やさしいコミュニケーション連載 ~第五章 ちゃんと話しているのに、伝わらないのはなぜ?
「ちゃんと言ったのに、どうして伝わっていないんだろう?」
そう感じたことはありませんか?
自分では説明したつもりだった。
相手も「分かりました」と言っていた。
それなのに、あとになって確認してみると、思っていたものと違っていた。
お願いしたことが、こちらの意図とずれていた。
気持ちを伝えたはずなのに、なぜか相手には責めているように受け取られていた。
そんな経験があると、
「どうして分かってくれないの?」
「ちゃんと聞いていなかったの?」
「自分の説明が下手なのかな」
と、もやもやしてしまうことがあります。
でも、伝わらない原因は、必ずしもどちらか一方が悪いからではありません。
会話では、自分の中では当たり前になっている前提が、相手には共有されていないことがあります。
同じ言葉を使っていても、思い浮かべているものが違うこともあります。
相手の状況や気持ちによって、言葉の受け取り方が変わることもあります。
つまり、
「話したこと」と「伝わったこと」は、同じとは限らない
のです。
こんなこと、ありませんか?
相手に、
「いい感じにまとめておいて」
とお願いしたら、自分が想像していたものと違う仕上がりになった。
「早めにお願いします」
と伝えたけれど、自分は今日中のつもりで、相手は今週中だと思っていた。
「ちょっと気をつけてね」
と言ったつもりが、相手には強く責められたように伝わっていた。
自分では丁寧に説明したつもりなのに、相手は何をすればいいのか分かっていなかった。
相手から、
「それ、初めて聞きました」
と言われて、
「前にも言ったのに」
と感じた。
または、自分が言われた側で、
「分かりました」と返事をしたけれど、実は細かいところまでは分かっていなかった。
こうしたすれ違いは、日常の中でよく起こります。
それは、誰かが悪いからというより、頭の中にあるイメージを、言葉だけで完全に共有するのが難しいからです。
4コマ漫画

帆乃香のひとこと
「ちゃんと言ったのに」と思うときって、少し悲しくなるよね。
でもね、
自分の中でははっきりしていることでも、相手の中ではまだ形になっていないことがあるんだ。
たとえば、
「早めに」
「ちゃんと」
「いい感じに」
「普通に」
「なるべく」
こういう言葉は便利だけれど、人によって受け取り方が変わりやすいんだよ。
だから、相手に伝えるときは、
「いつまでに」
「何を」
「どのくらい」
「何のために」
を少しだけ足してみよう。
全部を細かく説明しなくても大丈夫。
相手が迷いやすそうなところを一つだけ具体的にするだけでも、伝わり方は変わっていくよ。
大丈夫。一歩ずつで変われるよ♪
「話す」と「伝わる」は違う
自分が言葉にした時点で、
「もう伝えた」
と思うことがあります。
けれど、本当に大切なのは、その言葉が相手にどう届いたかです。
たとえば、
「この仕事、早めにお願いします」
と言ったとします。
自分の中では、
「今日の夕方まで」
という意味だったかもしれません。
でも相手は、
「明日までにやればいいのかな」
と思っているかもしれません。
また、別の相手なら、
「今すぐ取りかからなければいけない」
と受け取るかもしれません。
同じ「早めに」という言葉でも、人によって思い浮かべる時間が違うのです。
これは、仕事だけではありません。
友人との約束でも、家族との会話でも、同じことが起こります。
「少し手伝って」
「ちゃんとして」
「気をつけて」
「普通でいいよ」
こうした言葉は、自分の中では意味がはっきりしていても、相手にはあいまいに届くことがあります。
相手は、自分と同じ前提を持っていない
伝わらない理由の一つは、前提の違いです。
自分は、その話の背景を知っています。
これまでの流れも、目的も、細かい事情も、自分の頭の中には入っています。
けれど、相手は同じ情報を持っているとは限りません。
たとえば、自分の中では、
「この資料は、明日の会議で上司に説明するためのもの」
だと分かっているとします。
でも、それを相手に伝えていなければ、相手は、
「社内メモとして見やすければいいのかな」
と思うかもしれません。
目的が違えば、作るものも変わります。
伝えるときには、作業そのものだけでなく、
「何のためにそれをするのか」
を添えると、相手が判断しやすくなります。
言葉には、人それぞれのイメージがある
「ちゃんと」
「しっかり」
「きれいに」
「分かりやすく」
「早めに」
こうした言葉は、日常でよく使います。
けれど、便利な言葉ほど、人によって意味がずれやすいものです。
自分にとっての「ちゃんと」は、細かいところまで丁寧に確認することかもしれません。
相手にとっての「ちゃんと」は、最低限必要なことを終わらせることかもしれません。
どちらが間違っているというより、イメージしている基準が違うのです。
だから、すれ違いが起きたときに、
「普通は分かるでしょ」
と責めるより、
「自分が思っていた“ちゃんと”を、具体的に伝えていなかったかもしれない」
と振り返ることが役に立ちます。
感情があると、言葉の受け取り方は変わる
同じ言葉でも、相手の状態によって受け取り方は変わります。
たとえば、
「大丈夫?」
という一言があります。
やさしく心配して言ったつもりでも、相手が疲れていたり、自信をなくしていたりすると、
「ちゃんとできていないと思われているのかな」
と感じることがあります。
「もう少し確認しておいてね」
という言葉も、落ち着いているときなら普通に受け取れるかもしれません。
でも、相手がすでに失敗を気にしているときは、
「また責められた」
と感じることもあります。
言葉は、辞書の意味だけで届くわけではありません。
そのときの表情、声の調子、関係性、相手の心の状態によって、届き方が変わります。
だからこそ、伝えるときには、
「相手は今、どんな状態かな」
と少しだけ考えてみることも大切です。
伝わらないとき、すぐに責めなくていい
相手に伝わっていなかったとき、
「なんで分からないの?」
と言いたくなることがあります。
もちろん、何度も同じことを説明しなければならなかったり、大切なことを聞き流されたりすれば、疲れてしまいます。
その気持ちは自然なものです。
でも、最初から相手を責める言い方になると、相手は内容を理解する前に、防御の姿勢になってしまうことがあります。
「聞いてなかったの?」
「前にも言ったよね?」
「普通、分かるでしょ?」
こう言われると、相手は、
「怒られている」
「責められている」
「自分がダメだと言われている」
と感じやすくなります。
すると、話し合いではなく、言い訳や反発になってしまうことがあります。
伝わらなかったときは、まず、
「どこでずれたんだろう?」
と確認する姿勢を持つことが大切です。
ここから先について
ここまでは、「ちゃんと話したつもりなのに伝わらない」理由について見てきました。
ここからは、相手に届きやすくするための具体的な工夫を紹介します。
あいまいな言葉を具体的にする方法
相手の理解を確認する聞き方
責めずに伝え直す言い方
仕事・家族・友人関係で使える会話例
今日からできる実践ミッション
伝える力は、難しい話術ではありません。
自分の中にあるイメージを、相手が受け取りやすい形に少し整えること。
その練習を、ここから一緒にしていきましょう。
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