外国語を話せること、外国で暮らせること
フランスに家族で移住してそろそろ1年。
僕ら夫婦はフランス語ができないまま渡仏したのですが、「フランス語話せないのによくフランスで暮らせますね」みたいなことをよく聞かれます。
・フランス語を話せること
・フランスで暮らせること
この2つは繋がりがあるようで、実はそこまで関連性がなかったりします。最近、そんなことをよく考えるようになりました。
フランス語を話すために必要なことは、
・単語を覚え
・文法を覚え
・会話に慣れ
ということを一定期間訓練として行うことですが、一方で暮らすために必要なことは、
・ビザの取得
・子どもの学校手続き
・住居の手続き
・現地でできる仕事の確保(ノマド含む)
と、いわば「ハード」を整備することで、これさえ整えることができれば、フランスでもどの国でも「暮らす」ことはできます。
実際、フランス移住をするにあたっては、フランス語力どうこうより、ビザ申請に必要な書類を揃えられるかとか、娘の現地校を決めるやりとりとか、そういう手続きを乗り越えることに力を使いました。
もちろん、フランス語ができたほうが、便利です。できたほうがいいに決まっています。
ただ、実際に暮らしてみて感じるのは、フランス語ができること以上に、
「フランスってこういうルールがあるよね」
「こういうコミュニケーションをするよね」
ということを理解し、そのルールに則って生きていくことのほうが大事なように感じています。
たとえば、フランスではカフェなどの店に入ったとき、多くの場合こちらから「ボンジュール」と挨拶します。
フランスは挨拶文化。相手の目を見て挨拶をして、自分という存在を相手に認識してもらい、こちらもまた相手の顔を覚える、ということをまずします。挨拶してからが始まりで、挨拶をしないで注文をするなどはとても失礼に当たります。
レストランではテーブルによって担当が分かれているので、自分の担当ではないギャルソン(ウエイター)に声をかけても、そこは僕の管轄じゃないからと素通りされたり、注文を取りにはきてくれません。
それは無視されているのでなく、そういう文化だから。
自分のテーブル担当に挨拶して、顔を覚えて、相手にも自分を覚えてもらう。これを、目と目を合わせた「ボンジュール」でやります。
これ、慣れるまで僕は全然できませんでした。
よく、注文をしたのに全然来てもらえない、というのは、上記のルールが守れていないことが多いのではないかと思います。
ボンジュール、はフランス語を知っている誰もが言える言葉ですが、それを「相手の目をみて、お互いを認識して言う」という文化に則って言える人は、特に日本人は限られている気がして。
僕らが暮らすエクサンプロヴァンスは観光地なので、けっこう英語を喋れる人が多いです。ボンジュールだけいえば、あとは英語でやりとりが進むことも多いです。ただそれが円滑に進んでいくのは、「ボンジュール」をフランス文化の文脈で言えるようになったからだと感じます。
加えて南仏の場合、そうした挨拶を、
・笑顔で
・なんだか楽しそうに
やります。これができるまで、また時間がかかりました。ほんと、みんな不思議なほど楽しそうに生きてる。
エクサンプロヴァンスという街は、フランスの中でも「理想郷」と呼ばれていて、中世から残る旧市街の街並みは美しく、学生街で治安も良く、プラタナスの木が街中に植えられ優しい木漏れ日をつくり、テラスで談笑している人が一日中絶えない、なんともいえない平和な空気に満ちています。
しかめっつらをして生きている人にこの1年出会ったことがなく、僕もそれにつられ、だいぶ笑顔で生きれるようになりました。
逆に、妻は初日から問題なくできていて、すぐに受け入れられていました。
マルシェで買い物に行くたびに、なにかおまけをもらって帰ってくる。ボンジュールしか言えないはずなのに視線やジェスチャーで色んな会話をして、「あそこにいたマルシェの人がね」とシェアしてくる。
これ、暮らしていくうちにわかったのですが、大阪人のノリと似ているとのこと。「ねえちゃん、元気!?」「これ、おまけしとくわ!」「おおきに、また来てなー!」みたいなノリが大阪とほぼ同じで、大阪人である妻のコミュニケーションスタイルは、フランス文化、特に南仏にバチっとハマったようでした。
そんなわけで、フランス語はさほど上達していないにも関わらず、不自由なく暮らすことができるようになりました。
・話せること
・暮らすこと
は、やはり別の力が必要なのだと思います。
冒頭に書いたような手続きのこともそうですが、たとえ僕が学生時代にフランス語を一生懸命勉強して、仏検の2-3級くらい取っていたとしても、いきなり南仏でコミュニケーションは取れなかったはずで。
人々を観察し、文化を知り、どうしたら馴染めるだろうと考え、ああでもないこうでもないと試行錯誤する時間があって、「暮らす」ができるようになるんだな、と思いました。
阪口ユウキ
*アイキャッチ写真は、郊外にあるサーカスに遊びにいったときの一枚。フランスのサーカスは、動物を使わず人間技と芸術性を重視した"舞台芸術"として位置づけられており、子供の習い事としても親しまれています。この日は子どもがサーカスを体験できたり、フードトラックや遊び場ができる日で、家族で遊びにでかけました。この、週末サーカスに遊びに行く、というのもフランスっぽくていいなと思います。
*日常の様子はInstagramに投稿していますhttps://www.instagram.com/powertraveler
