福岡県議会の海外視察「3年間で2億6500万円」――「成果はある」で済ませるな
政経プラスの動画では、福岡県議会の海外視察について、2023年以降の3年間で23回、約2億6500万円の公費が使われたという集計を取り上げた。
問題は、議員が海外に行ったこと自体ではない。何を調べ、誰が参加し、いくら使い、その結果として県民に何が残ったのかを、議会が説明できるかである。
しかも、報道によって数字が違う。2026年6月のTNCニュースは、情報公開請求などをもとにした共産党側の調査として、2023年からの3年間で22回、3億円以上の税金が使われ、参加した県議は26人だったと報じている。回数も金額も一致していないからこそ、福岡県議会が集計の対象期間、海外視察と海外活動の区別、県議会単独の支出と県から要請された活動の扱いを示すべきだ。
数字が違うまま、「国際交流には意義がある」「成果は出ている」と言われても、県民は費用の全体像を判断できない。
「海外視察」と「海外活動」を分けるだけでは説明にならない
福岡県議会は公式Q&Aで、海外視察は海外での調査活動であり、海外活動には県主催イベントへの参加、相手政府などからの招聘、友好訪問なども含まれると説明している。目的が違うなら、費用の出どころと成果の測り方も違うはずだ。
ところが、県民が知りたいのは名称の整理だけではない。
誰が、どの立場で参加したのか。訪問先で誰と会い、何を確認したのか。議員の参加が不可欠だったのか。帰国後に県の制度や予算、外交・交流事業がどう変わったのか。そこまで追わなければ、視察と交流を分類しても、費用対効果の検証にはならない。
福岡県議会の活動報告書には、訪問先、期間、目的、報告書、経費の項目が掲載されている。公開に進んだこと自体は前進だ。しかし、報告書があることと、支出が妥当だと証明されることは別である。
「成果はある」という言葉で2億6500万円は正当化できない
2026年6月の議長記者会見で、藏内議長は、海外活動についてワンヘルスの国際連携や福岡県の取組の発信につながると説明した。また、過去の海外視察の成果を報告書などで県民に十分知らせてこなかったことを反省し、今後は成果を報告して意見を聞く考えも示している。
福岡県議会の公式ページでも、エジプト・カイロでの調査を踏まえ、国連ハビタットの世界都市フォーラムで、日田彦山線沿線地域の復興活動などを報告する機会につながったと説明している。これが成果の一例であることは否定しない。
ただし、一つの成果を示しただけで、3年間に行われたすべての訪問の費用が正当化されるわけではない。
必要なのは、訪問ごとの検証である。1回ごとに、目的、参加者、総額、1人あたりの費用、面会先、得られた合意、帰国後の実施状況、同じ目的をオンラインや国内訪問で達成できなかった理由を公開する。そこまで示して初めて、「成果はある」という説明が検証可能な情報になる。
旅費規程に合っているかと、県民の納得は別の問題だ
県議会の公式Q&Aでは、ホテルは移動の利便性や安全性を考慮し、手配業者が提示した候補から決めていること、航空機のビジネスクラスは国や県の旅費規程に準じていることが説明されている。規程に沿っているという説明は、最低限の確認として必要だ。
しかし、規程に違反していないことだけでは、公費支出への疑問は消えない。
同じ目的なら、より安い航空便や宿泊先はなかったのか。通訳や車両の手配は競争性のある契約になっているのか。議員本人の政治活動、議員団の交流、知事や県庁が要請した公務、議員が関係する職能団体の活動が、一つの出張に混ざっていないか。
公費を使うなら、誰の活動にいくら使ったのかを切り分ける必要がある。議長記者会見でも、政務、公務、獣医師としての用務を分けるべきではないかという質問が出ている。議長は経費の分担を事務局に指示していると説明したが、県民が確認できる形で内訳が示されなければ、説明は議会内部の処理で終わってしまう。
参加者が偏っているなら、議会の体制そのものが問われる
TNCニュースは、共産党福岡県委員会の調査として、3年間の海外視察に参加した県議の回数について、香原勝司県議が16回、松尾統章県議が13回、藏内勇夫議長が12回で上位だったと報じている。これは報道で紹介された調査結果であり、ただちに不正を意味するものではない。
それでも、特定の議員に参加が集中しているなら、議会は理由を説明すべきだ。政策分野の専門性、相手国との関係、議長や会派の役割など、合理的な理由があるのか。参加者を固定化することで、海外活動が一部の議員の経験や人脈に依存していないか。誰が派遣を決め、誰が成果を評価したのか。
海外視察を「議員の研修旅行」にしないためには、派遣の基準と評価の仕組みが要る。会派や議長の判断だけで決まるなら、県民の監視が届かない。
公開を始めたなら、都合の悪い数字も出すべきだ
福岡県議会は、海外調査活動の報告書について、これまで情報公開請求があれば開示してきたが、ホームページで公開するには個人情報や守秘情報の精査、関係先の了承が必要だったため時間を要したと説明している。
公開に時間がかかる事情は理解できる。しかし、過去の資料が見えにくかったことは、支出の検証が遅れた理由にはなっても、説明責任が不要になる理由にはならない。
「2億6500万円」なのか、「3億円以上」なのか。22回なのか、23回なのか。どの数字が正しいのかを県民が確認できるよう、議会は元となる一覧、年度別の支出、活動の区分、参加議員、経費の内訳を一括して公開すべきだ。
海外活動の意義を否定する必要はない。ワンヘルスや災害復興、友好交流に国際連携が必要な場面はある。
だからこそ、意義があると言う側が、費用と成果を具体的に示さなければならない。「県民の健康のため」「国際交流のため」という大きな言葉を掲げるだけでは、個々の支出の妥当性は説明できない。
福岡県議会に問われているのは、海外に行くなという単純な話ではない。公費で行くなら、誰が、何のために、いくら使い、何を持ち帰ったのかを、県民が追える形で示せということだ。
「成果はある」で終わらせるのか。それとも、2億6500万円と3億円以上という数字の違いまで含めて、県民が検証できる資料を出すのか。海外視察の問題は、旅行の是非ではない。福岡県議会が公費を預かる議会として、説明責任を果たせるかどうかの問題である。
参照資料
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