🌸経営未来手帳・第218号「日経記事から。AIでコンサルはもう不要?」―生き残るのは「答えを出す人」ではなく、「人と組織を動かせる人」
🌸経営未来手帳・第218号「日経記事から。AIでコンサルはもう不要?」―生き残るのは「答えを出す人」ではなく、「人と組織を動かせる人」
(執筆:安村明史/ビジネス能力開発株式会社)
■はじめに
8月11日の日経を読んでいて、少し手が止まりました。
テーマは、AIによってコンサルティング業界がどう変わるのか。
デロイト トーマツの長川社長は、「何も対応しなければ滅びる」と危機感を示し、2030年ごろには市場がピークアウトする可能性にも触れています。
EYストラテジー・アンド・コンサルティングの近藤社長も、AIエージェントより人間のコンサルタントの方が優秀だと示せなければ、使ってもらえない時代になる、という趣旨の話をしています。
私は、これはかなり本質的な話だと思いました。
なぜなら、調査する。資料を集める。分析する。きれいな報告書にまとめる。
ここまでは、もうAIが相当やってくれます。
では、コンサルタントは何のためにいるのでしょうか。
■「知っている人」の価値は、確実に下がる
これまでコンサルタントには、
「詳しい」
「分析できる」
「情報をたくさん持っている」
という価値がありました。
しかし、この部分はAIが急速に追いついてきます。
私は、コンサルタントという仕事そのものがなくなるとは思いません。
ただし、知識を提供するだけのコンサルタントは、かなり厳しくなると思っています。
経営者からすると、100ページの立派な資料を渡されても、会社は変わりません。
問題は、その翌日です。
「では、誰が動くのか」
「社員は納得しているのか」
「部長は本当に変われるのか」
「半年後も続いているのか」
ここから先は、資料だけでは進みません。
■AI時代に残るのは「実行局面」に入れる人
日経記事でも、これからは実行局面の課題解決力、人間力、人材育成が重要になると指摘されていました。
私は、この「実行局面」という言葉に注目しました。
経営には、正しい答えが分かっているのに、できないことが山ほどあります。
会議を変えたい。
部門間の壁をなくしたい。
次の幹部を育てたい。
社員にもっと主体的になってほしい。
経営者なら、一度や二度は考えたことがあるでしょう。
ところが、正論を伝えただけでは人は動きません。
人には感情があります。
過去の人間関係があります。
プライドもあります。
「あの人の言うことだけは聞きたくない」ということさえあります。
AIがどれほど賢くなっても、現場には、この面倒くささが残ります。
私は、むしろここに人間のコンサルタントの仕事が残ると見ています。
■経営者が本当に欲しいのは「幹部が育つこと」ではないか
私が経営者の立場なら、外部のコンサルタントが毎回答えを持ってくるより、自社の幹部が、自分たちで考え、判断し、問題を解決できるようにしてほしい。
こちらを望みます。
コンサルタントがいなくなった途端、元に戻る。
これでは、本当の意味で会社が強くなったとは言えません。
幹部が育つためには、研修を一度行えばよいわけでもありません。
心理的安全性がある。
率直な対話ができる。
未来ビジョンが共有されている。
小さく挑戦して、失敗から学べる。
そして、経営者自身も変わっていく。
こうした「人が育つ環境」をつくる必要があります。
だから私は、これからのコンサルタントには、単なる助言者ではなく、
経営者と一緒に歩き、組織の中に変化が根づくまで伴走する力
が求められると思っています。
■「懐に入り込む人間力」は、簡単には育たない
日経記事には、これからのコンサルタントには、経営層の悩みを感じ取り、「懐に入り込む人間力」が必要になるという趣旨の指摘もありました。
ここが一番難しい。
傾聴研修を受ければ、翌日から相手の話を聴けるわけではありません。
質問の仕方を習えば、経営者が本音を話してくれるわけでもありません。
人は、
「この人なら話してもよい」
と思った時に、初めて本当のことを話します。
ここには技法だけでは届かない領域があります。
経験、人間理解、失敗、信頼。
場合によっては、何年もかかります。
ですから私は、AI時代になればなるほど、コンサルタントの「人間としての成熟」が問われる時代になると思っています。
■編集後記
私自身、長く経営や組織の支援に関わってきましたが、振り返ると、経営者から相談される内容は、最初に聞いた「問題」と違うことがよくあります。
売上の相談だと思っていたら、実は後継者の話だった。
組織改革の相談だと思っていたら、実は社長と部長の関係だった。
人材育成の相談だと思っていたら、最後は「私は、この会社をどうしたいのでしょうね」という話になった。
経営には、数字の奥に人があります。
AIが進化するほど、この部分が逆に浮き彫りになるのかもしれません。
■今日の問いかけ
もしAIが、調査も分析も資料作成もやってくれるとしたら、
あなたはコンサルタントに、何をしてほしいでしょうか。
そして、あなたの会社に本当に必要なのは「答え」でしょうか。
それとも、答えを自分たちでつくれる「人と組織」でしょうか。
■ネコのつぶやき
「AIは資料を作ってくれるけど、社長をどこまで知ってくれるのかニャ」
■この記事について
今回は、2026年8月11日の日経記事をきっかけに、AI時代にコンサルタントへ求められる役割を、私なりの視点から考えてみました。
🌸経営未来手帳「今、経営者が読むべき3選」
https://note.com/quiet_gnu5848/n/n59ba4650e7d0
🌸経営未来手帳の編集長が選んだ40選はこちら
─経営者が未来を読むための“構造地図”
https://note.com/quiet_gnu5848/n/n3596a857d755
■感想をぜひお寄せください
👉 yasumura@biz-noukai.com まで。
必ずお返事いたします。
■次回8月14日予告
「なぜ、会話ではなく対話が重要なのか」
―松下翁・ソクラテスに学ぶ対話術
■安村 明史
🌸経営未来手帳
「疲れた経営者が、少し言葉を預けられる場所として。
――#経営者の深夜食堂」
■付録

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