約300msを超えた

今回、ホテルWi-Fiと5Gテザリングで最も大きな違いがあったのはPingでした。

ホテルWi-Fiでは10.4〜26.6msだったのに対し、5Gテザリングでは294.4〜364.6msでした。

5GテザリングではDownloadが60Mbpsを超えた測定もありましたが、通信の応答時間はホテルWi-Fiより明らかに長い結果でした。

国際ローミング時の通信経路や、通信事業者側のネットワーク構成が影響した可能性があります。

ただし、今回はtracerouteなどによる通信経路の調査を行っていません。

そのため、通信が日本を経由していた、あるいは特定の経路が遅延の原因だったとは断定できません。

ホテルWi-Fiでは遠隔読影システムを操作していない

今回の結果を理解するうえで重要なのが、ホテルWi-Fiと5Gテザリングの検証範囲の違いです。

ホテルWi-Fiでは、通信速度の測定だけを行いました。

遠隔読影システムへのVPN接続や画像操作は、ホテルWi-Fiでは行っていません。

また、今回接続したホテルWi-Fiは、Mac上ではオープンネットワークとして認識されていました。

一方、遠隔読影システムの実操作は、iPhoneの5Gテザリング環境で実施しました。

ホテルWi-FiのPingは5Gテザリングより良好でしたが、実際の画像表示やシリーズ切替を同じ条件で比較したわけではありません。

したがって、「ホテルWi-Fiのほうが遠隔読影システムを快適に操作できた」とは評価していません。

ホテルWi-Fiと5Gテザリングの直接的な操作性比較は、今回の未実施項目です。

5Gテザリングで遠隔読影システムへ接続

iPhoneの5Gテザリングへ接続した状態で、VPNを経由し、遠隔読影システムを起動しました。

操作時間は本人の手動操作で測定

遠隔読影システムの操作は、すべて私自身が手動で行いました。

各操作の開始時と、画面上で表示完了を確認した時点でEnterキーを押し、Claude Codeで作成した対話型スクリプトが、2回のEnterキー入力の時間差を計算しました。

測定の流れは次のとおりです。

1.操作開始時にEnterキーを押す
2.遠隔読影システムを手動で操作する
3.表示完了を目視で確認する
4.完了時にEnterキーを押す
5.スクリプトが経過時間を算出する

このため、記録された操作時間には、表示完了を目視確認してからEnterキーを押すまでの人の反応時間が含まれます。

システム内部の処理時間を直接取得した厳密なベンチマークではなく、実際の利用者が感じる待ち時間を確認するための簡易的な実地測定です。

患者情報や画面内容を取得しない設計

今回作成した対話型計測ツールは、遠隔読影システムの画面を自動取得するものではありません。

次の情報は、計測ツールの記録対象外としました。

・患者氏名
・患者ID
・生年月日
・施設名
・検査番号
・検査画像
・レポート内容
・ログインID
・パスワード
・その他の認証情報

計測ツールが記録したのは、操作項目、Enterキーを押した時刻、経過時間、本人による操作評価などです。

遠隔読影システムへのクリック、入力、症例選択、レポート確定などの自動操作も行っていません。

5Gテザリングでの実際の操作時間

5Gテザリング環境でVPNへ接続し、遠隔読影システムの主要操作を計測しました。

結果は次のとおりです。

VPN接続:10.5秒
システム起動からログイン完了:2.0秒
検査一覧表示:3.9秒
症例選択から初期画像表示:14.0秒
シリーズ切替:5.9秒
過去画像比較表示:1.4秒
MPR表示:0.9秒
レポート画面表示:7.5秒

最も時間がかかったのは、症例選択から初期画像が表示されるまでの14.0秒でした。

レポート画面の表示には7.5秒、シリーズ切替には5.9秒かかりました。
一方、過去画像比較は1.4秒、MPR表示は0.9秒でした。
今回の測定では、操作によって待ち時間に差がありました。

画像枚数、シリーズ構成、キャッシュ、先読み処理などが影響した可能性がありますが、今回の測定だけでは原因を特定できません。

また、各操作は1回ずつの簡易測定であり、複数回測定して平均値を算出したものではありません。

本人による操作評価は全項目「良好」

各操作後には、本人による操作性の評価を次の4段階で記録しました。

・良好
・許容
・不良
・未実施

今回の5Gテザリング環境では、実施した操作について、本人による主観評価はすべて「良好」でした。

ただし、この評価はシステムが自動的に算出した客観指標ではありません。

実際に操作した本人が、待ち時間、画面表示、操作の継続性などを総合して入力した評価です。

104秒間の連続操作では明らかな切断なし

当初は3分間の連続操作を予定していましたが、実際に記録された連続操作時間は104秒間でした。

そのため、本記事では「3分間」とせず、実測値である104秒間と記載しています。

104秒間の操作中、操作者の目視上は、次の問題を認めませんでした。

・通信切断
・VPN切断
・操作不能となるフリーズ
・明らかな表示停止
・システムエラー

なお、通信状態や画面描画を専用ツールで自動監視したものではありません。

今回の安定性評価は、実際に操作した際の目視所見と操作感に基づいています。

また、104秒間は短時間の確認です。

数時間に及ぶ読影業務や、多数の症例を連続して扱う場合の安定性を確認したものではありません。

Pingが高くても主要操作は行えた

今回の5Gテザリングでは、Pingが約294〜365msと高い状態でした。

それでも、今回の条件では、次の操作を完了できました。

・VPN接続
・システムへのログイン
・検査一覧表示
・初期画像表示
・シリーズ切替
・過去画像比較
・MPR表示
・レポート画面表示
・ログアウト
・VPN切断

初期画像表示やレポート画面表示では待ち時間がありましたが、少なくとも今回の短時間検証では、操作を継続できないほどの問題は生じませんでした。

通信速度やPingの数値だけでは、遠隔読影システムの実際の操作感を完全には判断できないことが分かります。

ビューアー側の画像圧縮、キャッシュ、先読み、サーバー構成なども、操作性に影響している可能性があります。

海外からの利用可能性を判断する場合には、速度測定だけでなく、実際のシステムで主要操作を試すことが重要です。

今回の結果から言えること

今回の検証から言えるのは、次の範囲です。

「フィラデルフィアのホテル客室において、今回使用したMac、iPhoneの5Gテザリング、VPN、遠隔読影システム、検証症例という条件では、主要操作を実用上許容できる範囲で行えた」

一方で、次のことまでは確認していません。

・ホテルWi-Fiでの遠隔読影システムの操作性
・ホテルWi-Fiと5Gテザリングの直接比較
・3分間以上の連続操作
・数時間に及ぶ業務中の安定性
・多数症例を連続して扱った場合の操作性
・別の都市やホテルでの再現性
・4G回線での操作性
・回線混雑時間帯による変化
・遠隔読影システムのサーバーに対する直接的なPing
・国際ローミングの具体的な通信経路

今回の結果は、海外からの遠隔読影業務を全面的に保証するものではなく、限定された条件で行った短時間の実地検証結果です。

海外から利用する場合は契約・規程の確認が必要

技術的に接続できることと、海外から業務として利用することが認められていることは別の問題です。

実際に海外から遠隔読影を行う場合には、次の点を確認する必要があります。

・所属先や契約先の情報セキュリティ規程
・海外からのアクセスに関する契約条件
・システム提供会社の利用条件
・VPNの利用条件
・患者情報を端末へ保存しない設定
・端末の暗号化
・紛失・盗難時の遠隔ロックや消去
・第三者による画面の覗き見防止
・公共スペースで作業しない運用
・利用するネットワークの安全性
・障害発生時の連絡体制

今回の検証結果は、特定の契約や施設において、海外からの業務利用が許可されていることを示すものではありません。

実際の業務利用にあたっては、関係先の規程と契約内容を事前に確認する必要があります。

今後追加で検証したいこと

今後、より正確に実用性を評価するためには、次の検証が必要です。

・安全性が確認されたホテル回線での実操作
・ホテル回線と5Gテザリングの同条件比較
・3分以上の連続操作
・30分以上の接続安定性確認
・複数症例での反復測定
・各操作を複数回行った平均値の算出
・画像枚数が多い症例での確認
・回線混雑時間帯での再測定
・4Gと5Gの比較
・別の都市、ホテル、通信会社での比較
・通信切断時の再接続手順の確認

海外滞在中の業務継続を考える場合には、ホテル回線とスマートフォン回線の両方を準備し、一方に問題が起きたときに切り替えられる状態にしておくことが重要です。

まとめ

アメリカ・フィラデルフィアのホテル客室から、iPhoneの5GテザリングとVPNを使用し、日本の遠隔読影システムへ接続しました。

通信速度は、ホテルWi-Fiと5Gテザリングでそれぞれ3回測定しました。

5GテザリングではPingが約294〜365msと高かったものの、今回の限定された条件では、次の操作を行うことができました。

・VPN接続
・システムへのログイン
・検査一覧表示
・初期画像表示
・シリーズ切替
・過去画像比較
・MPR表示
・レポート画面表示

操作はすべて本人が手動で行い、Claude Codeで作成した対話型計測ツールは、Enterキーを押した時刻と所要時間を記録するために使用しました。

Claude Codeが遠隔読影システムを自動操作したり、患者情報や画面内容を自動取得したりしたものではありません。

本人による操作評価は全項目「良好」で、104秒間の短時間連続操作では、目視上、通信切断や操作不能となる問題を認めませんでした。

ただし、今回の結果は短時間かつ限定された条件での検証です。

長時間の読影業務における安定性、ホテルWi-Fiでの実操作、ほかの地域や通信環境での再現性を確認したものではありません。

また、技術的に接続できることと、契約やセキュリティ規程上、海外からの利用が認められていることは別です。

海外から遠隔読影システムを利用する可能性がある場合には、通信速度を見るだけでなく、VPN接続時間、初期画像表示時間、シリーズ切替時間、過去画像比較、MPR表示、レポート画面表示、一定時間の接続安定性、契約やセキュリティ規程を事前に確認しておくことが重要です。

今回の検証結果は、今後の海外滞在時における業務継続計画、通信回線の選定、予備回線の準備、障害発生時の接続方法を検討するための基礎資料として活用していきます。

いいなと思ったら応援しよう!