忘れられない贈り物
彼は空港まで迎えにきてくれた。
社会人になって、遠距離恋愛になった頃のことだ。
私は毎月のように飛行機で彼に会いに行った。
直前まで休みが分からない会社に勤めていたから、チケットはいつも正規料金。往復七万円。しかも、一泊だけ。彼が会いに来てくれたことは一度もない。別れた時は、「金返してくれ」と思ったよね。笑。
今、思い返すと、若かったなぁ。
苦笑いよりもちょっと自分がかわいく感じるのが嬉しい。
盲目だったなぁ…会いたいという気持ちだけで、ずいぶんといろんなものを捧げたもんだ。
ちなみに、「女が会いに行く恋愛はたいていうまくいかない。」と、だいぶ大人になってから知った。(異論は認める)
いや違う、そういう話じゃないのよ。
話を戻そう。
忘れられない誕生日プレゼントがあるんだよね。
久しぶりに会って、助手席に座った私は、なんとなくダッシュボードを開けた。(当時の私は、車に乗ったらダッシュボードを開けるクセがあった。)
すると、四角い箱がひとつ。
誕生日にはまだ少し早いから、すっかり油断していたんだよ。
期待もしていなかったぶん、感情の跳ね方がすごかった。
「えっ!?なにこれ!?」 と勝手に声が漏れた。
今思えば、彼は少しだけ苦笑いだったかも。
「あ〜開けちゃったか〜」みたいな。
もしかしたら、別のタイミングで渡すつもりだったのかもしれない。
そんな彼のことなどお構いなしに、
「私が(ダッシュボード)開けると思って入れてたの?」
無邪気に言ったのを覚えている。
箱の中身は、Baby-Gだった。デジタルではなく、文字盤のタイプ。流行はもう落ち着いていた頃だったと思う。
――これ、私のこと考えて選んだんだなぁ。
悩んだり、迷ったり、「これ似合うかな」なんて想像したり。
「わたしを想って選んでくれた」というその気持ちがもう、うれしかった。
これまで受けたサプライズの中でいちばん。
そういえば、やなせたかしさんの「希望の歌」という詩集をくれたこともあった。その中にあった一言が印象的だった。
「絶望のとなりは希望」
いつも愚痴ばかりの私に、ただ静かに寄り添うみたいに、それをくれたんだなって感じていた。
せっかくなので、と思って探してみたけど、どこにしまったか忘れてしまった。でも、あれを受け取ったとき、胸がほわんとあったかくなった感じは覚えてる。
今思い出したけど、「なんで?」っていう、しょうもないプレゼントをくれたこともあった。
昇仙峡の鉱石とか、穴が空いてないのにピアスとか。
それでも、贈り物をいただくと、「ああ、わたしのことを想って選んでくれてたんだなぁ」ってうれしくなる。心があったかくなる。
誰かがわたしのことを思い浮かべ、候補を並べて、選んでくれる。
そのときの「想っていてくれた」という気持ちごと、
そっくり受け取ります。
あのときは、ありがとうね。
こたらさんと分析ママさんの企画に参加させていただきました。
素敵な企画をありがとうございます。
