DREAM THEATER JAPAN TOUR 2026 REPORT ― マイク・ポートノイ復帰がもたらした変化
※3/11更新:開演前BGMの選曲についての考察を追記しました
※3/10更新:Apple Music に加え、Spotify と YouTube のプレイリストも作成しました
マイク・ポートノイが復帰してから2年以上、心待ちにしていた Dream Theater(以下、DT)の日本ツアーが終わってしまった―。
今回、筆者(Tate)は、2/25(水) 日本武道館、26(木) EX THEATER ROPPONGI、28(土) アイプラザ豊橋、3/3(火) 岡山芸術創造劇場 ハレノワと、4公演に参加したが、おそらく全公演に参加され、燃え尽きてしまっている方も多いことだろう。
ちなみに私のDTファン歴は『Falling Into Infinity』から。それまでもバンドの存在は知っていたが、初めてライブに足を運んだのが1998年だったと思う。
自分にとって「プログレ」との接点をもたらしてくれたのは、間違いなく彼らの存在だった。彼らがさまざまな楽曲をカバーし、バンド名に言及したからこそ、Yesも、Pink Floydも、聴いてみようと思えたのだ。
※企画・構成・編集・撮影:Tate
マイク・ポートノイ復帰という事実の大きさ
今回の来日公演は、マイク・ポートノイ復帰後初ということで、もちろん期待はしていた。しかし初日の武道館、幕が落ちて "Metropolis Pt. 1" が始まった瞬間、自分でも驚くほど感極まってしまった。
マイク・マンジーニ期も、変わらず彼らを追いかけてきたつもりだったが、やはり(それまで自分が慣れ親しんだ)ポートノイの存在感があまりにも大きかったのだ。
私が初めて海外で彼らのライブを観たのは、2006年、ニューヨークのRadio City Music Hallで行われたオーケストラ共演、後に『SCORE: 20th Anniversary World Tour Live with the Octavarium Orchestra』としてリリースされた、あの公演だ。それゆえ、当時の想い出がまるで走馬灯のように蘇り、"Octavarium" では涙が止まらなくなった。
立ち上がって叩く姿、ドラムスティックで客席を指す仕草、手拍子を煽る様子など…。昔に比べれば、だいぶ落ち着いたとはいえ、やはり彼があってのDTなのだと改めて実感した。

筆者がスマホ撮影したライブの様子
ポートノイ本領発揮!①日替わりセットリスト
そんな古参ファンの私にとって、ポートノイ復活を強く感じたことが2つある。ひとつは日替わりセットリスト、もうひとつは開演前・休憩中のBGMだ。
まずセットリストについて。
同じ都市での2日連続公演といえば、2日目には何かが起こるのがポートノイ時代のお約束だった。だからこそEX THEATER ROPPONGIで『Parasomnia』完全再現+"A Change of Seasons" がプレイされたとき、期待通りの展開に歓喜したファンは私だけではないだろう。
豊橋は武道館と同じセットリストだったが、同じことを2日連続で行うのはポートノイ的に許せないのか、大阪のアンコールでも "A Change of Seasons" が披露された。"The Shadow Man Incident"、"Octavarium" に続き、20分超えの大曲3連発!という、プログレ感溢れるセットリストとなったのは、皆さんもご存知の通りだ。
マンジーニ期は、セットリストが固定されるのが当たり前になっていたため、ポートノイが復帰しただけで、これほどの変化が生まれることに改めて驚いた。と同時に、それを支える裏方スタッフは相当大変なのでは、とも思った。
ステージ舞台裏の制作スタッフに迫る
ジョーダン・ルーデスも インタビュー で「過去最大級のスケールのショー」だと断言するほど、今回のステージセットの規模感は以前に比べて大きくなっていると思う。巨大なShadow Man人形 の導入、没入感のあるバックスクリーン映像とレーザーライトを組み合わせた演出など、海外公演での規模拡大が、そのまま反映されていたのではないか。
そこで制作陣についての記事をリサーチしてみたところ、(昨年、Tool来日公演後に調べたとき と同様に)海外の業界誌の記事がいくつかヒットしたので、少し紹介したいと思う。
照明・演出デザイン:スティーヴ・ベアード(Steve Baird)氏
「Lighting and Sound America」2025年7月号 によると、ステージの照明と演出デザインは、1995年からDTと仕事をしているスティーヴ・ベアード氏が担当している。

なお、ドラムライザーの前にスクリーンを設置するのはジョン・ペトルーシの提案だったそうだ。レイアウトは非常に柔軟で、あらゆる規模の会場に対応可能らしい。
注目すべきは、スティーヴ氏の手法だ。彼自身もドラマーであるため、照明や映像のトリガーはすべて手動で、その日のライブの進行に合わせてコントロールしている。記事の中で彼はこう語っている。
❝この仕事をするにはミュージシャンでなければならない。タイムコードを使って、1曲につき何時間もかけることも可能かもしれないが、私はライブで動かすのが好きだ。ただ、40周年記念ツアーは3時間のショウなので体力的には過酷だ❞
❝前のドラマー(マンジーニ)は、プレイバック(同期音源)を使っていたので、タイムコードで同期できた。しかしマイク・ポートノイはライブで叩く。だから私もオールドスクールに、すべてライブで操作している❞
コンソールには60曲がプログラムされており、5分から20分以上に及ぶ楽曲のダイナミクスに合わせて演出が変化するそうだ。これはスティーヴ氏が、DTの楽曲のあらゆる瞬間を熟知しているからこそ可能なことだ。
ドラムライザーについても興味深い話があった。ポートノイ復帰に伴い、巨大なライザーの追加が必要になったが、設営を容易にするため「半分に分割して、ドラムを載せたままトラックに積み込める」構造に再設計されたという。ドラムキットだけで43の入力が必要で、設営時間を短縮するために多くのマイクが内部マウント方式で固定されているそうだ。
さらに、岡山公演後、実際にスティーヴ氏本人に話を聞く機会を得た。
この前日、大阪のセットリストは、突然の変更のように見受けられたため、それについて尋ねると、セットリストはショウの前日にポートノイから連携されるとのこと。
前述の通り、彼はドラマーなので、かなり柔軟に対応できるとはいえ、さすがにマシンに入っていない曲は対応不可で、順番の組み換えであれば対応可能ということのようだ。
今回、私は客席後方からライブを観る公演が多かったため、そのレーザーライトの演出の美しさに惚れ惚れする瞬間が何度もあった。そこでスティーヴ氏に「私はこれまで彼らのショウを数十年も観てきましたが、今回がこれまでで最も美しいライティングだと思います」と告げたところ、本当に喜んでくれた。

スティーヴ・ベアード氏
ちなみに、ミキシング・エンジニアのインタビュー も見つけたのだが、かなりテクニカルな内容なので、ここでの引用は割愛する。興味がある方は、上記リンクから詳細をご覧になってみていただきたい。
映像:ウェイン・ジョイナー(Wayne Joyner)氏
バックスクリーンで大きな存在感を放っていた映像は、デジタルアーティストのウェイン・ジョイナー氏が手掛けたものだが、彼のインタビュー も見つけることができた。
元々、ProgPower USA の熱心なファンだった彼は、Tシャツデザインのコンテストに応募・採用されたことをきっかけに、今はフェスのビジュアル全般を担うまでになった。Dream Theaterの他にも、Devin Townsend、Myrath、Ayreon等、幅広いアーティストの映像を制作していることでも知られる。気になる方は、上記リンクから詳細をチェックしていただきたい。
ポートノイ本領発揮!②開演前・休憩中BGM
もうひとつの「ポートノイ復活」を感じた出来事が、開演前・休憩中のBGMだ。これはポートノイ本人の選曲であることを、上記スティーヴ氏にも確認済である。
開演前のBGMは連日共通だったが、休憩中のBGMとバックスクリーンの映像は、実は2ndセットの内容によって変わる。今回、唯一『Parasomnia』完全再現が行われたEX THEATER ROPPONGIの休憩中は、通常とは異なる映像と選曲だった。

下が『Parasomnia』完全再現の場合の
バックスクリーンと照明
各公演、会場で私がShazamした内容をもとにプレイリストを作ったので、ぜひチェックしてみて欲しい。
なお、開演前、Muse よりも前に流れていた曲は、筆者がShazamし損ねたので、もし、おわかりになる方がいれば教えていただきたい。
※開演前BGMについては、下記Classic Rock誌の記事も参照したが、実際に会場で聴いた曲順とは少し異なっていたため、今回は会場でShazamできた曲のみをプレイリスト化した。
Muse、Opeth は、以前からポートノイがお気に入りとして挙げていたので意外性は無い。Knower は、Pain of Salvationのダニエル・ギルデンロウも、2024年の来日時、我々のインタビュー でお気に入りに挙げていたアーティストだ。会場で彼らの曲が流れたとき、思わず「おぉっ!」と反応してしまった。
上記Classic Rock誌の記事によると、2024年に40周年記念ツアーが始まったときから Alice In Chainsの “Rooster” に続いてバーナード・ハーマンによる "Prelude" が流れてショウがスタートするのが定番となっていたようだ。
“Prelude” は、巨匠アルフレッド・ヒッチコック監督の名作サスペンス映画『サイコ』のテーマ曲で、改めて調べてみると、2007年の「Chaos in Motion」ワールドツアーからオープニング曲として使われていた。マンジーニ期には使われなくなり、今回、ポートノイ復帰と共に復活した形だ。
“Rooster” も、以前から開演前BGMとして使われていたらしいが、私は正直、記憶に残っていなかった。ただ、今回改めて PVを観て、全編にベトナム戦争の映像が使われていた ので調べてみると、ジェリー・カントレル(G., Vo.)が自身の父であるベトナム戦争帰還兵を題材にして書いた曲 だった。タイトルの ”Rooster” は父のニックネームで、歌詞は戦場を生き延びた兵士の視点で描かれているとのこと。
DTの ”A Broken Man” も、戦争体験による悪夢とPTSDに苦しむ帰還兵についての曲であることから、両者には興味深い共通点があるなと気づかされた。
こうした繋がりは意図されたものかどうかはわからないが、開演前の何気ない一曲にも、文脈が隠されているようで、ファンとしては考察のしがいがあるというものだ。
その後の4曲が、通常の40周年記念セットリストの場合に流れる曲で、"Audrey's Dance" はドラマ『ツイン・ピークス』のテーマ曲、"The Grand Duel Parte Prima" は映画『怒りのガンマン/銀山の大虐殺』のテーマ曲で、映画『キル・ビル Vol.1』でも使われた。"まだ眠れない / ベッツィーのテーマ" は映画『タクシー・ドライバー』の劇中曲、"La gazza ladra: 歌劇《どろぼうかささぎ》序曲” は映画『時計じかけのオレンジ』の劇中曲だ。
さらにその後の4曲が、『Parasomnia』完全再現の場合に流れる曲で、曲名にも入っている通り、いずれも(上から順に)ホラー映画の『ハロウィン』、『ドラキュラ』、『チャッキー』、『シャイニング』のテーマ曲となっている。
映画のサントラばかりなのは、さすが映画マニアとして知られるポートノイらしい。"A Change of Seasons" の前に流れた映画『いまを生きる』の一場面しかり、"A Broken Man" の映像が映画『地獄の黙示録』を彷彿とさせるものだったことも、偶然ではないだろう。
DTの次に何を聴くか問題
上記の通り、私は自分の好きなアーティストがお気に入りだと明言している曲やアーティストから遡って聴くのがとても好きで、そうした意味で、私にとってのポートノイはプログメタル師匠でもある。
Porcupine Tree も、Opeth も、彼がセレクトしたDTのライブ開演前BGMから知ったように記憶している。(その後Opethにハマった私は、ミカエル・オーカーフェルトの影響から、更なるプログレ沼へと足を踏み入れていくこととなる。)
私にとって、DT日本ツアーの醍醐味の一つは、数十年に渡るファン仲間との再会だったりもする。彼らが来日したときぐらいしか会わない友人たちが各地に散らばっていて、終演後は必ず彼らと振り返り会を行うのだ。
そんな仲間たちと話していて、気づいたことがある。今も、ほぼDTしか聴いていないという人たちが複数いたのだ。
それは間違いなく深い愛情の証でもある。ただ、正直に言うと、少しもったいないとも感じた。
今回の彼らのツアーは、40周年を迎えてもなお、「プログレッシヴ(進化的)」な彼らの生き様でもあったように思う。還暦前後のメンバーが(おそらく体力的な限界にも)挑む、約3時間の日替わりセットリスト、かつてない規模のステージ演出、そしてポートノイ復帰がもたらした化学反応―。
彼らは今もなお、日々、止まらずに動き続けているからこその産物ではないか。
だとすれば、聴く側の我々も、少しだけ外に耳を開いてみるのは、どうだろうか?
ポートノイとジョーダンのお気に入り
最後に、ポートノイとジョーダンが最近のインタビューやSNSで共通して名前を挙げていたアーティストを2つだけ紹介して終わりにしようと思う。
Q:いちばん最近観たプログレ・ライヴは?
「昨年のニューヨークで観たスティーヴン・ウィルソン。圧巻だった。素晴らしいサウンド、深みのあるビジュアル、そして精密さと感情表現の完璧なバランス。まさにライヴ・プロダクションの手本のようなステージだった」
Q:最近発見したプログレは?
「Leprous。彼らの(2024年の)アルバム『Melodies Of Atonement』には本当にやられた。感情、リズム、雰囲気が信じられないほど見事に融合している。ヘヴィで、美しく、僕の好きな深いサウンドの瞬間がぎっしり詰まっている」
もっと色々なバンドを発掘して聴いてみたい!という方は、ぜひ我々 Prog Project の YouTube、Apple Music、Spotify のプレイリストもチェックしてみていただきたい。
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