超光速ワープドライブ航法は可能か?
米国政府がUFO(未確認飛行物体)に関する過去情報の開示を行ったため、多くの人々が地球外生命体や超光速空間航法に関心を寄せているようです。
PRESIDENTIAL UNSEALING FOR UAP ENCOUNTERS.
— The White House (@WhiteHouse) May 8, 2026
Per President Trump's directive, the @DeptofWar has declassified & released unresolved UAP records. This is an unprecedented level of transparency, no other admin has gone this far.
Files now live on https://t.co/kWE5tvdY9H —… pic.twitter.com/2WDKbBj2gE
Where are the aliens? This is one of the most fundamental questions. pic.twitter.com/TITxKLmTIl
— Elon Musk (@elonmusk) May 19, 2026
物理学の文脈で特に注目を浴びているのが、「ワープドライブ航法」です。ミゲル・アルクビエレという物理学者が1994年に出版した論文が有名です。
彼はアインシュタインの一般相対性理論に基づいて、この航法を提案しました。時空の幾何的形状そのものを加工して、宇宙船を局所的には静止したまま遠方へ超光速で飛ばすアイデアです。宇宙船前方の空間を縮めて、後方の空間を膨張させることで、宇宙船が入っているその時空そのものを移動させるという内容でした。
一般相対性理論では「物体が局所的に光速を超えること」は禁止されますが、アインシュタイン方程式には、たとえば空間の異なる2地点を繋ぐ短いホースのような「ワームホール」解があることが知られています。このワームホールを航路の迂回として使えば、宇宙船は遠方の天体に極めて短い時間で到達できます。ワープドライブも、通過可能なワームホールと同様に、アインシュタイン方程式の解です。それが実際に実現すれば、超光速航法ができると考えられます。しかし、これらは大きな問題を抱えており、多くの物理学者はその存在を信じていません。宇宙船が通れるワームホールや、時空を歪めて超光速運動を実現するワープドライブには、絶対値が非常に大きな「負のエネルギー密度」が要求されるからです。今回はそれを説明しておきます。
アルクビエレは、アインシュタイン方程式の解として、下記の形の時空計量を見つけました。

ここでは宇宙船が飛んでいる方向をx軸方向とし、時刻tにおける宇宙船のx座標を
$$
x_s(t)
$$
としています。そして、その宇宙船の速度を
$$
v_s (t)
$$
です。そして、時空点(x,y,z)の宇宙船からの距離は以下で与えられています

また時空計量に含まれている関数fは、例えば下記のようになっています。

このfの形の特徴は、宇宙船の近傍ではほぼ1であること、そして宇宙船から離れると速やかに0に近づくことです。
興味深いことに、宇宙船の速度を光速度より速くしても、この時空計量はアインシュタイン方程式の解ではあります。

これが超光速ワープ航法に対応します。ただ問題は、この超光速を実現する場合、アインシュタイン方程式右辺に出てくる物質のエネルギー密度がどこでも負になることです。

ところが、宇宙船を作るときに我々が使える古典的な物質では、エネルギー密度は負になれません。これはワープドライブ航法の大きな欠点です。ただし量子力学を考えると、確かにある程度の負エネルギー密度をもつ励起自体は存在可能です。たとえばブラックホールから出るホーキング輻射の機構や量子エネルギーテレポーテーション(QET)でも、その存在は実際に知られています。
ではワープドライブも、この量子的な負エネルギー密度を使えば、実現可能なのでしょうか?実は、そううまく行かないのです。
ホーキング輻射やQETに現れる負エネルギー密度は、それを実現する物質の量子状態が具体的に知られているのですが、ワープドライブの場合の負エネルギー密度は、対応する物理的な物質の量子状態は存在しないのです。これはワームホールでも同様です。我々が知らない未知の物質が、このような負エネルギー密度を与える可能性は残されていますが、そのような物質が見つかる兆候は、実験や観測に全く出ていません。
うまくいっていない理由は、量子力学における負エネルギー密度が、それと組みになる正エネルギー密度の励起の存在を同時に要求するからです。ホーキング輻射の場合は、ブラックホールの質量エネルギーやホーキング輻射のエネルギーなどが、その正エネルギーを保証します。QETでも、測定によって対象に不可避に注入される正エネルギーが、負エネルギー密度の励起を許しています。ところがワープドライブのエネルギー密度は、至るところで負なのです。アルクビエレの解には、必要な正エネルギーがどこにも存在していないのです。これは超光速を実現するのに、とても深刻な欠点です。
アルクビエレの論文の後、多くの研究者たちは、エネルギー密度が負にならないワープドライブ用の時空解を探していましたが、それは見つかっていません。下記の論文では、エネルギー密度が負にならないまま「亜光速」を実現するアルクビエレ型の解が報告されていますが、その航法での宇宙船の速度は、決して光速度を超えないことが、同じ論文で示されています。
まとめると、超光速を実現できそうな宇宙船を作る方法は、現時点の物理では確立していません。なので多くの物理学者は関心は示しても、ワープドライブの実現性に対しては懐疑的なままなのです。
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