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知るメモ|【ペットボトルの緑茶】|酸っぱくなったお茶は飲んで大丈夫?~飲める水が水道から出る国で、お茶にお金を出す価値観の変化の理由!

急須で淹れる。ポットで煮出す。
平成時代が始まる頃までは、水もですが、お茶は家で作るものでお金を出して買うものではなかったようです。
それが今や日本のペットボトル飲料のうち、ボトルウォーター、緑茶市場はそれぞれ5000億円規模にまで成長しています。
コンビニの棚を見れば、各社のお茶・水が所狭しと並んでいる。

しかし日本は、世界的に見ても水道水が安全に飲める数少ない国のひとつです。
それなのに、なぜ私たちはわざわざお金を払って水を買い、お茶を買うのか?
この「当たり前」になった行動の裏には、実は面白い歴史と価値観の変化が隠れている。
今回はそれを、ちょっとだけ掘り下げてみましょう。


「お茶はタダ」という常識を壊した一本

話は1985年(昭和60年)にさかのぼります。
伊藤園が世界で初めて缶入り緑茶「缶入り煎茶」を発売します。
お茶の自然な風味を守るため、抽出液を入れた(充填)後、缶を閉める(巻絞め)直前にヘッドスペースの酸素を取り除き、お茶の大敵の酸化を防ぐ「T-N(ティー・ナチュラル)ブロー技術」を開発し、世界で初めての緑茶飲料「缶入り煎茶」を発明したのです。

しかし、これがまったく売れなかった。
当時の日本には、根強い2つの抵抗感があったのです。
ひとつは「こんなものにお金を払うのはもったいない」という感覚。
もうひとつは「緑茶は急須で淹れるもの。飲料化したものは文化になじまない」という反発でした。
考えてみれば当然で、 急須でお茶を淹れることは、日本人にとって日常の「所作」のひとつだった。
それを缶に入れて売るというのは、文化そのものを商品化するような違和感があったのでしょう。

ところが1989年(平成元年)、伊藤園はブランド名を「お〜いお茶」に変更します。
この商品名には由来があり、1970年代、俳優の島田正吾さんが、「お~いお茶」とおっとりした口調で語りかけ、合計11 本のCM に出演し世に広まった名フレーズを起用したのです。
この一手が転機になった。
翌年の売上は前年比2倍以上、1985年比で6倍以上に急伸した。
この商品が「お茶を買う」という行動を、少しずつ日常に溶け込んでいくことになるのでした。


500mlペットボトルが「持ち歩き文化」を生んだ

もうひとつの転換点は、1996年です。
それまで、500mlサイズのペットボトルはゴミ問題への配慮から業界で販売自粛されていました。
それがリサイクルの取り組みが本格化したことで、ようやく解禁になる。
この小さな容量の変化が、文化を変える転機となります。

1990年に1.5Lのボトルタイプも発売されていますが、それは「家庭で飲むもの」でした。
でも500mlは「カバンに入れて持ち歩けるもの」だった。
缶と違いキャップがあるから途中で飲み止められる。
電車でも、会議中でも、運動中でも。
「いつでも、どこでも、お茶が飲める」という新しい生活スタイルが誕生した瞬間です。

その後の売上は、まさに「倍々ゲーム」として販売本数を伸ばしていくのでした。


「緑茶戦争」と健康志向の加速

2000年にキリンが「生茶」を発売すると、緑茶飲料市場は一気に競争時代へ突入します。
業界内では「第一次緑茶戦争」と呼ばれることもある。

2003年には花王が「ヘルシア緑茶」を投入。
これは業界初の特定保健用食品(トクホ)認定のお茶だった。

そして2004年、サントリーが京都の老舗茶舗とコラボした「伊右衛門」を発売。
これが大ヒットとなり「第二次緑茶戦争」が勃発。
2005年の市場規模は2000年の2倍にまで成長した。

この競争の根底にあったのは、健康志向の高まりです。
「カロリーゼロ」「脂肪を燃やす」「血糖値の上昇を抑える」
無糖のお茶は、砂糖の入った炭酸飲料に代わる「罪悪感のない飲み物」として選ばれるようになったのです。

かつては「タダの飲み物」だったものが、今や「健康への投資」として購入される時代になったといえるでしょう。


「お茶を急須で淹れる」文化の消滅と引き換えに

ペットボトルお茶が普及した背景のひとつが、「急須離れ」の進行です。
1975年頃から、急須を使って緑茶を淹れる市場は急激に縮小し始めた。
特にお茶は「買うもの」という認識が完全に定着した世代も増えた現在では、急須が存在しない家庭の方が多いと思います。
今の若い世代にとっては、ペットボトルのお茶こそが「本物のお茶の味」であり、急須で丁寧に淹れたお茶を知らずに育つ世代も増えているということでしょう。

「お茶を淹れる」という所作の中にあった、ひと息つく時間、温度を確かめる感覚、茶葉が開くのを待つ余白というものが、便利さと引き換えに失われてきた側面もあるかもしれません。


水道水への「不信感」という追い風

ペットボトルのお茶と並行して急成長したのが、ミネラルウォーターです。日本のミネラルウォーター市場は、1989年から2017年までの約30年間で30倍以上に拡大しました。

「日本の水道水は安全なのに、なぜ?」

その理由のひとつが、1980〜90年代にかけての水道水への漠然とした不信感です。
カルキ(塩素)の臭い、マンション貯水槽の衛生問題、各地での水質トラブルのニュース。
こうした出来事が積み重なり、「水道水をそのまま飲む」ことへの心理的ハードルが上がった。

さらに2000年を迎える際にコンピューターが誤作動し、社会的な大混乱(停電、通信障害など)が起きるのではないかと懸念、当時の小渕総理が「万一の場合への備えを」と呼びかけるCMが流れ、この呼びかけにより、当時の日本では水や非常食を買い求める動きが見られました。
これにより、備蓄水としてのミネラルウォーターが意識づけられることにもなったのです。
そして決定的だったのが、1995年の阪神淡路大震災2011年の東日本大震災
ライフラインが止まったとき、水の備蓄がいかに重要かが広く認識された。「お金を払って水を買う」ことは、今や防災の常識にもなっています。


豆知識|ペットボトルのお茶、放置すると酸っぱくなる理由

ここで、知っておくといい話をひとつ。
ペットボトルのお茶を開封して放置したら、酸っぱくなった」という経験はないでしょうか?
実はこれ、2つの原因が絡み合っています。

① ビタミンC(アスコルビン酸)の役割

ペットボトルのお茶の原材料表示を見ると、ほぼ必ず「ビタミンC」という表記があると思います。
これはなぜ入っているのかというと、主な目的は酸化防止剤としての役割です。
お茶に含まれるカテキンは、空気に触れると酸化して色が茶褐色に変わり、渋みが増す。
そのカテキンよりも先に酸素と反応して「身代わり」になってくれるのが、ビタミンC(アスコルビン酸)です。

ビタミンCですからわずかながら酸味を持つ物質です。
500mlのペットボトルに平均100〜150mgほど含まれており、それ自体がほんのりとした酸味感を生んでいる(実験では、この量でも水に明確な酸味が認識できるレベルになるという)。
つまり、「ペットボトルのお茶はもともと少し酸味がある」のが正常な状態。
急須で淹れたお茶と味が違うと感じるのは、このビタミンCの影響も大きい。


② 開封後の「菌の増殖」が酸っぱさを加速させる

さらに開封後、時間が経つと酸っぱさが増す。
これは「雑菌」の仕業です。

ペットボトルに直接口をつけて飲むと、唾液とともに大量の口腔内常在菌が混入する。
私たちの口の中には、数千億個もの細菌が住んでいます。
または口をつけなくても、開封した瞬間から空気中の微生物がボトル内に入り込む。
これらの菌はお茶に含まれるわずかな糖分やアミノ酸をエサにして爆発的に増殖し、その代謝物として「有機酸」を作り出します。
これが酸っぱさの正体です。

でも緑茶に含まれる渋み成分カテキンは、抗菌・殺菌・抗ウイルス作用があると思うでしょう。
たしかに急須で淹れた直後の熱いお茶には抗菌作用もありますが、時間とともにその効果は減少しますし、ペットボトルのお茶は加熱殺菌の過程で抗菌・殺菌成分(テアフラビンなど)が破壊されているため、その効果は薄いとされています。
緑茶は他のペットボトル飲料に含まれる保存料や酸味料なども入っていないので微生物が増えにくい条件になっておらず、特に常温(20〜30度以上)で放置すると菌が最も活発に活動する環境になります。
開栓から時間が経つほど、この過程は加速します。
味の変わったお茶を飲むことは、その数千万個単位まで大量に増殖した菌も補給していることになります。

開封後の目安まとめ

  • 直接口をつけた:常温(夏)・・約8時間以内

  • 直接口をつけた:冷蔵庫・・1〜2日以内

  • コップに注いで飲んだ:冷蔵庫・・2〜3日以内

メーカー(伊藤園)の公式見解でも、「直接口をつけた場合は8時間を目安に飲みきること」とされています。
開封後は「とにかく早めに飲む」が正解です。


おわりに

「飲める水が水道から出るのにお金を払って水を買う」これは確かに、一歩引いて考えると不思議な行動です。
でもそれは「愚かな消費」ではなく、人々が時代の変化の中で、便利さ・安心感・健康・持ち運びのしやすさといった「価値」に対してお金を払うようになったということを示している。
江戸時代に「水を売る商売」と言ったら笑われたかもしれない。
でも今や「天然水」「軟水・硬水の違い」「産地こだわり」でブランドが競い合う時代。
消費行動の変化は、社会の価値観の変化そのものを映す鏡でもあります。

次にコンビニでお茶や水を手に取るとき、「なぜ自分はこれを買っているのか?」と少し考えてみると、意外と面白い答えが見つかるかもしれないですよ!


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