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映画がいっぱい(6)フランス革命とドレフュス事件

17.『嵐の三色旗』ーーー1935年製作のアメリカ映画
チャールズ・ディケンズ(1812~1870)原作の『二都物語』の映画化。フランス革命の最中、貴族の血を引く若者をイギリスに亡命させようとするお話で、私は原作を同じくする1957年製作のイギリス映画も観ている。どうしても比べてしまうけれど、主人公の酔いどれ弁護士シドニー・カートンは本作のロナルド・コールマンより後のダーク・ボガードの方が断然素晴らしい。ロマンティックだし、セリフ回しがいい。
本作は革命勃発の描き方が秀逸。とにかくエキストラが凄い。画面いっぱいで迫力がある。(ジャック・コンウェイ監督)
愛するルーシーの幸せのためにチャールズ・ダーネイの身代わりとなって断頭台へと赴くシドニー・カートンは、貴族に仕えていただけで捉えられたという娘の手をしっかりと握り、晴れ晴れとした顔で、罵倒の嵐の中を行く。
このラストシーンはどちらもかっこいい。哀しい終わり方だけど、勇気が湧いてくる。
因みに、憎々しいサン・テヴレモンド公爵を演じているベイジル・ラスボーンは1940年代にシャーロック・ホームズ役で人気の高かった俳優だ。

18.『ゾラの生涯』ーーー1937年製作のアメリカ映画
フランスの作家エミール・ゾラ(1840~1902)をポール・ムニが演じている。ウイリアム・ディターレ監督。
1862年、パリのオンボロ屋根裏部屋で、親友の画家セザンヌ(ウラジーミル・ソコロフ)と暮らしているゾラ。本は一冊も出してもらえず、出版社に勤めたりクビになったりの貧乏暮らしだが、作家になる夢は捨てない。
娼婦ナナと出会い、彼女の生い立ちを描いた『ナナ』が大ヒット。次々に作品を発表し、自然主義文学の騎手となる。富を手に入れ、世界的な名声を手にするが、セザンヌは故郷へと帰ってしまう。
1894年、ユダヤ系のフランス軍人アルフレッド・ドレフュス大尉(ジョセフ・シルドクラウト)が敵国ドイツのスパイとして告発される。彼は反逆者の濡れ衣を着せられ、絶海の孤島に投獄される。
最初は興味のなかったゾラだが、作家や友人達、ドレフュス夫人に懇願され、かつて政府の無策ぶりやブルジョアの悪徳を攻撃していた頃の自分を取り戻す。
「豊かさも幸福も手に入れた」と、現状に満足している人が、自分の不利益をものともせず、「ペンは剣よりも強し」と、軍部の不正を暴こうと立ち上がるなんて、なかなかできる事ではない。ゾラさん、すごい!
ドレフュスの弁護に立ったゾラは『我糾弾す』という軍部への告発文を新聞に掲載した。軍部から逮捕されそうになり、また生命の危険もあったため、ロンドンに亡命し、英国から真実と正義のために戦い続ける。
1899年、ドレフュスは大統領より恩赦を受ける(実際に無罪となったのは1906年)。
1902年、ストーブによる一酸化炭素中毒で、ゾラは執筆中に亡くなった。未だに軍部或いは反ユダヤ主義者による暗殺説が囁かれているそうだ。

この映画を観て、現代にも通じるところがあると思った。
「ドレフュスを殺せ、殺せ!」と叫んでいる人々が、後に「ドレフュス万歳!」と叫んでいる。大衆の愚かさを描いているシーン。大衆とは時流に乗るものなのだ。彼らを操ろうとする者に、いとも簡単に乗せられてしまう。

心に残るのはラストシーン。「もう遅いから寝てください。」と言う妻に対して、「もう少しなんだ。もうちょっと書いたら寝るから。」と言うゾラ。夫の身を案じ、ドアを閉めかねて、夫の背中を見つめている妻の愛情深い表情が素晴らしい。この時、書斎を離れていたら、ゾラさんは死なずに済んだのだ。妻の嘆きを察して胸が痛んだ。


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