透明の彼女
こんな記事を見つけました😊
とらのすけ さん
【メモ】誰か……誰か【トライアル①】
十二月の校舎は鉄の箱のようだ。雨風を防ぐ代わりに、それ自体が保冷材のように冷気を帯びている。足元から、壁の芯から、僕の真ん中の熱まで奪おうと手を伸ばしてくる。無数の冷たい手から逃れるため、僕はできるだけ廊下の中心を歩いて部室へ向かう。
この季節、入口の扉が閉まっていると身構えてしまう。部室の金属製のドアノブは、人の手による干渉を火花と破裂音で拒む。誰か来やしないかと振り返るが、灰色に染まった通路には猫さえ見当たらない。
意を決して火花を喰らおうとしていたときだった。
「川島くん」
背中から、鈴森春子の声がした。
ーーが、冷たい廊下には、僕と、僕を呼ぶ声しか存在していない。
首を傾げる僕に、その声は続ける。
「あ、ごめん。私、朝起きたら透明になってて」
その声は、冬の廊下の空気みたいにふわっとしていた。
「困ってないのか?」
「ちょっとだけ困ってるけど……」
「けど?」
「他人の目が気にならなくなったかも😊」
「そりゃそうだろ、見えないし」
「うん。でも気配はちゃんと感じてくれるから。私は今、空気で存在してる」
見えないまま、彼女はたぶん肩をすくめた。
「今ちょっと、自由かも」
「……それ、出席扱いになるのかな」
「そこは…川島くんヨロシクね♪」
⏬️音声でも。
⏬️雰囲気を曲にしてみました♪
