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「座り込みの君」            北大最初の女子学生・加藤セチ


「美人すぎて、科学者には向かない」
 と言われながら、
 著名な化学者として成功した、
 北大最初の女子学生・加藤セチ。

 内面は、どんな人だったのでしょうか?


 北大を卒業して、ずっと後年、
 セチが、還暦にもなろうとする頃の話です。

 セチは、著名な化学者になっており、
 女性ばかり、何人か弟子をとっていました。

 その一人は、漫画が好きで、
 研究室で読んでは、笑い転げていました。

 セチが、
「漫画のどこが面白いの?」
 と怪訝に尋ねると、

「だって、主人公が加藤先生みたいだから」
 と、答えたといいます。

 ちなみに、
 終戦後、10年も経ない頃ですから、
 この漫画は、十中八九「サザエさん」だと思います。

 
 さて、
「漫画のヒロイン」的な行動といえば、
 セチは、北大に入学する時にも、遺憾なく発揮しています。

 そもそも、
 セチが北大に入学を志願したのは、
 当時の北大総長が
「北大は、女子にも門戸を開きます」
 と言ったからです。

 女学校で生徒に教える難しさに悩み、
 より高いレベルで学びなおしたいセチは、
 喜び勇んで、北大に入学を志願します。

「大学は門戸を開く」 後輩の修学旅行を引率したセチは、北大総長の言葉を聞く


 ところが、北大はセチの願書を却下してしまいます。

「レベルが低い女子の学校を卒業した程度では、落伍が見えている」
 というのが、主な理由でした。

 しかし、セチは、
 東京女子高等師範学校(東京女高師。後の、お茶の水女子大学)
 の出身でした。

 女子にとっては、日本の最高学府です。


 これを聞いて、もしかしたら
「東大、京大のような帝国大学があるだろうに、なぜ最高学府?」
 と思われるかもしれません。

 逆に、
「お茶大ほどの学校を卒業しているなら、
 なぜ、あらためて北大に入学したいのか?」
 という疑問もあるでしょう。


 実は、当時は小学校より上は、
 男女で、教育システムが違っていました。

 男子は、高等学校を経て、大学に進学できましたが、
 女子には、高等学校にあたる高レベルの学校が、欠落していたのです。

 当然、帝国大学には、通常ルートでは入れません。

 だから、東京女高師が「女子の最高学府」なのです。

 ところが、
 東京女高師は、教員の養成学校です。

 そのため、特に、
 最新の知識を会得するために必要な
 英語やドイツ語、といった語学の教育においては、
 残念ながら、
 北大のような帝国大学はおろか、
 旧制高校(大学予科)にも及びませんでした。


 しかし、ここで悔し涙を流して、引き籠るようでは、
「漫画のヒロイン」のようとは、言われません。

「女子には、これ以上の学歴は無いのに、門前払いとは理不尽」
 と、セチは怒りました。

「総長は、調子のいい出まかせを言った。引き下がれない」
 とばかり、大学本部に押しかけました。

 そして、総長に直談判を求めて「座り込み」を始めたのです。



 後に、セチ本人が述懐したところによれば
 この抗議は「1か月」にも及んだ、とのこと。

 終には、北大が白旗をあげて、
 とうとう、セチは入学を勝ち取りました。


 ――と書けば、
 本当に「漫画のヒロイン」ですが、
 実際のところは、
 大人の事情が絡んで、もう少し事情は複雑でした。

 ともあれ、
相手が誰でも、
 理の通らないことは、
 忖度せずに直言する

 のは、生涯を通じた、セチの性分でした。


「座り込み事件」は、典型的な一例ですが、
 セチは、他にもたくさんの珍談を残しています。

「美人すぎて」も、さることながら、
 内面もなかなかにテイスティな女性です。


 今回は、ここまで。

 他のエピソードも、
 これから少しずつ紹介できれば、
 と思っています。

「北大最初の女子学生・加藤セチ」については、 
 第1回「美人すぎて、科学者には向かない」を、 
 下記リンクよりご参照いただければ、 
 より詳しくお知りになれます。

「美人すぎて、科学者には向かない」 北大最初の女子学生・加藤セチ |アスカリ

(タイトル画像は、AI彩色したものです。挿絵は、AIで作成しました)

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