読書感想文/『琥珀の夏』辻村深月/〝理想〟に溺れる弱い大人・翻弄される子どもと、その末路
教団のリアリティ、子どもたちの微妙な自意識や人間関係、大人のエゴなどが緻密に書き込まれていて、物語に引き込まれました。
より良い生き方を自ら模索する、意識高い系の大人たちが作り上げた教団。共同生活は親子分離が前提で、子どもたちは寂しくても簡単に本音は言えません。選択肢は無く、与えられた環境で生きるしかないからです。幼いほど、初めから疑問に思わないかもしれないし、思っても望んではいけないものと我慢するのです。切ない。
本来、幼い子どもには、特定の大人が24時間365日、オーダーメイドの愛情を注ぐべきです。満たされないと自尊感情が育たないし、幸せになりにくい思考回路になってしまう気がします。
だから、作中で亡くなってしまう性格の悪い?女の子も可哀想です。彼女は大人たちが(良かれと思って)決めたいびつな環境に嫌悪感を覚えながら、帰るべき家庭が無かったのですから。
立派に見えた「先生」たちの汚い部分が露呈する衝撃の展開。しかも、その後も苦しみながら成長した子どもたちに対し、誠実に向き合って責任をとる(当時の)大人は一人もいません。
教団の大人たちは皆、教育者として以前に、人間としてあまりにも不完全です。
不完全だからこそ、理想にしがみつくのかしら。
その理想も、自らの胆力だけで守り続けることは困難で、そういう不完全な大人のエゴに、子どもは簡単に翻弄されてしまうのですね。
物語の最終盤は、希望を感じさせるラストになっていたのが救いでした。

